チョコレート
チョコレートは、敵兵が持っていたものなので
そのまま『チョコレート』表記をしましたが、
当時は何て呼ばれていたのでしょう。
調べても、これ!って情報が見付からなくて…。
「(俺は左の奴。お前は右の奴を撃て。
頭部を狙うぞ。)」
「(はい)」
「(……行けっ!)」
高橋軍曹の合図と共に、2人は発砲しました。
銃弾は敵に命中し、敵兵は倒れました。
戦場で敵兵を撃つ場合、頭部ではなく胸部を狙います。
頭部より胸部が大きいのが最大の理由です。
胸部を撃っても即死にはなりませんが、
心臓以外の肺や大動脈に当たった場合も、
出血多量で死亡します。
万が一死亡しなくても、救命処置に人員が必要となる為、弾は無駄にはならないのです。
今回高橋軍曹が頭部を狙う様に指示をした理由は、敵を瞬時に活動不能とし、
反撃を防ぐ為です。
私達の狙いは、ただ敵を殺すのではなく
敵が持っているかも知れない食料。
「…よし、死体を調べるぞ」
高橋軍曹が、敵の息が無い事を確認してから、私達は彼らが何か食べられる物を持っていないかどうかをくまなく調べました。
「あれ?」
「どうした?昴」
「何やこれ…」
私が手にしたのは、薄い箱。
高橋軍曹に手渡すと
「あぁ!それ、“チョコレート”やわ」
と言いました。
「これな、少量で栄養価が高いお菓子やねん。ええもん見付けたなぁ!
こんだけあれば、数日生きられるで。」
高橋軍曹は、チョコレートを人数分割り、
渡してくれました。
「食べてみ。甘くてめっちゃ美味しいで。」
チョコレートを口の中に入れてみました。
「!!!」
「あっま!!」
甘い物が大好きな私にとって、
チョコレートは革命的な味でした。
この時の影響で、チョコレートが好物になり、戦後はよく食べたものです。
他にも飴やガムなど、敵兵のポケットから出て来ました。
これらを分けて、私達は何とか生き延びる事が出来ました。
「ん?…お!他の部隊と連絡がついたわ!」
『こちら川本。高橋か?』
「はい。」
川本曹長の部隊と連絡がついた様です。
『そちらの部隊の状況は?』
「全員無事です。」
『そうか。…こちらは戦闘と餓死で、半数を失った。加えて命に別状はないが、負傷者もいる。』
「……」
『そちらの詳しい報告は、拠点で頼む』
「はい。」
通信が切れました。
「(昴…。進は無事なんやろうか…。)」
「(…無事やと祈ろう。)」




