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朝霧の乙女2

「お待たせしました」

 世話係の娘がそう告げてドアを開いてくれる。


「やっとか」

「駄目よ。そんな事言っては!!」

 誰かが漏らした呟きに注意するが、本音は同じだったりする。


「ノワール様……殿下はずっと呪いで苦しまれていたのですよ。あたしたちを信じる事が出来ないから迷って中に入れなかったのかもしれません」

 さりげなく朝霧の乙女っぽいことを言っておく。

「ああ。そうだったなすまないレーファ」

 謝ってくるのを聞きながら好感度が上がったのを感じる。


「いいのよ。でも、そんなことを言いたい気持ちは分かるわ。ありがとね」

 でも、そんなことをおくびにも出さずに微笑んで、そっと中に入る。


「うっ!!」

 中に入って思わず声を漏らしてしまう。


「ひどい………」

 部屋は原形を留めていないほど蔦に覆われていた。一歩足を踏み入れると床は床ではなく蔦が密集していて、躓きそうになるのを仲間の一人が……実は前世で推しだった人が支えてくれるのに顔を赤らめてしまう。


 もちろん仲間はみんな推しでみんな大好きだ。


 そんなみんなに守られている事に……好意を向けられていることが嬉しくて笑みが出そうになるのを抑える。


 そんなみんなに支えられて、正直気持ち悪くて近付きたくないノワールの呪いに向かって進んでいく。


「ノワール様。今呪いを解きます」

 漫画通りに額に口付けをするために近付く。ああ、ホント気味が悪くて怖い姿だ。よくこんなのに口付けられたな我慢だ我慢だと言い聞かせてそっと額に触れる。


 お願いだから動かないで蔦。蛇みたいで見ているこっちが怖いんだから。


 目を背けて、必死に見ないように額にそっと口付ける。


 確か漫画ではまばゆい光が発生したと思ったらノワールの身体を蝕んでいた植物が一斉に枯れて、呪いによって緑色に変えられていた瞳が王族の証である黒い目に変化する。だが、

「――どういうことだ?」

 信じられないと言う声が聞こえて、目を開く。


 おかしい、確か漫画の中では瞼を閉じていても光を感じて戸惑いながらそっと目を開けたのに。

「なんで……」

 声が漏れる。


「どうして………」

 蔦は部屋全体に広がっているし、足元は相変わらず部屋の中と思えない感触を伝えている。


「呪いが解けてない……」

 何で、しっかり漫画通りに……………。


 漫画通りにやったのにと思い掛けて違うことに気付いた。そうだ。漫画では最初に仲間になったのはノワールだ。


「そんな、ノワール様………」

 入り口でずっと様子を見守っていた世話人の娘が信じられないと呟く。


「こんなの間違いよ!! だって、朝霧の乙女の口付けで呪いが………」

「――レイナ」

 蔦に包まれた中みんなが動揺しているのに一人だけ気にしないで、ノワールが世話人の娘の名を呼ぶ。


「レイナ。朝霧の乙女では無理だったよ。だから、君にしてもらいたい。――それなら諦めもつくから」

 その言葉に誘われるようにふらふらとレイナと呼ばれた世話人の娘が近づく。


「あのっ、私は奇跡なんて起こせません。それでも……いいのですか?」

 不安げな声を聞いて、

「いいよ。奇跡は正直期待していないから。こんな僕でも受け入れてくれる覚悟を見たいだけ」

(あっ………)

 それを聞いて何故か突然思い出した。


 前世。とある公式のイベントで他のキャラの救済に行っていたらどうなったのかという質問がありその返答は。





「それだと呪い解けませんね。呪いが解けるきっかけはノワールが朝霧の乙女を信じられたからという気持ちも起因していますし、他のキャラを救済して、集団で助けに来たと言われても信じられないですから』

 だったと言うことを。

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