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花傘
書店の中にある雑貨屋で
花模様の傘を見つけた
開いてみたら
生花のようにみずみすしく
花が咲いた
緑のアーチを通って
花の薫る温室に入ったかのような感覚
童話のように魔法がかけられて
雨の日を何か
静かで上質なひとときに思わせるような
そんな傘を見つけた
気に入って手に取って
レジに向かう途中で
絵本を開いていくと
目に留まったページがあった
「みんなのかさ、ひとりひとりのかさ
いろんないろがあって、
みんなたいせつなかさ」
手元の傘を見て
うちにある傘を想う
ひとつひとつが
お気に入りだったこと
持ち帰った日のこと
はじめて使った朝のこと
あれらを修理して
大切にしよう
花の傘を売り場に戻すと
お花が微笑んだように見えて
また機会がありましたら
どこかでお会いしましょう
そう言われた気がして
よかったと思う
手放したものたち
誰かの癒しになりますように




