10000回と1回目
初めて短編書きました。
「俺と、付き合ってください!」
「毎回言ってるけど、ごめんなさい」
こうして、俺の一万回目、そして、雛ちゃんへの最後の告白が終わった。
☆☆幼稚園☆☆
俺、風見大智の初恋は、五歳の時だ。
幼稚園に新しく来た子にビビーンと来た。クリクリとした大きな瞳に、肩くらいで切りそろえたサラサラの髪。
周りの子達と比べても、一際可愛く見えた。
その子は、天音雛と言うらしい。
俺は早く仲良くなりたくて、急いで話しかけに行った。
「ねぇ、ヒナちゃん!」
「…? どうしたの?」
「オレ、たいち。いっしょにあそぼ!」
「う、うん」
その日から、俺と雛ちゃんは一緒に遊ぶようになった。
他の女の子と取り合いになる事もあったけど、出来るだけ雛ちゃんと一緒に居た。
雛ちゃんは会う度にどんどん可愛くなっていく気がした。
そして、ついに我慢できなくなり、俺はしばらく経った後に告白した。
どこで告白なんてものを知ったのかは分からないが、五歳にしてはちゃんと告白できていたと思う。
「ヒナちゃん! オレと、つきあってください!」
「…? えっと、ごめんなさい?」
「ぐぅ」
しかし、結果は失敗。初めて振られたので、結構凹んだ。
だが、告白の一回や二回で諦められるようなものでは無かった。
毎回振られるのはキツかったが、俺はそれから毎日告白し続けた。
☆☆小学校☆☆
その後、俺と雛ちゃんは同じ小学校に進んだ。
入学式の日から、俺は相変わらず告白していた。
「雛ちゃん! 今日もすっごい可愛いよ! 俺と付き合ってください!」
「ちょっと、こんな人沢山いるところで…。ごめんなさい」
「うぅ…」
雛ちゃん以外が見えていなくて、沢山人がいる中で告白してしまった。
俺は別に雛ちゃんへの思いに恥ずかしいものなんて無いのだが、雛ちゃんは恥ずかしかったようで、申し訳なかった。
それからも俺は毎日告白し続けていた。
小学校一、二年の時は、周りの子達もあんまり分かっていないようで、不思議そうに俺と雛ちゃんを眺めていた。
小学校三、四年になると、流石にみんな「告白」というものがどういうものか分かっていて、よく周りにからかわれるようになった。
俺は全く恥ずかしくなくて、むしろ嬉しくも感じたが、雛ちゃんは、
「付き合ってるの?」
と聞かれると、
「あんな奴と付き合ってる訳ないじゃん!」
と言っていた。「あんな奴」と思われていることに、結構傷ついたが、もっと頑張ろうと思った。
その時雛ちゃんの耳が赤かったのは、恥ずかしかったからだろう。
小学校五、六年になると、周りのみんなは俺達のやり取りに慣れたようで、温かい目で見守られていた。
「雛ちゃん! 俺と、付き合ってください!」
「ヤダ」
「ぐふぅ…」
こうしていつものように振られると、
「ドンマイ大智」
「また次も頑張れよ」
など、応援してくれるような奴も結構いた。
この頃の雛ちゃんは、サラサラした黒髪を腰辺りまで伸ばしていたが、相変わらず可愛くて、他の男子から告白されることも増えていた。
そりゃそうだ。雛ちゃんは世界一可愛いからな!
雛ちゃんが告白される度に、俺はドキドキして見ていた。
ここでもしOKを出されたら、俺の初恋が終わってしまう。雛ちゃんと一緒に居れなくなるかもしれない。
それが怖くて、いつもこっそり告白現場を見ていた。
一度、こんな事を言う奴がいた。
「天音さん。俺、大智よりも運動も勉強も出来るし、大智よりいい男だと思うんだ。だから、俺と付き合ってください!」
確かにそいつの言う通りで、そいつの方がかっこいいし、なんでも出来た。
こんな風に言われてしまう自分が情けなかった。
「あの、ごめんなさい。人の事悪く言う人は嫌いです」
しかし、雛ちゃんは断った。
俺は嬉しいと同時に、少し悲しくなった。
俺より優れた奴でも、雛ちゃんはOKしない。別に、他の告白した男子達が俺より優れていなかった訳じゃない。
しかし、明らかに優れている奴でもダメだと言うことは、俺に付き合える望みがあるのだろうか。
そう思い、悲しくなってしまった。
雛ちゃんは、そのまま誰の告白にもOKすることなく小学校を卒業した。
ここまでの七年間。俺は五千回くらい告白していた。段々と告白する頻度が増え、一日に何回かは告白していたからだ。
☆☆中学校☆☆
中学校も、俺は雛ちゃんと同じ学校になれた。
俺達が通うのは、一番近くの公立中学校だった。その学校は、他の学校からの生徒も多く入ってくるため、結構大きな学校だった。
中学校の入学式、また俺はやらかしてしまった。
「雛ちゃん! 一緒の中学校だね! 俺と、付き合ってください!」
「あなたまたこんな人沢山いる所で……。ダメよ」
「グハッ」
いつまで経っても振られるのは慣れないが、俺と雛ちゃんが一緒に居られるのは、中学が最後かもしれない。
雛ちゃんは頭がいいし、いい高校に行くと思う。でも、俺は勉強は得意では無いから、同じ高校に行けるとは思えなかった。
だから、俺は中学で一番多く告白したかもしれない。
そのせいで、最初は少し変な奴と思われていたが、俺と同じ小学校の人が、いつも通りだと言ってくれたので、その後は徐々に話しかけてきてくれる人が増えた。
朝登校する時に一回、学校の中で一回、下校中に一回。毎日三回告白していた。
中学校では、三千回ちょっと告白したことになる。
俺も雛ちゃんも部活は忙しくない文化部だったので、大体は一緒に帰っていた。というか、俺が雛ちゃんについて行った。ちなみに、毎回振られた。
登校する時は、雛ちゃんに会えるように時間を調整した。小学校でもやっていた事なので、大分ピッタリ会えるようになった。同じく、毎回振られた。
学校の中では、色んなタイミングで告白した。
体育の授業で雛ちゃんがカッコよくて衝動的に告白。
イベント系では、雛ちゃんの可愛さに衝動的に告白。
それまで学校で会えなかったら、昼休みに告白。
など、様々なタイミングで告白した。しかし、毎回振られた。
相変わらず、雛ちゃんは振り向いてくれない。ちゃんと努力はしているのだが、気づいてくれているのかも分からない。
勉強も運動も人並み以上には出来るようになったし、見た目にだって気を使っている。
雛ちゃんの近くに居ても恥ずかしくないように頑張っているのだ。
そういった努力のお陰か、俺は初めて女子から告白された。
その子は結構可愛いし、話してて楽しかったのだが、やっぱり雛ちゃんを諦めることが出来ず、断ってしまった。
その時、振る側の気持ちを初めて理解した気がした。振る側だって申し訳なさがあるし、その後普通に話せるか心配だった。
いつも雛ちゃんにそういう思いをさせてしまっているのか。もしくは、俺にはそんな事を思いもしないのか。
そういった事が気になったが、その時は聞くことは出来なかった。
もしそういう思いをさせていたとしたら、俺は今まで雛ちゃんに迷惑を掛け続けてしまっていたことになる。もしそうだとしたら、俺は嫌だったし、怖かった。だから聞けなかった。
その日の帰り、俺がモヤモヤしたまま歩いていると、雛ちゃんがやってきた。
「ねぇ、大智って〇〇さんに告白されたの?」
「そうだけど…」
「ふーん。じゃあ、付き合ったの?」
何故か不機嫌そうだが、俺には何故不機嫌なのか分からなかった。
あと、俺は雛ちゃん一筋なので、他の人と付き合うつもりは無い。
「いや、付き合ってないよ。俺は雛ちゃん一筋だからね!」
「そう?」
「ホントだよ」
「ふーん。そうなんだ」
今度はご機嫌そうである。今度も何故ご機嫌なのかよく分からなかった。
「もしかして、俺が他の女の子と付き合うんじゃないかって心配してくれたの? 雛ちゃん可愛い。俺と、付き合ってください!」
「そんなわけないじゃない。あと、ヤダ」
「う、あぁ」
「大智も毎回よくやるよね」
もしかして、と思ったが、やはりそんな事は無かったようである。そして、流れる様に振られた。
俺が告白されたのと同時期に、雛ちゃんもイケメンの先輩から告白された。
一目惚れだったらしい。その気持ちはよく分かる。
ただし、俺の目の前で告白するのはどうなのだろうか。チラチラとこっちを見て、俺を牽制しようとしている。
そんな心配しなくても、俺は余計な真似はしない。邪魔されるのは嫌なことは知っている。というか、なんで俺の目の前で……。
イケメンの先輩も、雛ちゃんはいつもと同じように振った。
「雛ちゃん、よかったの? 今の人凄いイケメンだったけど……」
言っていて悲しくなってきた。なんでこんな事聞いてるのだろうか。
「別にいいよ。興味無い」
「そうなんだ。ねぇ、雛ちゃんってどんな人が好きなの?」
雛ちゃんは全員振っているし、タイプの人を聞かれても答えないのだ。
他の男子達が俺に聞いてくることも少なくないが、俺も教えて貰っていない。
「教えない」
「えー、いいじゃん。ちょっとくらいさ」
「ダメ」
今回も雛ちゃんは教えてくれなかった。
「あなたがタイプだなんて言えるわけないじゃない…」
「ん? なんか言った?」
「なんでもないっ!」
雛ちゃんの声が小さくてよく聞こえなかった。何故か顔が真っ赤である。
「雛ちゃんが赤くなってるの珍しい…。可愛い! 俺と付き合ってください!」
「ヤダ」
「あぅ」
また振られてしまった。
そんな感じで、中学三年間が終わった。
色んなシチュエーションで告白したが、雛ちゃんが頷いてくれることは無かった。
一つ嬉しかったこととしては、雛ちゃんが俺と同じ高校に進むという事だ。
雛ちゃんならもっといい所を狙えるとは思ったのだが、嬉しい事に違いは無いので、特に気にしない事にした。
☆☆高校☆☆
高校生になって、相変わらず入学式でやらかした。新しい制服を来ている雛ちゃんが可愛かったんだ。仕方ない。
高校では、雛ちゃんと、同じクラス。しかも、隣の席になった。
神様に感謝。
「大智、何やってるの?」
「いや、雛ちゃんと同じクラスと隣の席になれた事に感謝してる」
「ホント何やってるの?」
まぁ、自分の席で祈りのポーズを取っているやつは変かもしれない。
「まぁ、取り敢えず。雛ちゃん、また一年間よろしく」
「えぇ、よろしくね。大智」
「あぁ…雛ちゃん、俺と付き合ってください…」
「ダメ」
「ぐふぅ」
また振られた。ここまで十年間、俺は八千回以上振られている。
高校生になった雛ちゃんは、もはや天使のようだった。可愛さの権化だ。
いや、まぁ俺が雛ちゃんを好きすぎるせいかもしれないけど。
雛ちゃんは高校でも相変わらずモテた。
そして、俺も何故かモテていた。
毎日雛ちゃんに告白しているのに、それでも告白してくれるので、少し不思議だった。
ある時、告白してくれた女の子に聞いてみたことがある。
「俺が雛ちゃんにずっと告白してるの知ってるでしょ? なのに、どうして告白しようと思ったの? 振られるかもしれないでしょ?」
「うーん、そうだねぇ。あわよくばっていうのと、この恋を諦めるためかな」
「諦めるため?」
俺は初恋を諦めていないため、その理由がよく分からなかった。
「そう。叶わないって分かってるのに、ずっとその人を好きで居続けるのは辛いと思うの。だから、振られて、新しい恋に進めるようにするためかな」
「振られて、新しい恋に……」
「まぁ、大智くんはずっと告白してるもんね。…頑張ってね、いつか叶うかもしれない恋もあるから!」
「…そうだね。ありがとう」
いい子だったので、これまた申し訳なかったが、新しい考え方が増えた。「新しい恋に進む」。これは俺ができていない事だ。
だから、俺は考えた末、一万回告白したら諦める事にした。
今は九千回くらいだ。ここからあと千回。それまでにいい返事を貰えなければ、頑張って雛ちゃんを諦めようと思う。
これを決めたのが、高校一年生の一月だった。
そこから、一年がたった。あれから俺は、九九九回告白し、同じ数だけ振られた。
振られる度、俺は以前よりも悲しくなった。
一回振られる度に、雛ちゃんを好きでいられる時間が無くなってしまう気がして、千回のカウントダウンが今までの九千回の何倍も辛かった。
そして、俺が告白できるのはあと一回。
もう、後がなくなってしまった。だから、俺も覚悟を決めた。
もし、振られたら、今まで聞けなかったことを聞こうと思う。どれだけ文句を言われても、俺は何も言うことが出来ない。
告白当日。俺は雛ちゃんを、デートに誘った。
雛ちゃんの私服を見ても、衝動的に告白しないようにしたり、可愛い雛ちゃんを見ても告白しないようにするのは大変だった。
そろそろデートも終わり。俺の初恋が叶うか終わるかが決まる。
「雛ちゃん、今日は楽しかったよ。ありがとう」
「私も楽しかったよ」
「それは良かった。…雛ちゃん、伝えたいことがあるんだ」
「いつになく丁寧ね。それで? 何か言いたいことでもあるの?」
そして、冒頭に戻る。
「俺と、付き合ってください!」
「毎回言ってるけど、ごめんなさい」
こうして、俺の一万回目、そして、雛ちゃんへの最後の告白が終わった。
結局、俺は雛ちゃんを振り向かせることが出来なかったのだ。涙が出そうになったが、最後なのだから、かっこ悪いところは見せたくない。
「そっか…。ねぇ、雛ちゃん。俺さ、今まで迷惑だったかな」
「ん? 別に、迷惑ではなかったけど。他の人も振ってたしね」
迷惑ではなかったのは嬉しかった。
しかし、俺も所詮は他の人と同じで、ただ、繰り返し告白してくる奴と言うだけだったのだろう。
「そう…なんだ。なら、いいんだけど」
「…? 大智、大丈夫? なんかいつもと違うね」
「いや、大丈夫。…じゃあ、バイバイ」
「ん。じゃあね」
そう言って、俺たちはそれぞれの帰路に着いた。この瞬間、俺の初恋は終わったのだった。
次の学校のある日から、俺は雛ちゃんに告白するのはやめた。まだ完全に諦められた訳では無いが、徐々に気持ちの整理が着いてきた。
雛ちゃんは、なんだか不機嫌でもあり、それでいて不安そうでもあった。やはり俺はそれが何故なのか分からない。
それが分からないから、分かろうと努力しなかったから、俺は雛ちゃんに、振り向いて貰えなかったのでは無いだろうか。
今更のように後悔が湧いてきたが、もう遅いのだ。俺はもう、雛ちゃんの事を諦めるのだ。
☆☆☆
大智と私は、幼稚園の頃から一緒に過ごしている。
初めて来た場所で不安だった私に、最初に話しかけて来てくれたのが大智だった。
それは嬉しかったし、友達ができたと思って嬉しかった。
だから、大智に告白された時は驚いた。でも、私は全くそんな風になるとは思っていなかったので、頷くことは無かった。
小・中と上がっていくと、周りでも付き合い始める子が増えたり、誰々が好きだといった話が増えてきた。
その時も、大智は相変わらず告白してきてくれたし、私もそれを嬉しく思っていた。
だけど、もし付き合って、今の関係が変わってしまうのが怖かった。
何故かは分からないが、今の居心地のいい「友達」、いや、「親友」という関係を壊したくなくて、いい返事をする事が出来なかった。
その頃、大智が告白されたという話を聞いた。
私は、何かが胸の中でモヤモヤするのを感じたが、それが何かは分からなかった。
そして、大智が断ったと言うのを聞いて嬉しかった。何故嬉しかったのかは分からない。
その後、タイプの話を聞かれても、私は上手く答えることが出来なかった。
今まで一番いいと感じたのは大智だが、それでも「好き」とは違うのではないかと思ったのだ。
それに、本人に「大智がタイプ」と言うのはなんか恥ずかしかった。
高校になっても、私は大智にOKをしなかった。流石に、もう私も自分の気持ちには気づいていた。
それでも、今の関係が大切だった。付き合った時の自分を想像出来なかった。
そして、一年の一月を過ぎた頃、大智が焦り始めたように見えた。
私には何を焦っているのか分からなかったし、多分大丈夫と思い、特に気にすることは無かった。
そしてあの日、デートに行った日。その日を最後に、大智が告白してくれなくなった。
理由なんて分からない。ただ、一つ思い当たる事があるとすれば、私が大智の告白を全て断ったことだ。
私を嫌いになっちゃったの?
私はもうダメなの?
そういった事が頭に浮かび、何故か涙が出た。
そして、私はようやく理解した。私は大智の事が「大好き」だった。だから、付き合った後、別れる事になるのが怖かった。それで、大智の告白を全て断ってしまった。
私は、大智の気持ちも考えず、自分勝手な都合で大智の気持ちを踏みにじった。
だから、大智は私の事が好きではなくなってしまったのではないか。
だから告白するのをやめたのではないだろうか。
今更そのことに気づき、私はさらに悲しくなった。
私はなんて酷い女なのだろう。大智の気持ちを踏みにじり、自分のことしか考えていなかった。
…今更だが、謝ることは出来ないだろうか。私の気持ちを伝えたら迷惑だろうか。
そんなことが頭に浮かんだ。
そして、気持ちを伝える事の難しさを感じた。
大智は、今までこんなに大変な事を何回も、十一年間も続けていたのだ。
その事に気づき、苦しくなった。
しかし、私にそんな資格は無い。私が大智の気持ちを踏みにじった。私が、告白を続けさせて、辛い思いをさせてしまった。
私は告白した事も、振られたこともないので、よく分からないが、振られることは辛いに違いない。
だからこそ、謝り、同じ気持ちを知るべきだと思った。
きっと、大智は私の事なんて嫌いになってしまっただろう。
だから、私が大智に告白して、振られ、自分のやってきたことの重さを知りたいと思う。
私は、大智に告白する。その事を固く決意したのだった。
☆☆☆
二月に入った。
俺が雛ちゃんに告白しなくなって、三週間程が経った。
そして何故か、俺は雛ちゃんに呼び出されている。
呼び出されたのは校舎裏。雛ちゃんが告白されていた場面を思い出し、悲しくなった。
しばらくすると、雛ちゃんがやってきた。
「雛ちゃん、こっちこっち」
「あっ、大智…」
雛ちゃんは少し落ち込んでいるようである。俺だってそのくらいは分かるのだ。
「いやー、雛ちゃんと二人で話すの久しぶりだなぁ。嬉しいよ」
「ホント!?」
「う、うん。ホントだよ」
「そう。…良かった」
なんかいつもの雛ちゃんと違う気がする。まぁ、雛ちゃんも久しぶりに俺と話せて嬉しかったり…する訳ないか。
にしても、どうしたんだろうか。
「雛ちゃん、今日はどうしたの?」
「あっ、えっとね、その…」
「?」
何故か青ざめつつもほんのり耳などが赤くなっている。どういうことだろうか。
「まず、今まで大智の告白全部断っててごめんなさい。私の自分勝手な考えで大智の気持ちを踏みにじってごめんなさい」
「え? え? えっと、いや別に、俺特に怒ったりとかしてないし、むしろ俺が迷惑だったんじゃないのかと…」
「そんな事ない! 私は嬉しかった。でも、大智と付き合って、別れることになるのが怖かった。嫌われるのが怖かった。だから、大智を振っちゃったの」
「そ、そうだったんだ…」
ふむ。えーと、雛ちゃんは俺の事が嫌いというか、むしろ――
「あの、雛ちゃん。もしかして雛ちゃんって……」
「ちょっと待って、私の口で言うから」
そう言って、雛ちゃんは深呼吸をしてからこう言った。
「大智、私と、付き合ってください!」
俺は、頭の中が真っ白になった。
俺の事をなんとも思ってないと思ったのに、俺の事が好き? 俺の初恋は叶うのか?
そんな考えが頭の中をグルグルと回り、しばらく無言になってしまった。
「そ、そうだよね。今更、私に告白されても迷惑だよね。ごめんね!」
俺が一言も発さなかったせいか、そう言って雛ちゃんは走り出した。
マズイ。そう思い、俺は雛ちゃんの腕を掴んだ。
「雛ちゃん、こっち向いて」
「う、うん」
こっちを向いた雛ちゃんは、泣いていた。俺のせいで泣かせてしまった。
泣いている雛ちゃんも可愛い…じゃなくて、もう少し気を使えるようにならないと。
「ごめんね、無言になっちゃって。でも、俺嬉しかったよ」
「え? …私の事嫌いじゃないの?」
「うん。ホントはね、一万回告白してダメだったから、諦めようと思ってたんだ。大体一万回だけどね」
「一万回、そんなに…」
雛ちゃんはどこか苦しそうな顔をした。
「でも、一万回告白したけど、辛いだけじゃなかったんだよ」
「え?」
「俺は、自分が雛ちゃんの近くに居れる自信がなかった。だけど、雛ちゃんは俺から離れないでくれたし、何度告白しても変わらずに接してくれたでしょ?」
「そうだけど、でも…」
「俺は楽しかったんだよ、結構。だからね、雛ちゃん。ちょっと目、閉じて」
「え? う、うん」
目を閉じた雛ちゃんも可愛い。
そして、俺の初恋は叶うかもしれない。だから、雛ちゃんと付き合ったらずっとしたかった事をする。
「!」
雛ちゃんは驚いたように目を開く。まぁ、突然キスしたらそうだろうな。でも、俺の気持ちを分かりやすく伝えるには、これが一番だと思った。
「ぷはっ…」
「ねぇ雛ちゃん。俺の気持ち、伝わった?」
「う、うん」
「じゃあ改めて…、雛ちゃん、俺と付き合ってください!」
「はい。お願いします」
そう言って雛ちゃんは俺の差し出した手を握る。
この瞬間、俺の初恋は叶ったのだ。そして、俺は雛ちゃんのことを絶対に離さないと誓った。
俺の告白は一万回失敗した。
でも、一万一回目の告白は成功した。
俺はこれから、今まで雛ちゃんに貰った以上に、雛ちゃんを精一杯幸せにしていこうと思う。
どうだったでしょうか。初めてだったので、展開の仕方や締め方が難しかったです。おかしなところがあったら報告よろしくお願いします。
評価して頂けると嬉しいです。
代表作として
幼馴染に裏切られた俺、幼馴染を捨てたら最高の生活が始まりました
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を連載中です。こちらもよろしくお願いします。