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THE Final  作者: 書事丈
10/17

beyond the final 9

 今日の太陽はギラギラ。空も真っ青で、雲一つない。こんなクリアな晴れの日はウキウキする。

 ガスマスクはしていないが、顔には布を巻いていた。もちろん、手袋もブーツも欠かせない。いつ風向きが変わるか、わからないからだ。

 暑いが、仕方がない。歩いていると、息が切れてくる。それでも、アクアのお喋りは止まらなかった。

「あ、待って。のど、乾いちゃった」

立ち止まり、かばんから水筒を取り出す。フェルトのマスコットが揺れている。気に入って、ずっと見ていたら、男の子ーレスプが譲ってくれたのだ。

 結局、名前は思い出せないまま。で、リュラがつけてくれた。リュラは、名前つけの天才だ。

「はい、お水」

水筒をレスプに渡す。布を深く巻き、極力、日光が当たらないようにしている。サングラスもしているので、顔はほとんど見えない。

「あ、…ありがとう」

大きく息をしながら、受け取った。

「でね、学校には、いーっぱい人がいるの。ミノルとことは仲良しなのよ」

アクアは"Daily Game"の話をしていた。ゲームも楽しいが、こうして話し相手がいる。新鮮だった。

「今度、学校のない日に、いろんな所に行ってみようと思うの。例えば…公園とかがいいかなぁ」

 レスプは水を飲みながら、「うん、うん」と頷く。ゲームをするのは、もっぱらアクアだ。彼はタブレットの光が、目に痛いらしく、横で音を聞いていることが多い。

 この暑さと直射日光は、アクアもバテてしまいそうだ。慣れないレスプにとっては、なおさらだろう。かなり疲れている。

 レスプが「ついていく」と言った時、レオは反対した。出掛ける前は、こんなに暑くもなく、曇っていた。2人でお願いして、「この天気ならいいだろう」と許してもらったのだが……。

「ちょっと、休もうか」

崩れかけた建物の影を見つけ、腰をかける。

「あのね」

アクアが声をかける。レスプは眩しそうに顔を上げた。

「ガレキの向こうにお化け草があるでしょ」

「お化け草?」

遠くを見ながら、探す。

「ああ、あそこだね。いっぱい、もしゃもしゃしたものがある所」

と指をさした。

「あ、地下にはないもんね。暗いし」

レスプは、小さく頷く。

「そう、あの緑の近くに、黄色い実がなっている木があるの」

 黄色い実が体にいいというので、早速取りに来た。アクアは、前の暑い夏に行ったことを思い出したのだ。

 普段、外に生えているものは、食べ物でも手を出さない。が、果物は皮があるので、中は大丈夫だ。これなら、レスプも元気になるだろう。

「あたし、1人で行けるから、レスプはここで待ってて」

水筒を受け取り、カバンにしまう。

「大丈夫だよ。僕も行く。せっかくここまで来たんだ。一緒に行こ」

レスプは立ち上がり、手を差し出す。こんな風に言われるのは、初めてだ。アクアはなんだか嬉しくなった。手を握り、立ち上がる。

 お化け草の角を曲がると、黄色い実をつけた木が見えてきた。

「あった! 実がなってる」

前の時ほど、たくさんではない。おそらく、誰かがとっていったのだろう。アクアは、その人が残してくれたことを、感謝した。

 木に登って、実を捥いでいく。レスプは心配そうに見ていたが、アクアはお手の物だ。

「ねえ、受け取って」

と実を投げる。レスプは危ういながらも、手を差し出し、体で受け止める。

「取ったよ」

笑いながら、声を張り上げる。

「もう一回、投げて」

アクアも笑い、そうしているうちに、結構いっぱいになった。かばんもずっしりと重い。

 採り終わった後に、水を飲みながら、また少し休憩。

「前にもここに来たことあるんだけど、今日の方が、うーんと、楽しかった」

1人じゃないもの。

「ねえ」

アクアはレスプの顔を覗き込む。サングラスに顔が映っていた。汗だくで、汚れているけど、嬉しそうだ。

「あたしたちって、仲良しだよね。こういうの、お友達って言うんだよね」

 レオやリュラとも仲良しだし、お互い協力して過ごしている。アクアより年上で、大人だ。どちらかと言うと、色々教えてくれる親のようだ。怒られたり、注意されたり。最近のレオは、特に厳しいような気がする。

 レスプは同じくらいの年ーどちらも、正確な年齢は知らないのだが。

 2人でやりたいことやって、バカなことを言い合ったり。大人たちが「やめろ」ということも、内緒でしちゃう。

 なにより、一緒にいるととても楽しかった。

「うん、そうだね」

レスプもそう思ってくれてる。さらに、心が弾んだ。

 日もだいぶ高くなり、これから、ますます暑くなるだろう。その前に帰ることにした。

「⁉︎」

レスプは立ち上がったが、また屈む。そして、ガレキの下に手を伸ばした。

「どうしたの?」

アクアも横に座り、覗き込んだ。

「これ」

取り出したのは、手の平に収まるつぼの形のもの。黒く汚れているが、なんとなく青色だとわかる。

「あーー‼︎」

アクアは、かばんにつけていたマスコットを見た。2つを見比べてみる。色も形もそっくりだ。

「おんなじだね。なんかのお守りかな…?」

「ほんとだ。一緒」

レスプも表や裏にしたり、くるくる回して、見ている。

「アクア、1つずつ持っていよ。仲良しだから」

布で顔を覆い、サングラスで目が見えなくても、笑っているのがわかる。

「えーっと…。こういうの、お揃いって言うんだよね」

「うん! お揃いのお守りだね」

アクアも笑顔で答えた。

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