紗和さんの縁談②
私が向かったのは、紗和さんの秘密の場所。
ここも焼けてしまったけれど、
私にとって大切な場所です。
「っ…」
あの人が言った事は、何も間違っていない。
だからこそ悔しいのです。
戦争で家にいない私よりも、
裕福なあの人の方が、紗和さんを幸せにしてあげられる。
夢を叶えてあげられる。
それに万が一戦争が終わって帰って来ても、
私は紗和さんに苦労をかけることになるでしょう。
それなら…もう…。
「昴さん!!!」
「……」
愛しい愛しい彼女がそこにいます。
ずっと声が聞きたかった。
ずっと会いたかった。
こんな事が無かったら、私はすぐに彼女を抱き締めていたでしょう。
「昴さん、せっかく来てくれたのに、
こんな事になってしまってごめんなさい。」
「……」
「お相手の方にはもう帰ってもらったよ。
私には、昴さんしかいないもん。」
「………」
「昴さん…。本当にごめんなさい!
だから…だから、声を聞かせて…!!」
振り返ると、そこには綺麗な着物を着て
おめかしをした紗和さんがいました。
これが自分の為ではなく、
他の男と会う為だと思うと、
嫉妬で頭がおかしくなりそうでした。
「…いつ死ぬか分からない僕よりも、
あの人と一緒にいた方が、君は幸せになれるんやろうな。」
「え…昴さん…?」
「あの人なら、君の夢も叶える事が出来る。
…僕には出来へん事が、あの人は沢山出来る。」
悲しくて悔しくて、涙が止まりません。
「悔しいよ…!!僕だって、
紗和さんの夢を叶えたいのに…!!」
「!!」
「戦争が終われば、また…っ、
絵の勉強が出来ると思って…!」
「…っ!!」
「その為に、どんなに辛くて苦しい戦いも、耐えて来たのに…!!
こんな事になるぐらいなら、次の戦闘で、
敵に突撃して死んでやる!!」
その瞬間、物凄い勢で
紗和さんは私に抱き着きました。
「ぅわっ!!」
抱き着く…と言うより、飛びつく…
と言った方が正しいのでしょうか。
急な事だったので、そのまま後ろに倒れてしまいました。
「嫌!!昴さん!!そんな事言わんといて!!お願い…!! 」
「………」
「昴さんが居なくなったら、私…!!
うぅ…っ!」
「!!」
紗和さんを泣かせてしまった事に気が付き、
私は我に返りました。




