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長谷川進、知覧カラ特攻ス

長谷川くんが知覧へと旅立った夜。

仕事を終えて部屋に戻ろうとしたら、米田くんと松本さんが話をしているのが見えました。


「あぁ…わかった。」

「ありがとう。」


何を話しているのか上手く聞こえないのですが…。


「(まぁ…盗み聞きは良くないよな…。)」


以前上司の会話を盗み聞きしてしまった事は置いといて、私は足早に部屋に戻りました。



長谷川くんの知覧行きが決まって暫く

松本さんは口数が大幅に減りました。

ですが長谷川くんが知覧へ行ってから、

元の松本さんに戻った気がします。


一体、どうしたのでしょうか…?

いつもの明るい松本さんに戻ったのは良い事ですが…私の気の所為なのでしょうか。

何か胸騒ぎがすると言うか。


「実は俺も気になっててん。」


米田くんに話をしてみると、彼も同じ事を思っているとの事でした。


「そうやんね。米田くんは松本さんと付き合いが長いし、気付くよなぁ。」

「そりゃあな。

んー、莉子ちゃんの事やから、周りに迷惑を掛けない様に気丈に振る舞ってるんとちゃうかな?」

「なるほどなぁ。そうかも知れん。」



長谷川くんが知覧へ行ってから、中々忙しい日々が続き、遺書が読めませんでした。


「ここにしよう。」


部屋だと号泣してしまうと思ったので、

会議室で読む事にしました。

幸い、誰も使っていなかったので。



『田中昴様


この手紙を書きながら、

まだ学生だった頃、昴が毎日教官に怒られていたのを思い出しました。

あの頃は昴の事を自分の弟と重ねていました。可愛い弟の様な存在だと。

ですが今では、私の上官であり、大切な親友です。

上から認められ、同期の誰よりも早く出世した昴は、私の誇りであり、憧れでした。』


長谷川くん…。


『昴は、私と莉子を出会わせてくれました。あの時昴が松本洋裁店に連れて行ってくれた事、ずっと感謝をしたいと思っていました。本当に、ありがとう。』



「…っ、“ありがとう”は、こっちの言葉だよ…。」


続きを読もうとしたら、通信が入りました。


「!」


知覧から特攻し、敵に体当たりした兵士の名前が入って来ました。

その中には…


『…、長谷川進、…』


「長谷川くん…長谷川くん!!

うわぁあああ!!!!」



『最後に。ここからは普段通りの言葉で。

俺は先に逝くけど、昴は沢山遠回りをして欲しい。

お前がお爺さんになったら、また会おうな。

それじゃあ、一足先に稔に会いに行ってくる。


長谷川進』


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