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汐音の月
汐音を聴いていた
潮の轟き
深い深い海の底から
響いてくる
遠い水平線から
湾のなかを
波が流れていく
それを見送った後は
一艘の小舟に乗って
沖合に向かって
漕ぎ出していきたい
その先には静かな
星ばかりの空があるといい
真っ暗な空にきらめいているのは
数えきれない星だろう
そんな海の上でサンドイッチを頬張って
ごろんと寝転べたらなおいい
ただちゃぷちゃぷと波に揺られながら
無心に空を眺めていたい
真夜中に向かうとき
北斗七星は回り
東の空からは
遅い月が昇って
世界が替わり
静かな夜になる
月の光が波に揺れると
銀世界が広がる
丘の方では
秋の草花がさらさらと
野原に揺れている
それは
記憶の奥深くに刻まれている
どこかで見た景色と
もしかしたら同じかもしれない
汐音を聴きながら
目を閉じて
月の光の下で眠りたい
そうして
夜明けの空を染めていく
朝の光とともに
目を覚そう




