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リターン4:悪夢の残滓

第2章ぼちぼち投下

「生き埋めにせよ」

「はっ?」

「聞こえなかったか? 全て殺せと言ったのだ」

 やらなければ王国は滅びる。


 帝国の勇猛なる兵に有能な指揮官たち。

 彼らが率いれば、王国に2度目はない。

 それほどに王国の上層部は無能だ。


 殺さねばならなかったのだ。


 ……戻れはしないのだ。

 何も知らなかったあの頃には、な。


 触れ合える日々がもう訪れることはないのだと知りながら、下さねばならない。

 彼らに帰りを待つ者が居て、帰りたい故郷があって。

 その罪を全て背負わねば、守りたいものが守れぬのが世界というものならば。


 何故、俺はこうも弱いのだろう。

 何故、俺は全てを跳ね除けられるほど、強くなれなかったのだろう。

 そんな感情ごと殺すのだ。


「やれ」

 その命令を下した瞬間、もう何もかもが手遅れとなる。

 王国に侵攻した帝国兵1万が全て生き埋めにされた。


 大切なモノが千切れ飛ぶ感覚がする。

 喪ったら戻らない大切なモノと繋ぐ糸が今、心の中で、切れた。






「よう、皇帝陛下。わざわざ王国へようこそ。

 死体となってお帰りいただくがな」

「き、貴様は!?」


 ぼろぼろになり折れた剣と傷付いてふらつきさえしている偉丈夫の皇帝。

 それでもその覇気は失われてはいない。


「宰相に唆されたか?

 世界を救うために各国の力を一つに、とな。

 ああ、まさにその通りだとは思うよ。

 王国には馬鹿が多い。

 多過ぎた。


 まったく嫌われ者が好みもしないのにその名を使わねばならん!

 まったく迷惑な限りだ!!

 愚かな主義主張も、行き過ぎた正義って奴も、そこで生きる者にとってはとんでもない迷惑なだけだということを、地位のある方々は気付きもしない」


 俺を含めてな、とはハバネロ公爵は口にしない。

 分かっていながら口の端を吊り上げる。


「俺たち今を生きる者からすれば、そのような迷惑な方々には早々にご退場していただくしか手がない訳だ。

 残念だ、実に残念だ」


 両手を広げさらには嗤いを浮かべ、さも残念そうに皇帝を見据える。


「……ああ、最期に。

【悪魔神】を知っているな?」


 その言葉に皇帝は激しく動揺する。

「貴様は、やはり貴様も……」


「口を開くな! 愚物!

 至高の皇帝と唆されて悪魔神を求める者に踊らされた輩が!!

 貴様の所為で、貴様の歪んだ正義のために幾千幾万が苦しんだか。

 その絶望の一端ぐらいは……自覚しろ、皇帝」


 そして俺の剣は皇帝を貫いた。






 空っぽになった心が守る唯一のモノのために、ハバネロ公爵は巨悪に染まった。

 万の兵とその家族とその祖国の全ての絶望の果てにしか守れぬモノのために。

 ……全てを受け入れた。

 それがハバネロ公爵の絶望。


 悪夢は終わらない。

 多くの者の絶望を糧に。


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