表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/73

公爵とサビナ

 ユリーナの香りの残滓を嗅ぎながら、呆然としていても始まらない、始まらないが!

 俺はハバネロ公爵になってしまった現状を嘆き、思わず床を転がる。


 ぬぅおおお!!!

 何故! 何故! よりによってハバネロ公爵!

 アレか!? 俺がユリーナファンだからか!

 ユリーナラブだからか!!


 ……それならば仕方ない。

 自分で悶えて自分で答えを出して納得したので、立ち上がる。

 状況を確認せねばと振り返ると、紫髪の普段はクールそうな顔立ちだが、今は動揺した様子の女性がそこに居た。


 ずっと……見られていた、だと……?


 だ、誰だ?

 動揺しながらも頭はフル回転。

 頭の中に記憶としてではなく、設定としての情報が浮かぶ。


 サビナ・ハンクール。

 御年21歳のお姉様。

 スッとシュッとしてクールなキツ目の女性騎士。

 男爵家令嬢で騎士爵持ち。

 まあ、エリートだ。

 なお、ゲームキャラは大半が美男美女である。

 中にはネタキャラも居るけど。

 とにかくサビナは美人である。


 ハバネロ公爵に絶対の忠誠を誓い、暴走していくハバネロ公爵と最期まで共にあった。

 斬られる際には、「ハバネロ様……、申し訳ございません」と何とも浮かばれない忠誠心を見せる。


 ハバネロ公爵登場時には護衛として、必ず付き従い能力Bほどでユリーナと同等。

 主人公チームが10人編成としたら、7・8番目。

 それでもサビナは一般的なレベルから比べればかなり強い。


 一般兵は能力Eぐらい。

 エリート兵で能力Dぐらいと言えば、能力Bがいかに高いか分かるだろう。

 ゲーム主人公は能力A、ハバネロ公爵も能力Aぐらい。

 能力Sも主人公チームには居る。

 化け物集団である。


 この世界(?)をゲームと同一と考えるならば、戦いにおいては武器の能力も大きく左右する。

 聖剣もあれば、神剣も魔剣もある。


 なお、ハバネロ公爵の武器も滅剣サンザリオン2という縁起の悪そうな名前だ。

 1は何処にいったという感じだが、公爵家の魔剣研究の末に生み出された改造神剣。


 ハバネロ最終戦では滅神剣サンザリオンXというきっちり暴走する危険な剣を使用する。

 最終戦では当然の如く暴走し、主人公チームに討たれる定めである。

 サンザリオンX触るな危険、である。


 何故、そんな剣を使ったハバネロ!?

 ……追い詰められてたからだろうなぁ。


 戦闘には魔導力が能力の差を生む。

 魔導力の高さはそのまま出力の高さ。

 戦闘時には身体は硬くなるし、早くもなるし力も出る。


 一騎当千なんて者が存在したりもするとか!

 例えば能力Sともなれば、百でも千でも相手取れるという噂だ。

 まあ、所詮噂だ、実際には無理。

 20かそこらを相手取るのがいいところだろうな。


 過去に一切の魔導力なしで聖剣の力だけで最強の一角に上り詰めた古代の伝承もあるが、それは今ではオーパーツと呼ばれる喪われた聖剣があればこそだ。


 んで、各国はその魔導力を持つ『騎士』をどれだけ擁しているかが国力の差となっている。

 同時にこの世界、一般人では対処の難しいモンスターなる生物が闊歩かっぽしており、滅多に姿は見せないがドラゴンやそれに比する化け物も存在している。


 メジャーどころではゴブリナというゴブリンの巨人に、ミノルタという牛っぽい巨人がよく村や街を襲う脅威だ。


 主にはその2種類で四足系の動物系はあまり見ない。

 伝説上ではスモーキーなる要塞型も居る。

 ゲームでは邪神討伐シナリオの何話かで登場した。

 なお、そのようなモンスターでも武器は主に刃物、鈍器、つまり普通に武器を使いやがる。


 まあ、そんな訳で自然(?)の脅威と対抗するためにも、魔導力は欠かせないのである。

 とにかく、状況を整理だ。

 サビナをチラッと見る。


 サビナは動揺している。


 コイツは信用出来るのか?

 だが、コイツを信用しないことには何も始まらない。

 第一、ゲームでは最期まで付き従う忠誠を見せたのだ。

 信用出来る……、はず。

 多分、信用出来るんじゃないかなぁ?

 信用、させて?


 なんと言っても、天下御免の嫌われ者ハバネロ公爵にござる。

 尊大な言い方は勿論、人を人と思わぬ態度。

 サビナに対しそんな表現はないが、かなり迷惑を被ったのではないだろうか?


 むしろ、そんなハバネロ公爵に付き従うなんて正気か!?

 ラブか?

 そうでないならドMか?

 その辺りも確認しないことには安心出来ないが、いきなり貴女ドMですか、と尋ねるなど正気の沙汰ではない。


「ついて来い」

「は、はい!」

 本来であれば、そのように声を掛けなくても付いてくるのだがろうが、向こうの反応を確かめてみた。

 その反応に嫌悪もなく、先程の『床転がり事故』も俺を問い詰めたりする様子はない。


 ええ娘や……。


 サビナを伴って向かった先は公爵専用の訓練場だ。

 本当は一般の訓練場を労いたいが、いきなり偉い人、それも超絶嫌われ者のハバネロ公爵が姿を見せたら、どんなことが起こるかわかったものではない。

 一言で言うなら迷惑極まりない。


 手にはハバネロ公爵の滅剣サンザリオン2。

 ハバネロ公爵最終戦でサンザリオン2がドロップするが、性能はそこそこだが主人公チームは聖剣やら神剣やら持ってるので、そこまで使えない。


 装備出来るキャラの中にユリーナもいるが、能力こそアップする代わりに必殺技が使えなくなる。

 売るか、強化素材となるかがいいところ。

 哀れハバネロ公爵の愛剣。


 かく言う俺もガンダーVという魔法剣が欲しい。

 精霊信仰の村の隠しシナリオでマップ上のある特定のポイントを調べると発見出来る最強クラスの剣だ。


 帝国領の大樹海の中の村にあるので、ハバネロ公爵では行くことが出来ない。

 自由になりたい……。

 でも嫌われててもユリーナの婚約者の座は惜しい!!


 剣を抜いて、動きを確認する。

 ハバネロ公爵はスペックは高く能力はAである。


 ゲームでは、魔剣や聖剣、神剣を使うには魔導力が必要であり、一般兵が能力E。

 能力とはゲーム上での戦闘力でE〜Sで表す。

 そこに武器の能力が影響する。


 あくまで目安だが、大体1つ上のランクを相手にするのに、3人が必要。

 ただし、あくまでゲームでは。

 現実では当然、個々の能力や条件で大きく変化する。


 なお、主人公チームの各メンバーには必殺技があるがハバネロ公爵はない。

 サンザリオンXの暴走が発生するまで、どちらかと言えば丁度良いやられ役なのだ。

 ハバネロ公爵、哀れな……。

 自業自得だけど。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ