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2、- 失策 -


「――救難信号を受信した。30cacf付近までおよそ20分――」

S級班のみを乗せた輸送機は異常なD数値(Duskが発生する数値)を観測、急行している。

輸送機は全て自動で目的地へ向かう。

つまり操縦者がいない、これは輸送機だけでなく全ての兵器が例外なく無人機だ。

戦闘服に身を包み揺れる機体の中で到着の時を待つ。



「おかしくないか、第一陣が俺たちなんてよ」ゼルは嘆く。


「それだけ異常な数値だったんでしょ」宥めるレイチェル。


「文句があるならアルフレッド様に~」投げやりなウォンツ。


確かに妙だった。作戦開始時真っ先に投入されるのは代えが効くD班からだ。

そこからC・B-と続く筈だった、S班は総員5名の正に少数精鋭だ。

つまりオレ達が第一陣っていう事は異常事態というのは明らかだった。


「うちのエースさんはどう思う?」突然吹っ掛けてきたのはゼルだ。


「命令は命令、やるしかない」と取り敢えず返す。


「ヒュー!クールだねぇ!」茶化すゼル。


「リーダの言う通りだ。もう少しで到着だ。黙れねぇのか?」傍観していたグレンが口を開く。


へ~いとナイフの柄を咥えるゼル。

オレはこれはチャンスだと考えていた。

現地にいるDuskをS班が全滅させてしまえば後に続くであろう班が作戦に参加しなくていいと。

脳裏にブラッド・クローディア・デュータの顔が思い浮かび、決意と共に拳を握り締める。



「――目標地点に到着、S班降下を開始――」

それを合図に輸送機の扉が上に開き、新鮮な空気がこれでもかと体に受ける。

輸送機がオレ達の降下地点を両サイドについたライトが照らす。

この世界は闇に包まれている。

空はかつて太陽と月が空に浮かび地表を照らし、生物を育んだという。

しかし、現在では厚い雲が空を覆い時より黒い雨が乾いた地面を濡らすだけだった。



「俺が一番乗りー」ゼルが真っ先に飛び降りる。

「アイツ死ぬわ」とレイチェルの後3人が続く。


地上に降り立つとクシャっと灰に近い草木が乾いた音を鳴らす。

戦闘服の胸のポケットからFireflyという丸い球体を数個取り出し、それを宙に投げると4枚羽の追尾する光る球体が辺りを照らす。

しかし、濃霧で視界5mが精々というところか...

更に腰に携えてある懐中電灯もつけ辺りを見回す。

その間にも背後で輸送機は着陸し次の出番を待つ。


「お出ましだな・・」指をさすグレン。

指を追うとそこには...


足の生えた真っ黒なオタマジャクシの様な奴が見える。

だが、尻尾はなく大きさは約1mだ。

灯りに照らされると似合わない瞳孔が開きに開いたギョロついた目が縮瞳する。

これがDuskだ。


「1・2・・・5体?すくねぇな・・」と数を確認するゼル。


奴らは光りを見たくらいじゃ襲いはしないが、何が目的なのか、どう数を増やしているのか。


「俺がやろう、この数ならいい射撃練習になりそうだ。」グレンが長銃を構えながら前に出る。


「ここは任せよう、俺たちは・・・」Fireflyがオレ達を導くかの如く、突如暗闇から半壊した石レンガ作りの古城が現れた。




※      

 


「ウォンツはここで待機、レイチェルとゼルはオレに続け」古城の入り口に着くや否や命令を出す。


「りょうか~い」と気の抜けるウォンツの返事が返ってくる。


ゼルとレイチェルの前に出て足元を確認しつつ進む。

酷く狭い上に入り組んでいる...

そこでFireflyが全羽が何かを感知したのか先行してしまう。


「お、おい!!」Fireflyに途中まで並走するが、その速さに付いていけなかった。


「最悪だ・・」とゼルが嘆く。


「FireFlyは思擬に追従と命令によっては索敵・探索はするけど、誰も命令してないよね・・」疑問を抱くレイチェル。


そうなのだ。古城に入る前はD値の高い場所を探索して貰ったが、今は追従に命令を変えていた。

命令を無視した?エラーか?人為ミス・・?いや、ありえない。


「心許ないが・・」と言いつつ腰に携えた懐中電灯を外し手に持つ。


仕方無しに各々懐中電灯を持ち奥に進む。


一直線にしか照らせない懐中電灯に煩わしさを持つ。

これでは曲がり角や部屋に入る際、クリアリングが遅れる。


ベチャという音に足元を確認すると引きずられたのか?血が続いている。

誰の・・?など考える暇なく「階段・・」とレイチェルが照らす。

一歩一歩昇るとレンガと靴がやけに響き、更に血だまりを踏む度に気味の悪い音も加わる。




 カーン!!


と上の階から金属質な物が地面に落ちたであろう音が突如響く。

 

「!!?」驚いて身を竦ませるオレ達。


「Fireflyが落ちたんだろ・・」と推理するゼル。


「そうに違いないわね、すぐそこね」と階段を一気に上るレイチェル。

後に続く。


上りきると大きな空間にたどり着く。

目の前に一室、階段の横を通った先に一室、そのすぐ右に一室だ。


「それぞれで確認するか?」と提案する。


「そうね上にまだ階があるしね」と賛同するレイチェル。


「さっさと終わらそうぜ」と目の前の部屋に入っていくゼル。


「血が・・」とオレは呟く。


「?何言ってるのアル、私右ね」とさっさと入っていくレイチェル。


見えないのか・・?

下の階から続く引きずった様な血の跡は必然的に残った部屋に続いているのだ。


「・・・」気が乗らない乗らなさすぎるが慎重にドアノブに手をかける。


ギギギッとゆっくりと開く木製のドアを押しながら足元を懐中電灯で照らす。


すると、光が丸い球体から反射される。


Fireflyだ。ホッとしながら懐中電灯を床に置き、Fireflyに手に持ち起動を試みる。


だが、起動しない。

壊れているのかと試行錯誤しながら触れていると、突如・・


ガタッ!!


っという物音にFireflyを手を滑らし落としてしまう。


人の気配がする...床の一部を照らす懐中電灯を恐る恐る手を伸ばし構える。


すると赤い布が視界に入る。

ゆっくりと灯りを上げる。


「人形・・?」赤い布の正体は人形が纏うドレスだった。

その人形は両膝を抱え顔はうなだれる様に下に向けられ汚れた茶色の髪で顔を窺う事はできなかった。

何故人形だと分かったかというと両膝を抱え髪の間から見えた指が球体関節だったからだ。


こんなのに焦った自分に少し笑いがこみ上げる。







【 () () () ()...】


先程まで顔をうなだれてた顔は起き上がりその形相に後込む。

白目はなく真っ黒な目がこちらを捉え、人形の白すぎる肌には目から血が垂落ちる。

人形はゆっくりと起き上がる。

座っていた時は分からなかったが背丈はオレと同じくらいだ。

本能が逃げろ!と言っている。だが、身体が動かなかった。

ヤツが一歩と踏み出した時。





「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ」

と聞き覚えのある声が各方角から聞こえる。


すると先程まで迫っていた筈の人形は最初からなかったかのように姿を消していた。

オレは逃げる様に部屋を飛び出す。


「ゼル!!レイチェル!!!」と仲間の名前を呼ぶ。

だが、応答は帰ってこない。


「ゼル!!!?レイチェル!!!!」叫びながら部屋を確認しに行く。

不気味な程静まり返った部屋に仲間の姿は存在しなかった。


何かに足を滑らせて転倒する。

「いてて・・・ えっ・・?」つい目を見開いた。

懐中電灯に照らされたソレは、仲間が装備していた長銃や懐中電灯などの備品だった。


もはや此処にいる意味はなかった。

無我実中で廊下を走る。

一心不乱に古城から飛び出す。

勿論そこで待機していた筈のウォンツの備品だけが転がるだけだった。


輸送機へ走る。

そこに待機している輸送機にDuskが群がっている。


Aila(アイラ)オレに力を――」走りながら拳を額に付ける。

すると青白い光りの大剣が輝きながら発現する。

その大剣には重さはなく片手で扱える。

オレは輸送機に群がるDuskを一閃する。


「開けろ!!」懐中電灯を持つ片手で輸送機を叩く。

しかし開かない。

輸送機は操縦も開閉も全てAilaが管理している。

Ailaとは思擬を扱うKanaliaに力を与える物体だ。

それ以外にもAilaは機械・都市機能・人さえも管理している。

今こいつが命令を聞かないという事はAilaの管理を離れてる?


【イヒッイヒヒヒ・・・】

気味の悪い笑い声の様な音に振り替える。

すると輸送機を中心に数百..いや数千それ以上いるかもしれないDusk群れに囲まれてるのがわかる。


「まずいな・・」

思擬で創られた大剣を輸送機の扉に突き刺す。

突き刺した衝撃で取れた扉をそのままDuskの群れに投げる。

開いた扉から輸送機のコンピューターを覗き込むが、完全に停止している事を確認する。


Ailaの管理外という事は救援も呼べない...

身体が震えるのがわかる。

いくらS班でも、この数のDuskは不可能だ。

死への恐怖か?仲間を失った悲しみか...

いつの間にか涙が出ていた。

あまりの情けなさに歯を食いしばるが、そんな時間はなかった。


背後から数体のDuskが輸送機に入ってくる。

振り返りながら蹴りを入れ数体撒き込みながら吹き飛ばす。

機内の中で一回転し機体ごと切り刻む。

上下で真っ二つになった機体を中から一刀両断し、機体の天井だったモノを扉同様にDuskの群れにブチかましてやる。


「生き延びてやる・・・」そうだ。友人の元に帰るんだ。


斬り込みながら群れに突っ込む、そのままの勢いで左、右と切り返す。

飛び込んでくるDuskを突き刺し、飛び掛かるDuskに思いっきり放る。

Duskがピンボールのように弾ける。

弾けたDuskが何体も撒き込みながらオレの元に返ってくる。

ソレを薙ぎ払いながら更に数体道連れにする。

応戦し続けてると不意に足元に違和感を感じる。


「!!?」

それはまるで腸の様なDuskだった。一定間隔に目が存在し数十mはあるであろう体がいつの間にか足元を蔽っていた。


逃げ出そうとするその矢先に、既にソイツは足元に絡まり身動きはもう取れなかった。

どうにか抜け出そうと体を捩るが、抵抗虚しく上半身にも絡まり尋常じゃない力で押しつぶされる。



「ぐああああああああああああああああああ!!!!」

オレは地面に引きずり込まれる。

手を黒い空に伸ばす。


誰か.....


ソイツに空を塞がれている前に遠くに灯りが見えたような気がした。

だが、真っ黒なこの世界同様、オレの世界も闇に落ちていくのだった。

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