40話 Exceed
『何か』の魔術が地上に到達する五秒前────
李仁はキーボードの上に自身の指を人間とは思えないスピードで走らせる。
もしこの魔術が地面に堕ちてしまえば蹴り飛ばされて魔術の範囲外にいる『罪を喰らう者』以外は全員死んでしまうであろう。
それ故に李仁は手を止めない。
────僕はまだ、何もしてない!
あれ程の大口を叩いて他の人達も巻き込む形にしてしまったのにその一人であるラーゼを見殺しにし、更にはそれが原因で他の仲間達も危険な状態に陥れてしまっている。
それ故に、これ以上死なせる訳には行かなかったのだ。
脳が限界点を超えて行く
考えるより先に指が動いて行く。
考える暇など、ありはしない。
今この場で楽をしても李仁には関係ない事である。
彼はこのフィールドには間接的に関与している。つまり直接的ではない限り死ぬ事は無いのだから。
しかし李仁には周りを巻き込んだ責任がある。
そしてそれが原因で死んだ人間が一人いる。
その事実が李仁の集中力を更に加速させて行く。
第二の世界にて、転生者であるリクは戦闘を通して『死にたく無い』という気持ちから究極の集中状態────『ゾーン』に突入を果たした。
李仁はまたそれとは違う形で確かにゾーンに足を踏み入れていた。
彼の信念はたった一つ。
────死なせない!
星が堕ちる二秒前。
誰もがどうしようもない絶望に胸を苛まれる中、一人の人間によって希望は芽吹く。
そして、それと同時に星がフィールドに膨大なエネルギーを帯びて地上に到達を果たす。




