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紫陽花と雨
静かに雨は降る
六月の午後
透明傘の上に雨粒が乗って
流れて
溢れ去っていく
雨音のオーケストラが鳴る
ぱらぱら、ぱらぱら
空の天気は雨
どこかから聴こえる、世界の音
雨の時間は続いている
水滴はアスファルトに落ちて
土の上にも
水たまりにも落ちて
広がっていく
喜んでいるよ
誰が、
雨が
緑の道に
紫陽花が咲いている
鞠のよう、くす玉のよう
青に水色、薄緑に緋色
リトマス試験紙に似た花は
乙女の夢のよう
折り紙の花を折って
窓辺に飾ろう
そうしているうちに
夕暮れのないまま夜の一歩前
西空から晴れていく
不可思議な空の色は
紫陽花と同じ




