川本曹長と高橋曹長
呉の基地へと帰宅しました。
負傷した兵士を含め、残った兵士は半分も居ませんでした。
「川本曹長」
高橋曹長と、川本曹長の容態を見に行きました。
「高橋と田中か」
「怪我の様子はいかがですか?」
高橋曹長が怪我の様子を尋ねます。
「残念だが、前の様に戦う事は無理なんだそうだ。」
「そうですか…。」
「もうそろそろ、世代交代なのかも知れんな。」
「!!」
「そんな!川本曹長には、まだまだ現役で活躍して我々を導いて頂かないと…!!」
「高橋」
「はっ!」
「お前は私なんかより遥かに優秀な軍人だ。安心して任せられる。」
「川本曹長…!!」
「田中」
「はっ!」
「すまないが、高橋と話がしたい。
席を外してくれ。」
「はっ!失礼します。」
川本曹長に敬礼をして、席を外しました。
病院の外で、高橋曹長が戻るのを待とうと思います。
◇
15分後、高橋曹長が戻って来ました。
「悪い田中。待たせたな。」
「いえ。」
「戻るぞ。」
「はい。」
高橋曹長の少し後ろを歩きます。
「高橋曹長は、川本曹長と長いお付き合いなんですか?」
「ああ。俺が下っ端の頃からの付き合いや。
…田中は、川本曹長が年齢や能力の割に
階級が低いと思った事はあるか?」
「実は…あります。」
川本曹長は、私の両親よりは若いですが、
それなりに年齢を重ねられています。
「あれはな、まだ俺が入隊したばかりの頃、事故で大怪我をして、軍から結構長い事遠ざかったんや。」
「そんな事が…。」
「もしその事故が無ければ、今頃中佐位にはなっていたんやろうなぁ…。」
「……」




