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前編

<頼りない言葉だけではダメなんだろうけど、実際…>



SNS上で少し議論になりつつある話題に自分の見識で辛うじて一言言えそうな流れになり、非常にさり気なく独り言の体で一言を添える。



「これでどうなるわけでもないんだろうけどな…」



僕はそういう時、自分のその短文がまるでパズルのピースのように問題に対して効果的に…役割と意味を果たす想像、もしくは妄想をしていたりするけれど、ただでさえ見逃されやすい事象を自分があの時見たかもしれないなんていう頼りなさではそこに何を添えているか分からない。




話はこうである。最近ある界隈では『未来創造社』という謎の会社が割と古臭い形式で様々なお宅を訪問して、怪しげな商品を売ったり配ったりしているらしいとの事。訪問するのは男性か女性らしく、しかもその辺にいそうな『おじさん』と『おばさん』だそうで、印象としては不思議と悪い感じはしないそうである。




で、何が問題というか議論になっているかというと、まずはその【実在性】である。『未来創造社』なんていうネーミング自体は実際発想としては普通…悪く言えば自信があり過ぎるだろという意味で凡庸とも言えるのだけれど、扱っている商品も半分オカルトに足を突っ込んでいるものらしく実際に購入した人などが、



『信じてもらえないかも知れないんですけど、こんな事がありました…』



と自信なさげに書き込むと余計胡散臭く思えてくるという罠があるらしい。ネットで社名を検索してみると、それらしい文字列がヒットするのだけれど規模が小さいのかページを作っていないのか、『在る』という確証が得られない(個人的には)。ある人は渡された名刺を名前にボカシを入れつつ画像にしてアップロードしたりしているが、それだって自作自演も可能である。疑っているわけではないが、やはり確証は得られない。




それが普通の会社だったら『まあよくわかんないや』で終わってしまうところなのだが、非常に魅力的な謎の商品の話を聞いていると実在するなら会ってみたい購入してみたいというリプがある投稿主に寄せられて、少しバズってしまったらしくてそれを「信憑性がないから」という理由で批判的に述べていたりする人も数日前から散見している。




悪名高き『悪魔の証明』で「ないとは言い切れない」が罷り通ると収集がつかなくなって、少し事態が硬直していたところである人から会社と人物に対する「有力な情報」が投稿された事で再び活気づいている。それは過去に『未来創造社』に勤めていたという人物のアカウントが発見されたという事らしい。




アカウント主「とりにとろ@駅前」の紹介文には特に変わったことが述べられているわけではないけれどその人物、男性と思われるその人の意味深な幾つかの発言がそのまま残っている。例えば、



「『未来を創造する会社』って、まあそうなんだけど…地味だよなぁ…」



とか



「訪問販売って今時古くないか?」




などそれらしい発言と、会社に対する愚痴が見つかる。そして『会社辞めてきた』という1年ほど前にされた最後の投稿以降、音沙汰がない。まあアカウントの放置はモチベーションが無くなれば起こり得る事だし、あまり誰ともやり取りしていないようだったので『独り言』用のアカウントだったと思われる。




意味深さに加えて謎解きミステリーの様相を呈してきた話題を僕が発見したのは4日前の事である。最初は完全に暇つぶしで見ていたのが段々とミイラ取りがミイラになったかのように気になりだして、自分で調べられるところまでは調べてみたり頭の切れる友人に手伝ってもらったりしているうちに一つだけ自分の過去の記憶、エピソードで関係のありそうなものを思い出してしまったのである。




それは僕がある地方に旅行に行った時の事だ。何気なく入った定食屋に先客で一人の男性が料理が運ばれてくるのを待っていたのだが、僕がその近くに着席したときに彼の電話が鳴って、



「はい、未来創造社の〇〇です」



と通話し始めたのを聞いたのである。その時は特に気にも留めなかったのだが、現在話題になっている投稿主が居住する場所が偶然にもその地方で、まあ何というか



<そういえばそこに旅行に行ったことあるよな>



と思い出したから、そのエピソードが蘇ってきただけの事だ。ただ、それもこういう状況では一つの情報かも知れないと思い僕はこんな書き出しで投稿した。




『未来創造社って今話題になっているようだけど、〇〇の方に旅行に行った時に…』




数年前の記憶の話だしこれで確証を持てるかどうかは分からないけれど、もしかしたらここから何かが掴めるかも知れない。





…と思って待ち続けたのだが、そこから一日経っても特に展開はなかった。それで僕も『まあ無理かな』と思うようになり諦めて読書でもしようかなと思った時、ダイレクトメッセージに頭の切れる友人の、



『場所を突き止めたかも!』



という通知が来た。そこから何故かもの凄い好奇心が湧いてしまい…というかそこで証拠を掴んで英雄になれるかもという発想があったのかも知れない、僕は友人と再びあの地方に急遽旅行することになったのである。




(続く)

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