エピローグ
王家とターナー公爵は、多くの財を失うことになる。しかもゴーマンは婿養子としてマーガレットと結婚することとなり、王族による盛大な式は、してもらえないことになった。つまりは不毛と言われる地方領で、王族の参列なしの地味婚になるとのこと。これにはヒロインであるマーガレットが、非常に不満なようで、二人の門出は順調とはいえない。
悪役令嬢が断罪されるはずの卒業舞踏会の場に、私はゴーマンがエスコートする婚約者として足を運び、父親はゴーマンに呼び出される形で、顔を出すことになっていた。そこで前代未聞の悪役令嬢の父親が断罪され、ついで娘であるキャメロンの婚約破棄が言い渡される舞台が、整えられたと知った時には。
しかもそれが実行されてしまう三時間前だった時には、もう無理だわ!と思った。
しかし。私の破廉恥な苦肉の策は、遂行されずに済んだ。さらに両親の奮闘で断罪は回避され、婚約解消も成立し、我が家には大金が入ることになった。ゴーマンとマーガレットには、地味ながらざまぁもでき、私は井戸でストレス発散する必要もなくなったのだ。
さらに。
父親は今回のアントニーの活躍を認め、王家にアントニーの実家に、伯爵位を授けるよう願い出た。
それはそうだろう。
もしアントニーが事前に情報を教えてくれなかったら、父親も母親も証拠を揃え、舞踏会の場へ足を運ぶことはできなかった。三時間前というギリギリであったとしても、情報を掴んでくれたアントニーの功績は大きい。
そんなアントニーの生家への伯爵位を授ける件。
今の王家は、我が家とは穏便でありたいと願っているので、それはあっさり快諾される。こうしてアントニーは、伯爵家の令息となったのだ。
すべてがひと段落したその日。
私はサンルームでお茶をしていた。
王宮を出て、懐かしい我が家に戻り、幼い頃から大好きだったサンルームで寛いでいたのだ。
お気に入りのバニラ色のドレスを着て、テーブルには食べきれない程のスイーツを並べ、ミルクたっぷりの紅茶を用意して。手元には、妃教育のために我慢し、読まずにいたロマンス小説も、山積みになっている。
この先、どう生きて行くか。それはのんびり考えればいいと思う。
「お嬢」
声に振り返ると、白シャツに黒のベストとズボンという姿のアントニーが、そこにいる。
「アントニー、間もなく迎えの馬車が来るのでしょう? その姿で帰るの? 未来の伯爵家当主なのに」
「まあ、そうですね。着替えは……これからします」
私の側に来たアントニーは、ティーカップに紅茶を注ぎ、ミルクを入れてくれる。
もう彼は私の専属従者ではなくなる。
元々アントニーを専属従者にしたのは、断罪回避のためでもあった。それも終わった今、もはや同格となる伯爵家の嫡男を、専属従者につなぎとめておくわけにはいかない。
同じ伯爵家の令息と令嬢。そのアントニーが手ずからで紅茶を入れる必要はもはやない。それでも――。
「ありがとう、アントニー。紅茶はクララに入れてもらうことが多かったけれど、アントニーが入れてくれるミルクティーは、最高なのよね。ミルクと紅茶の量のバランスが絶妙で」
「そうですか。……お嬢は、これからも俺がいれるミルクティーを、飲みたいですか?」
「! ふふ。未来の伯爵家当主に、ミルクティーを入れてもらうなんて、無理でしょう」
するとアントニーは腕組みして「そうでしょうか、お嬢」とニヤリと笑った。
「アーリー・モーニングティーは、別名、ベッド・ティーと呼ばれますよね? 夫が妻のために入れる紅茶。どうです、お嬢? 俺が入れるベッド・ティーを、飲みたくないですか?」
ピチュー、ピチューと鳥の鳴き声が聞こえた。
「えっと……」
現在、婚約者なしの私は、アントニーの言葉の意味をじわじわと理解する。
自然と頬が緩み、笑顔になった私は、アントニーのことをドキドキしながら見つめた。
「アントニー。私、あなたが入れるベッド・ティーを、毎朝飲みたいわ」
~ fin. ~
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【別エンディング】
本作の別エンディングは全9話の読み切りです。
『破廉恥な行為で悪役令嬢は婚約破棄と断罪回避を試みる~地味なざまぁもできていた~』
https://ncode.syosetu.com/n7953io/
プロローグは微妙な違い、それ以降は、本作のもう一つの世界線で物語が進行していきます。
ページ下部に目次ページへ飛ぶイラストリンクバナーがございますので、よろしければご覧くださいませ。
【全13話で完結!読み始めると止まらない!】
1/16週間異世界転生恋愛ランキング完結済9位☆感謝
『ざまぁは後からついてくる~悪役令嬢は失って断罪回避に成功する~』
https://ncode.syosetu.com/n3197io/
予想外の展開×山場からの衝撃事実×ほっこり読後感
ぜひご覧いただけると幸いですヾ(≧▽≦)ノ
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