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Re:Alternative  作者: 冬野立冬
二章 試練の始まり
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47話 Game set…?


 『罪を喰らう者(クライム・イーター)』が速さで勝る事は恐らく無い。

 この事実は『罪を喰らう者(クライム・イーター)』自身が何よりも深く理解しており、足掻いた所でどうしようも無い現実である。

 それ故に『罪を喰らう者(クライム・イーター)』は考える。

 速さと力で敵わないのなら脳を使えと。

 反撃の狼煙(のろし)となる一撃を見舞うために悶絶しそうな意識をクリアにし、脳に酸素を回していく。


 ────隙を探せ……!


 向かい来る『何か』によって再び身体に衝撃が走るが『罪を喰らう者(クライム・イーター)』は痛みを(こら)え、思考を止めない。

 思考を止めた時が実質的な敗北を意味すると心の中で確信しているからである。

 繰り返される乱撃の中、『罪を喰らう者(クライム・イーター)』は常に相手から目を離さずに観察をしていた。

 『何か』の癖となる行動、呼吸の乱れ、視線、全てを『罪を喰らう者(クライム・イーター)』は見ていた。


「何をマジマジと見ている?」


 声を掛けられた次の瞬間、一際デカい衝撃が『何か』の拳を通して『罪を喰らう者(クライム・イーター)』の(はらわた)に放たれ、『罪を喰らう者(クライム・イーター)』は地面にその身を捻じ込んだ。


「今の俺に慢心は無いぞ。諦めろ贋作」


 自身を見上げる形で『何か』が近付きつつ言葉を紡ぐ。


「貴様の罪とやらも、大義とやらも全て折ってやろう。そうすれば今のお前の頭の中に浮かんでいる梼昧(とうまい)な思考も消え失せよう。敗者に思考など不要なものだからな」


「では負かしてみろ。最後に笑うのがどちらの『正義』なのか決めようじゃ無いか」


 『罪を喰らう者(クライム・イーター)』は『何か』を煽る為に第二の世界の転生者の言葉を若干借りて言葉を放った。

 その言葉は『何か』の堪忍袋に火をつけたのか『何か』は不快な顔をさらに歪めて無言のまま地面を蹴り上げた。

 次の瞬間には『罪を喰らう者(クライム・イーター)』の顔面に強烈な蹴りが叩きつけられ、『罪を喰らう者(クライム・イーター)』は思わず後ろ向きに倒れた。


寡黙(かもく)を気取ると思えば今度は口だけは達者の道化になるか?心底つまらん奴よ」


 『何か』は最早興味が失せたのか地面に仰向けで倒れている『罪を喰らう者(クライム・イーター)』の近くに歩き出し、自身の右足を再度振り上げた。

 その右足は振り下ろせば『罪を喰らう者(クライム・イーター)』の顔面に落ちる場所であり、いよいよ『罪を喰らう者(クライム・イーター)』の命は危ぶまれると言った所であった。


「もう良い。使用用途が消えた玩具などに興味は無い」


 気怠げに放たれた命の灯火を消しかねない蹴りが『罪を喰らう者(クライム・イーター)』の頭上に振り下ろされようとした時───


 突如『何か』の周りに無数の刃が姿を顕現させ、その矛先を全て『何か』に向けた。


「貴様!?」


 『何か』はすぐに無数の刃は『罪を喰らう者(クライム・イーター)』の温存していた魔力によって作られた物だと気付き身体を魔力防壁で覆うように一瞬で魔力を身体に展開させるが────


 刃は大半が間一髪の所で塞がれたが残りの数本が『何か』の身体に見事到達し、ラーゼの身体ではあるがその身体から初めて血が吹き出した。


 最初からこの策を狙っていた『罪を喰らう者(クライム・イーター)』の攻撃スピードは咄嗟の反応だけでは躱す事のできない実質的な不可避の速攻であり────初めての反撃であった。


「借り物の身体故に痛みこそ無いが……驚いたぞ贋作」


 身体に『罪を喰らう者(クライム・イーター)』の剣が刺さりながらも『何か』は何処となく荘厳に見える態度を崩さずに足元に転がる『罪を喰らう者(クライム・イーター)』を睨みつけた。


「しかし……ここまでだな。最後の最後に良い物を見せて貰った。()に死ぬが良い」


 初めて『何か』の口から放たれた慈悲の言葉に『罪を喰らう者(クライム・イーター)』は少し頬を緩めてゆっくりとその瞼を閉じた。

 思考を止める────即ち、敗北を悟ったのだ。

 『罪を喰らう者(クライム・イーター)』の魔力は枯れ果て、蓄積されたダメージにより立つ事はもう叶わないレベルで身体が損傷していたのだ。

 そして────『何か』の足が振り下ろされる。


「ちょい待った」


 突如────『何か』の振り下ろされた足と『罪を喰らう者(クライム・イーター)』の顔の間に一つの声と共に一つの足が割り込んだ。


 何が起きたのかと『罪を喰らう者(クライム・イーター)』は閉じた筈の瞼を(おもむろ)に上げるとそこには────


「少しお待ち頂いても?」


「ほう……懐かしい顔だな」


 そこには、デルメアの姿があった。

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