第一話...思い
腕からボタボタと流れる血を止血しようと抑えるも、アニメや漫画の様に血が出ては直ぐには止まらず、銃弾の痛みでなき叫びたい。
数分前、絡まれていた綺麗な少女のナンパをオッパってやろうと、当初は思ったが、予想外に殺されかけていた。
最悪。運が悪い。そう、思考を巡らせて裏路地を必死に駆け、残りの段数を数えて振り向き、一歩、踏み込んで拳を相手の顔面に直撃させた。
当初は圧倒的、そう断言出来る程に俺の方が強かったのだ。
だが、流石の身体能力が高い俺でも拳銃を持った相手には勝てるん訳もなく、あっさり逃げ帰ったフリをして、反撃を貰った鉛玉の感覚に震えていた。
「クソっ」
そう、自然に毒吐いていた。
ゆらゆらと覚束無い足取りで裏路地を歩き、一歩を踏みた瞬間、目の前にはそれはそれは美しい大天使様が超が付くほど善人の美青年に現れた訳ではなく、まるで11歳の少女が大きく、路地裏では突っかかりそうな蝙蝠の羽根を広げて現れたのだ。
心底、ガッカリしながら自らの性癖はロリコンだったと言うことに己を憎み、手を出す前に死んで良かったのでは?と言う最悪な答えを脳裏に過ぎっていた。
「ここで死ぬか、一年後に死ぬかの問に、答えてくれる?」
「うさんくせぇ。痛ててててて!!」
つい、その胡散臭さに声を出していた。
やってしまったと思ったが、時を戻そうの一言で戻る訳もなく、獣の様に鋭い瞳で睨まれ、激しい痛みに悶え苦しむ。
「一年って言ったら?」
「何かを私に捧げれば下げるほど、貴方は強くなる」
そんな羞恥プレイをされていると俺が助けた少女がハッと、俺達を見て、明確に冷たい目を、いや、俺に向けていた。
普通に考えて血塗れの高校生が人外の羽根を持った小学生に踏まれ、厨二全開の二人の世界を広げて入れば、白い目を向けられるのも分かる。
否!納得いかねぇ!
「助けてくれ」
「えっ」
うん。分かっていただろう?佐又理旒星。
9割1の女子が多い高校に入ってしまった頃から、四人の個性的な姉に囲まれ、玩具にされていた頃から気付いていただろ?女は助けてくれない。
「意識が......」
「あっ」
「見つけたぞ!」
銃を向けられる少女を守る為に、心臓を受け渡して現在、家のソファーでゴロゴロしていた。
少女曰く、半吸血鬼と言われる存在になり、二番目に価値が高い心臓を渡して特殊能力が発揮できる様になった。
「くくっ」
妙に寿命がガッツリ縮んでしまったショックはなく、特殊能力が使える優越感となれば小学生の頃の五百円玉を持った様な、そんな安心感に包まれている。
数分後に佐又理家の空気が凍った。