表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/70

米田くんと白川くんにはお見通し

静かな草むらで、私達は言葉を発せず、

ただ抱き合っていました。


「(このままずっと、紗和さんとこうしていたい。)」


と思いましたが、それは叶わず。


「紗和さん、もうすぐあの寮を出るねん。」


ゆっくり紗和さんを抱き締めている腕を緩めました。


「そう…。そう、やんね。

あれは学校の寮やもん。」

「どこに配属になるか分からへんけど、

絶対に手紙を書くから。」

「…うん。」

「紗和さんも、出来たら返事を書いて欲しい。

それが、生きる希望になるから。」

「うん、書く!」


今度は紗和さんから抱き着いてくれました。

私はそれを、優しく受け止めました。


「そろそろ戻ろうか。」

「うん…。」


とても名残惜しい気持ちでいっぱいでしたが、山を降りるまで、手を繋いでゆっくり歩きました。



「ただいま」


寮の部屋に戻ると、長谷川くんが、

竹刀を持った米田くんと白川くんに捕まっていました。


「ぅえぇぇええ!!??

何があったん!!?」

「昴…!助けてくれ…!!」


色々と突っ込みを入れたい所が沢山ある状況で、長谷川くんが私に助けを求めました。


「おぅ、昴。帰ったか」

「何がどうしてこうなったん!?」

「稔。昴を捕まえるんや!!」

「任せろ!!!」


逃げようとしましたが、白川くんの方が動き出すのが早く、

私は直ぐに捕まってしまいました。


「さぁて…やっと捕まえたでぇ…」

「観念して全部吐け!!」


米田くんと白川くんが、謎の笑みを浮かべながら、竹刀を持って迫って来ます。


「だから、何を吐くんやってさっきから言ってるやろ!!」

「長谷川くん、僕ら何かやらかしたっけ?」

「何もしてへんわ…。」

「“何もしてへん”…?よう言うなぁ…進さんよぉ。」

「(いつもの穏やかな白川くんに戻ってくれ…!!)」


「お前ら、いつの間に恋人を作ったん?」


「!!?」


さっき紗和さんとお互い好きだと気持ちを伝えあったばかりなので、

心臓が止まるかと思いました。


「(って、長谷川くんも!?)」

「あぁ…先週から、松本莉子さんとお付き合いをしてるねん。」

「(え!?いつの間に!!?)」

「いやぁ、めでたいなぁ!母さん。」

「そうねぇ。お父さん。」


いつの間に米田くんと白川くんが私の両親になったのでしょうか。


「昴くんは?」

「紗和ちゃん?」

「う…。はい、紗和さんです…。」

「話したから、もう解放してくれよ!」

「いーや!馴れ初めと、あとどこまで行ったか答えないと解放出来んなぁ。」

「拘束されんくても、普通に話すから!!」



何とか解放されました。

長谷川くんと松本さんは、どうやら長谷川くんをお店に連れて行ったあの日。

松本さんが長谷川くんに一目惚れしたそうです。

思い返せば、ちらちらと長谷川くんの方を見ていた気がします。


「莉子さんは紗和さんの親友みたいで、

よく会いに来ていたんや。

その時にたまたま再会して、手紙のやり取りをして今に至るって訳や。」

「昴くんが、恋のキューピットって訳やね♪」

「お前何かニヤニヤしてるなぁと思ったら、それやったんか!」

「(この2人…特に米田くんって、周りをよく見ているよなぁ。)」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ