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0、- 悔い -


オレは普通の家庭に生まれて、普通の生活していた。

それが夢の夢になるなんて考えられなかった。


でも、オレはどこかで望んでいたのかもしれない。



中世の風景が遠くに見える。

ここは街はずれの自然と共存したようなお穏やかな屋敷だった。

だが穏やかさは叫びによって消え去る。

「い、痛い!痛いよアル!!」オレは双子の姉ジェイナの髪を引っ張る。

そいつが鳴いた途端

「やめろアル!!」

「やめなさいアル!!」

両親はオレを捲し立てた。

オレが叱られる所を窺うジェイナ

両親に挟まれ怒鳴られるオレ

悪いことをしたら怒られるのは当然だ。だけど、無性にイラつくんだ。

アイツがいると・・・


「お前なんて死ねばいいんだ!!」ジェイナに指をさす。


「お前っ・・」形相を変える父。

母に有無を言わず、首根っこを掴まれ部屋に連行される。


「クソッ・・クソッ」部屋の片隅で蹲り泣きじゃくるオレ。

惨めでクソなオレの日課だった。


何にでも始まりがある。

勿論コレにも


オレはジェイナと週4で習い事をしていた。

ピアノ

礼儀作法

勉学

武芸だ。

自分から望んで習ってる訳じゃない。

母から与えられたやらなきゃいけないモノだった。


当然つまらなかった。教室には通ったが何もしなかった。

当たり前だが、教師にも生徒にも腫れ物のようになっていた。

だが、ただ一つ武芸だけは真面目に行った。

身体を動かしてる間は嫌なことを忘れられたんだ。

それと唯一ジェイナに勝てる事だったからだ。

しかし、それも長くなかった。

いつの間にかオレより上の階級になっていた。


全て奪われた気がした。


その時からジェイナに当たるようになっていった。


いつもの様に髪の毛を引っ張る。

スルトジェイナが振り返りながら何かを振り下ろした。

ザクッという音と共に羽ペンが手に突き刺さった。

「うわあああああああああああ」オレは叫んだ。

両親が駆けつける音にオレは助けを求める。

「母さん!!!」

「大丈夫?」ジェイナに駆け寄る両親

「オレ怪我しちゃったんだけど・・」と消え入りそうな声で呟く。


「お前は家族じゃない!!」父がそう言い放った。

当たり前だ罪人を助けるような人など。


ずっとジェイナと比べられてきた。

こいつらがいなければオレはきっとマシに生きれた!!

そうだ・・

 いらないんだ!!


     家族なんていらないんだ!!!!!!



何処か遠くへ!!

オレはいつの間にか走っていた。


どのくらい走ったのかもうわからない。

無我夢中に走り続けた。


いつの間にか林の中に迷い込んでいた。

「はぁ・・はぁ・・」疲れて少し開けた場所に倒れ込む。

仰向けになり疲労感と昼間の暖かで睡魔に襲われる。



「もう・・お終いだな・・」自分より低い声だ。

これは夢か?

目の前には知らない女性だ。だが、大事な人だったような・・

「大丈夫・・きっと私たちで必ず・・」彼女の背後から朝日が昇る。

その光が大きくなり・・



「きっと助かるから・・!」視界が全て白に染まると同時に、そう聞こえた。




ドォォン!!と爆発音が鼓膜を揺らした。

「!!?」その音でオレは跳ねる様に飛び起き辺りを見回す。

既に辺りは日が落ち、林は昼では見せない不気味な姿を見せていた。


地面を揺らすような低音が聞こえ始める。

ブブブブブという音と共に、木々の間を辛うじで差し込んでいた月明りを遮えられた。

見上げると巨大な影がシルエットを光る導線がその影の形を主張している。



デカい、それが空なのではと錯覚するほど巨大な戦艦だ。

そいつはゆっくりとオレの頭上を通り過ぎ街へ向かっていく。


「父さん・・母さん・・」そいつを自然と追いかける。

林を抜けると全容が見える。

街は各地に火が広がり空を赤く照らす。

戦艦の左右から幾多のミサイルが堕とされたのか青白い煙が尾びれを引いている。


オレが街に向かっている間にも刻々と状況は変わっていく。

その戦艦から武装した兵士達ががジェットパックで降下する姿が見える。

幸い家は街はずれだ。すぐには手が回るように思えなかった。


家にたどり着く、妙に静まり返った家がオレを待っていた。

玄関・窓は全て開け放たれカーテンが靡く、気味の悪い風が肌を撫ぜた気がした。


既に逃げたのだろうか・・?

家には誰も居ない、ましてや慌てて逃げた様子もない。

さっきまで聞こえたはずの爆発音も消え、静寂が全てを包んでいた。





  『  ()() ()・・  ? 』



名前を呼ばれなければ気づくのは難しかっただろう。

軋む音に近い声。水分がない喉から無理やり絞り出したようなソレがオレを呼ぶ。


玄関からだ。入ってきた時は何もいやしなかった筈だ。

でも確かに聞こえた軋む声に惹かれる様に近づく。


おそるおそる玄関ドアから外に出る。


そこには背を向けた兵士が足元の何かを確認している様子だった。

「ここはDusk(ダスク)だらけだな・・」

その何かは昆虫のように無数の足があるように見える。

ギョッとし扉に気が回らなかった。

ガチャンと扉が閉まる音が鳴る。

その音で兵士が振り返り銃を構える。



-その兵士と見知らぬ女性が脳裏に重なる-


-何故だが知らないその女性が母のような錯覚がする-


-視線がいつもより低く感じる。だが、そんな事今はどうでもよかった。-


-帰らないと!!不意にオレはその人に駆け寄る-


-その女性は泣きながら拳銃の引き金を絞る-


鋭い痛みで現実に引き戻される。

オレは横に倒れていた。

身体が動かない。

その兵士の銃弾が頭を貫いた様だった。

あまりに無力だった。

オレは家族を思い出しながら思った。


オレはただ駄々をこねる無力で無知な子供だったんだと。


ただ構って欲しいだけのクソガキだった。


遠くなる意識で今できる事はただただ自分を呪う事だけだった。


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