何も知らない②
爆発があったと思われる場所へは誰も近づけなかった。ただ厳重に防護服に身を固めた幾人かの人々が厳重に警備されたその場所へ出入りしていた。その様子を住民たちは遠巻きに不安そうに見つめていた。
「今の段階ではなんとも言えませんが。最大限の警戒は必要です」
「最悪の事態を想定して動くべきです」
「はっきり言ってくれ。とてつもない人数を調べなければならないのだろう。取り逃がした人数も結構な数にのぼる。すべてを調べるのはムリだ」
防護服のおかげで見えないがおそらく深刻な表情でこう話し合う人々
「とりあえず残っている人数すべてを調べろ。それで何もなければこの件は終了だ。疑わしきものはすべて消しておくように」
「何も知られないままに調べるなんて無理ですよ。すぐにバレます」
「それでもだ。やれることはやる。事が発生する前に片付けるんだ。今ならまだどうにかできる」
彼らは行動を開始した。
「何をするんですか! やめてください」
悲痛な叫びをあげる男を無視して防護服に身を固めていたその者たちは鶏舎に立ち入ると手にしていた火炎放射器を中にいた鶏たちに向け一気に焼き殺す。
鶏舎の持ち主は激しく抗議するがその者たちは一切その講義に耳を傾けない。それどころか持ち主を羽交い締めにすると殴る蹴るの暴行を加え意識を失わせる。
彼らは無言のまま示し合わしたかのように意識を失った持ち主をどこかへ連れ去っていった。
彼らが去っていったあと代わりにやってきた者たちは焼け残った鶏舎に薬品のような液体をかけたうえで跡形もなく破壊し、その跡地を埋めていった。
時を同じくして村に何軒か存在していた鶏舎や牧場においても同じような悲劇が繰り返されていた。そこにいた鶏や牛、馬に、羊や山羊などは一頭も残さず焼き殺されていった。
当然持ち主たちは抗議の声をあげるが彼らは一言も喋ることなく彼らの声を無視して作業を実行する。ここでも彼らは牧場主やその従業員たちに暴行を加え意識を失わせた後、どこかへ連れ去っていった。そしてここでも同じように薬品のような液体をかけたあと残された建物はすべて破壊され埋められていくのであった。
河原に集められていたキャンパーたちもまた無言を貫く防護服に身を固めていた者たちによって連行されていた。何人かは抵抗の意志を示していたがそうした者たちには容赦なく暴行が加えられ彼らには言われるがままれんこうされるほか方法がなかった。
「どういうことなんですか?」
この村の村長を問い詰めるのはこの村にいるただ一人の医師。この事態をうけ事情を知っているであろう村長に直談判しに来た。隣にはたまたま地域医療の取材に来ていた新聞記者男女二人がいた。
彼らのもとにも触手はのびていた