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THE Final  作者: 書事丈
3/17

beyond the final 2

 5Fといえども、周りはビルばかりだ。下は道路。車のエンジン音、クラクションも聞こえてくる。

 ここは、ショッピングモールのフードコート。お昼はとっくに過ぎているのだが、混んでいた。ほとんどが学生である。

 外のテラスにも、テーブルをくっつけている。ドリンクなどと一緒に、教科書やノートを広げていた。

 同じ制服に同じカバンの男子が、7、8人。テストも近いので、学校帰りに勉強会をしようとしているのだが…、

「暑っちー」

春のうららかな季節は、すぐに過ぎ去ってしまった。お陰でくしゃみは止まったが、今度は寝ても覚めても暑い日が続いている。

「この時期こんな暑いの、おかしいよー」

とだらけている。一方では、スマホに釘付け。それを見ている者。

 その中で、比較的真面目に書いているものがいた。ミノルだ。

 お知らせ音に気づき、スマホを手に取る。

「どうしたんだよ? カニ」

彼はみんなから、"カニ"と呼ばれていた。

 声をかけたのは、あの"コマさん"である。この2人は高校1年から、同じクラス。部活も同じ、天文部だ。

「豪雨警報、出てる」

辺りを見回す。ビルとビルの僅かに見える空。黒い雲に覆われつつあった。風もきつくなってきたようだ。

「またかよー」

「マジかよー」

「かさ、持ってねーよー」

と言いながらも、特に慌ててはいない。相変わらず、のんびりダラけている。

「ゲリラ豪雨ばっかだと、夏休みの天文観測も怪しいな」

「そうなると、こと先輩。ガッカリするよ」

天文観測は、天文部で、初めてのイベントである。ミノルも今から楽しみにしていた。

「ところで、カニ。今やってるゲームって、なんだっけ?」

 コマさんがスマホを覗き込みながら訊く。ミノルは、スマホのアイコンを指差した。

「ビヨンド ジ エンド…?」

「うん、RPGだよ。未来の荒廃した世界で、いろんな冒険をするんだ。この前、ダンジョンで、重要アイテムをゲットしたんだ」

と楽しそうに説明する。

 今までいろんなゲームをしたが、これが一番面白い。

「カニのオススメだからさー。入れようと思ってんのに、見つかんねーんだよ」

コマさんの声を聞き、反対側で寝ていた男子が、ガバッと体を起こした。

「俺も。そのゲーム、やりたいんだけど、ないんだよなー」

「え、そんなはずないと思うけど…」

そう言いながら、ミノルがストアーを開けようとした時、

 ゴロゴロゴロ

一同、顔を上げる。まだ、ひが高いはずなのに、真っ暗だ。周りには、誰もいなくなっていた。

 風が強く吹き、ピカッと光る。大粒の雨が、ポツン、ポツンとテラスの手摺りや、テーブルの近くまで落ちてきた。

「お〜、キター」

慌てて、広げていたものをカバンに入れ、中へと駆け込む。その途端、

 ザーーーッ

バケツをひっくり返したように降ってきた。

「やっベー」

「あぶなかったー」

「ハゲるぞ。ハゲ」

と口々に言う。

 雨には有害物質が入っている、という噂が流れていた。SNSなどで、雨にあたり、

「皮膚がただれた」だの

「髪の毛が溶けて無くなった」といったような投稿が流行っている。

 写真を載せたりしているが、「合成だ」とみんな気づいていた。

 この手の話題は、盛り上がりを見せている。嘘だと思いながらも、雨は大気汚染の象徴となっていた。

「なあ、雨でしばらく帰れねーし。ゲーセンやろうぜ」

「いいねぇ」

とはしゃぐ。

 結局、勉強会といってもこうなるんだ。ミノルは溜息をつきながらも、微笑んだ。

 みんなについて、エスカレーターで下に降りる。横は吹き抜けになっていて、金の棒のようなものがたくさんぶら下がっていた。螺旋になっていて、下まで続いている。"ハープをイメージした"とどこかにポスターが貼っていたな。

 ゲーセンでは、思い思いに楽しんでいた。ミノルも見ていたが、明るくチカチカした照明、流れてくる機械音が苦手だ。すぐに、その場を離れる。

 隣りには、携帯のアンテナショップが並んでいた。一番前の棚に目立つポップ。最新のタブレットが置いてあった。ミノルは近づいて、手に取った。

 みんなとワイワイやっているのも楽しいが、こうやって1人で静かにしている方が、性に合っていた。

 勉強が嫌だったり、将来が不安だったり、悩むこともあるけど。仲間もいるし、バカも出来たりして…。いまが一番いい時なのかなぁ、と漠然と思っていた。

「カニ、何やってんだ?」

振り向くと、コマさんがカバンを肩の後ろに回し立っていた。

「これ、最新なんだ」

とタブレットを指差す。

「いろいろ便利な機能もあるんだけど、特にいいのは、自分を主人公にしてゲームも創れるんだ」

 そう言って、ミノルが今まで触っていたアプリを開く。

「へぇー。どんなゲームだ?」

「カレンダーとかマップに連動して、学校行ったり、どっか遊びに行ったり。自分で好きな場所もつくれるし、友達登録なんかも出来るんだ」

「けっ。普段、やってることと変わんねーじゃん」

とコマさんは笑った。

 最大の魅力は、自分でゲームが好きなように創れる。実際、その場所に行こうとして思えば、お金も時間もかかる。それが、タブレット1つで、手軽に出来る。

 だが、ミノルは何も言わなかった。確かに、このゲームには立ちはだかる敵も、ワクワクする冒険もない。

 ミノルはタブレットを置いて、コマさんと歩き出した。

「みんなは?」

「もう、帰ったよ」

「じゃあ、雨止んだんだ」

話しながら、エスカレーターで下に降りて行く。


 2人が去った後、スマホを片手に男性が最新タブレットの前で立ち止まった。携帯ショップのジャンバーを着ている。

「ハイ…ハイ、あ〜そうですね…」

スマホで話しながら、先程までミノルが触っていたタブレットを手に取る。

「ハイ、わかりました」

と言って、電話を切った。

「ああ〜、アラちゃん」

 男性がそばに通りかかった女性を呼び止める。同じジャンバーを着ていた。

「はい」

女性は立ち止まり、そばにやって来る。

「これ、なんか不具合があったらしくて…。しまっといてくれる? あとで送り返すから、棚の下に入れといて」

「わかりました」

女性はタブレットを受け取ると、付いているコードを抜き始めた。



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