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魔法省報告書 / リベオール総合商会報告書 / 近衛兵務府報告書 / グローアーバン路面軌道株式会社観光パンフレット / その他新聞記事

5章終了時点での主人公と吟遊詩人の会談の関係各所の報告書の一部と、同時期の国内・国外情勢です。

主人公以外の視点での情勢推移について軽く触れていきます。


11月25日付

 【極秘】ヴェレナ・フリサスフィス活動報告書――第6期


  魔法大臣 フロドプルト・クロドルフ 様



 本日行われた、ヴェレナ・フリサスフィスと吟遊詩人、ティートマール・ベルンハルトの会談が行われた。


◆参加者

ガルフィンガング魔法青少年学院1年 ヴェレナ・フリサスフィス

魔法省整備局 保安調査部 ウィトルド・オードバガール

私立アプランツァイト学園中等科1年 ソーディス・ワーガヴァント

 ※ワーガヴァント氏は、エルフワイン・アマルリック王子と、フリサスフィス氏の父、アデルバート・フリサスフィス、そしてフリサスフィス氏と関係が強いリベオール総合商会から同席依頼があったため、本会談に参加している。


吟遊詩人 ティートマール・ベルンハルト


◆報告

 以下に結果を報告する。


1.会談内容

 ・ベルンハルト氏の従軍記者時代

  →商業都市国家北部において魔王侵攻に相対し、戦闘経験あり。従軍記者としての職責を逸脱している可能性あり。

 ・発禁本『森の民国家維新論』の贋作流通に関するベルンハルト氏の見解

  →出版発行法違反に関与の疑い。ただし、発言からは加担しているか不明。

 ・維新主義による空想的理想社会に関する議論

  →革新傾向が極めて強く、過激派思想の首魁しゅかいの異名の通り。

 ・【重要】市民革命の失敗予期

  →既存の主張と異なる点。吟遊詩人自身は既に考えを変節している。

 ・王家をアマルリック家と定めた法的根拠が無いことを指摘

  →大公家を旗頭にして、他勢力との利害調整が成功すれば王家を挿げ替えることが可能と憲法解釈。

 ・ベルンハルト氏の革命論

  →『機』と『核』。我が国の『核』は『悪役』とのこと。詳細不明。


2.ベルンハルト氏について

 我が国の国家体制を根底から覆す危険思想を有するため、思想面では警戒を要する。

 過激派の行動面に影響を与えているか不明。過激派組織は彼の思想に共鳴しつつも個々で暴走していて制御不能の可能性あり。

 結論としては、ベルンハルト氏の監視は必須だが、逮捕等実力手段に出た場合、暴発が想定される。


3.フリサスフィス氏とワーガヴァント氏

 フリサスフィス氏は、節々にてベルンハルト氏の革新思想に共鳴する傾向あり。若年であることを踏まえれば理想主義的な思想に傾倒することは致し方ない。一方で、革命には否定的な考えでベルンハルト氏に鋭く問いかけをする場面も。要経過観察。


 ワーガヴァント氏は、民間人の女子中学生でありながら、その知識量と胆力は大人顔負けの実力者の片鱗を見せる。フリサスフィス氏の進退如何によっては長期的にはワーガヴァント氏はフリサスフィス氏の強力な同盟者になり得る可能性あり。

 革新思想に共鳴した様子は見られなかったが、一方で既存体制を盲目的に信奉している訳でも無い。フリサスフィス氏に強い影響力を有する同氏の動向には注視する必要が高い。


4.憲法解釈に関して

 ベルンハルト氏の言に従えば、魔法使い主導の王権を樹立をすることも理論的には可能。であるため、魔法使い内部から同氏の思想に共鳴する者が出ることが今後危惧される。


◆総括

 フリサスフィス氏自身はベルンハルト氏の影響を多少なりとも受けたと思われるが、一方でフリサスフィス氏の考えや行動は周囲に居る友人の影響を強く受けていることが判明した。

 また、逆に根幹的な部分はむしろ独自の思想を有しており、他人の言いなりであったり、既存思想に属するなどの一面的な判断ができない。

 彼女が魔法使いとしてどのように成長するにせよ、周囲の人間とともに存在感を放つ存在になることは疑いないと推測される。



  魔法省整備局 保安調査部 ウィトルド・オードバガール




   ◇


11月27日

 過激派思想家ティートマール・ベルンハルトとの会談報告書【社外秘】


 一昨日、スタンアミナス大学特任教授の娘であるヴェレナ・フリサスフィス殿が王家の信任を得て、ガルフィンガング解放戦線に代表される過激派組織の思想的支柱であるティートマール・ベルンハルトと会談を行った。

 その会談内容を我がリベオール総合商会にも共有していただくことを了承しており、以下に会談の経過を記す。


 (中略)


 ……以上から、吟遊詩人の主張は『経済産業連盟の打破』に『富裕層課税』と我々商会側と決定的に相容れない。しかし、一方で吟遊詩人自身は要人暗殺による国家基盤の破壊は想定しておらず、過激派組織と彼個人は別の敵対者として考えるべきである。

 そして『暴力革命による国家の解体』の危険性は、吟遊詩人自身が失敗を予期したことで、彼本人が革命に身を投じる可能性が低いことが分かった。

 故に過激派組織らが気が付いていない、吟遊詩人と過激派の『溝』を利用することを私は提起したい。


 また、今回危険な会談を王家から依頼され、我々に新たな判断材料を与えてくれたフリサスフィス殿には、リベオール総合商会からも褒賞を出す必要があると考えられる。

 フリサスフィス殿は我が商会の考えと同様に情報を重視している。故に『森の民金融恐慌』の際にドラッセル商会から放逐され、一部を吸収した旧ドラッセル金融。そのシンクタンク組織から上がってくる情報を精査した上でフリサスフィス殿に渡すことを私は提案する。

 かのシンクタンク組織はドラッセル商会が新興であったが故に、錬金術に一日の長がある。最新の錬金術技術の動向をフリサスフィス殿に付与することで、錬金技術を要する『人造繊維』に関して新たな知見が引き出せるかもしれない。それが今回の恩賞を選択した動機である。


 対案や意見がある場合は、次回の経営幹部会議までに準備していただけるとありがたい。


 以上



  リベオール総合商会 リベオール工業部 新規事業部長 ベック・ラグニフラス




   ◇


11月25日

 【機密指定】王子殿下の私事行為成果報告


 王子殿下が学友ヴェレナ・フリサスフィスに依頼した吟遊詩人ティートマール・ベルンハルトとの会談が終了したことを報告する。


 近衛兵務府 幕僚部第5課




   ◇


11月25日

 【機密指定】王子殿下学友に関する報告(継続)


 王子殿下の学友ヴェレナ・フリサスフィスならびに同氏関係者ソーディス・ワーガヴァントは、吟遊詩人ティートマール・ベルンハルトとの会談の中で、王家を軽んじる発言、革新主義に迎合する言動が見られたことを報告する。

 王子殿下に悪影響を与えないために、両名を近衛兵務府警務部第4課の監視下に起き、思想調査を行うことを決定した。


 近衛兵務府 警務部第4課




   ◇


【 自然が広がる理想郷――商業都市国家群北東部スパツィターレ地方を紹介! 】


 一面に広がる大豆畑、風光明媚な大自然と人々の生活の息吹が感じられる炭鉱街。商業都市国家でも有数の石炭採掘を誇るスパツィターレ地方への旅行がオススメ!


―交通の便の良さ―

 スパツィターレ地方は、我が国西部有数都市であるラルゴフィーラから、我が国の特殊法人東スパツィターレ会社の国際鉄道に乗り、『街道の民』を越えた先の商業都市国家の玄関口に位置しています。ですので、我が国から最も近い商業都市国家の観光地と言えるでしょう!


―『森の民』文化と商業都市国家の文化の融合―

 そんな我が国に近い地方ですので、文化的にも我が国に似ております! ですので、他の国よりも森の民人は過ごしやすい初心者向けの異国旅行地と言えるでしょう。我が国のゼニーはスパツィターレからすると外貨ではありますが、大きな商店などではゼニーで決済できます。


―豊富な観光資源―

 商業都市国家と我が国を結ぶ地方なので、国際鉄道沿いに都市が点在しています。そこでは本場の『商業都市国家街』や、流行の最先端を発信する繁華街などもあります。一方で、郊外に出れば延々と続く大豆畑が広がる農村があり、山間部には石炭の炭鉱街があります。

 また近年は我が国の資本で石炭資源を利用する工場群などが建設され、工場見学などでも有名になっています。例えば石炭から錬金術を用いるとナイロンが出来るので、それを活かした人造繊維工場などがありますね! 観光したい場合は必ず予約しましょう!


 我が国から近い異国の地ということで、比較的割安で異国旅行が楽しめるのも重要な点ですね! 今年の冬は、皆様もスパツィターレ地方に行ってみませんか?


( グローアーバン路面軌道株式会社交通事業本部旅行代理店部門の観光パンフレット冬季号より )




   ◇


【 聖女の国で世界最大規模となる応用錬金術工場が着工 】


 聖女の国・アルバーニレーム県で、新たな工場を建設されている。同県の広報部の資料によると『錬金術の最新技術の域を集めた最先端の研究所』も兼ねた複合施設となる見込みだ。同資料において、完成の暁には5000名程度の雇用を創出するとされ、周辺地域の大きな経済効果も見込めるとしている。

 だが一方で、この動きそのものをエミディオ・ロベルト県知事の人気取り政策と批判する声や、工場の規模の大きさに疑問を抱く声もあり、当該地域には強制的に立ち退きを余儀なくされた住民も居り、現地では手放しで喜ばれているわけではないようだ。


( 国民経済新聞 12月2日 )




   ◇


【 旧・恋歌帖れんかちょうギルド――国際恋歌帖協会主催の国際大会開催 】


 世界的にカードゲームとして楽しまれている恋歌帖であるが、元々は世界各国の恋の詩を集めた折り本の詩集であったことはご存知であろうか。

 1つの詩に1つの絵を合わせて週ごとに合計48の詩を収録していたが、いつしか、この詩の部分と絵の部分を切り分けて、詩を詠み対応する絵柄を当てる『かるた遊び』が人気となる。

 今では、一般にはその絵札だけで遊ばれるのが主流ではあるものの、国際恋歌帖協会では旧来の『かるた遊び』の世界標準ルールを策定し、定期的に国際大会を開いている。その歴史は古く、旧体制の恋歌帖ギルド時代から数えると大会は今年で第82回。

 大会は国際情勢や魔王侵攻などを鑑みて開催の可否が決定されるが、基本的には5年に1度開かれるため、初回大会から400年以上続く由緒正しい歴史ある行事である。


 国際恋歌帖協会は恋歌帖ギルド時代から、競技選手の育成を行い、恋歌帖に書かれる絵や詩も定期的に刷新している。

 今年の第82回大会では我が国からの出場者は居ない。なお森の民からの出場者は40年前の第78回大会で活躍した現・ランデベール大公家の先祖であるマンノ・ランデベール氏が最後。


( 東雲毎日民報 12月8日 )




   ◇


【 王都初の民間飛行場が完成 】


 これまで民間航空会社は、クレインエーベネ魔導航空基地を利用していたが、同航空基地は軍民共用施設であるため、魔法使いの演習・訓練利用が優先されていた。民間の航空需要の高まりを受けて、通信郵便省管轄の国営の民間飛行場『ガルフィンガング飛行場』として営業を開始した(建設地の地名からプティドルフ飛行場とも呼ばれる)。

 コンクリート製の滑走路が1か所用意され、立地は運動場や遊泳場を有するプティドルフ運動公園からすぐ近く。

 現在就航中の便は王都ガルフィンガング―グローアーバン州を繋ぐ便で約30000ゼニーで、片道3時間程度で移動可能。

 移動の早さは圧倒的だが、まだまだ一般庶民にとって手の届く価格設定とは言い難い。


( 大衆日報新聞 12月15日 )

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