表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

71/174

商業都市国家群駐在公使不審死事件 / そのほか国内・国外情勢新聞記事

4章終了時点での新聞記事です。

主人公の目線からは見えなかった部分の補足、ならびにそれ以外の国内・世界情勢について軽く触れていきます。


   ◇


【 商業都市国家群代表『内政問題を外交問題に発展させた』 ラムセス公使不審死事件に対する不快感 】


 商業都市国家群に属する様々な地域・都市らの利害を調整する商業都市国家安全保障理事会が16日、臨時会議を開催した。その中で理事会の中心人物であるイゴール・アルバス議長が「森の民で発生した外交官殺人事件の真相を()に求めようとしている」と我が国を批判。13日に発生したラムセス公使の不審死事件について商業都市国家への赴任前に殺害されたことについて、一部報道で国外勢力関与の疑いをかけられたことに対して不満を表明した。


 犯人の国外逃亡阻止のため事件発生の13日より国際鉄道便は運休しているが、事件発生から既に6日経つ現在でも運転再開の目途は立っておらず、周辺国との経済活動の悪化が懸念されていた。その中での商業都市国家群からの公式の声明は、本問題に対してかの国が強い関心を抱いているとともに、我が国に対して不快感を覚えている証左である。


 一方、外務省はラムセス氏の不審死について依然警察捜査と異なる見解の他殺を主張しており、当面混乱が収束する見込みは低いと言わざるを得ない。


( 大衆日報新聞 8月19日 )



   ◇


【 [コラム]死去したラムセス公使とは? ――彼の生涯に迫る 】


 13日にヴァンジェール州、州都ラルゴフィーラのホテルの一室にて死亡の確認されたサンカラット・ラムセス。この不審死事件の真相・真犯人、あるいはこの事件を発端にして発生した内務省と外務省との不和、そのほか外交関係に目を向ける声は多いが、被害者たるラムセス氏を深く知ろうとする者は少ない。物事の本質と向き合う一助となるようにラムセス氏について取材を行い、分かったことをまとめる。


 彼の出生は我が国西部のフィーディエリ州。25年前に私立・アプランツァイト学園大学科法学部を卒業後、国家公務員・外交科筆記試験を合格。外交官候補生時代には商業都市国家群、英雄の国などの勤務を経て、政務局隣国課参事官、大使館参事官、条約局第1課長、文化事業局長などを歴任した。

 文化事業局長時代に商業都市国家群との留学生交換事業を主導。このことから外務省内における商業都市国家を良く知る人物の1人であった。

 そして、その経験を外務省並びに与党『多元民衆党』議員らに請われる形で駐商業都市国家公使へ就任。その赴任中に不審死事件に遭うこととなるのである。


 ここで肝になる点は2点。

 1つは、商業都市国家群を知る人物だということ。駐在公使に当事国の専門家を付けることは適切な人事であると言えよう。だが、それを不都合だと思う勢力が居たのであれば……。

 そして2つ目は、外務省と与党議員が協力して彼を公使に推挙したこと。これは少々経緯が複雑である。与党・多元民衆党の党首であり現宰相のウェンデリン・コンラッド氏は、前政権では民間人指名にて財務大臣として入閣した異色の経歴を持つ人物である。そのため党首でありながら多元民衆党の色に染まっておらず、党利党略よりも『森の民金融恐慌』からの復興を優先していた。当然その手腕については誰しもが認めるものであったが、あまりにも党の理念に反する政策の数々に多元民衆党支持者の一部からは不満も出ていたのだ。

 そうした中で多元民衆党古参議員らは内政政策を棚上げにして外務省と結託し、コンラッド氏の門外漢たる外交分野にて主導権を握ろうと画策。多元民衆党の党略たる『国際平和主義』・『対外内政不干渉主義』を掲げ、商業都市国家群を良く知る人物を公使に据えようとして選ばれたのが故・ラムセス氏であったというわけである。教育文化事業を勤め上げた同氏であれば十二分に『国際平和主義』に適した人物であっただろうことには想像に難くない。


 だが、与党議員と外務省共謀の一手は彼の死亡という形で失敗してしまった。ラムセス氏の有していた経歴、あるいはその後ろ盾が彼の進退に影響を及ぼしたのか、はたまた自殺であったのか。謎は尽きない。


( 大衆日報新聞 8月22日 )



   ◇


【 ウェンデリン・コンラッド改造内閣が発足――コンラッド宰相の影響力強化か? 】


 多元民衆党の党首であり現宰相たるウェンデリン・コンラッド氏。『森の民金融恐慌』における大手銀行特別融資で魔王侵攻手形問題に起因する国債を完済し、繊維業への助成金により不況からいち早く脱出した手腕は誰しもが認めるところ。

 今回宰相はラムセス公使不審死事件において、『自殺』と断定した内務省と『他殺』と声明を出し続けている外務省の対立に際して、双方の関係者を更迭するという『喧嘩両成敗』の体裁を取ったことが今回の内閣の再組閣の要因とされる。それらの外務省・内務省での改造内閣の新たな顔ぶれが以下の通り、括弧内は前職。


 ・外務大臣 アルバン・フィエテ(外務省領事局長)

 ・内務参与官 マインラドル・パート(多元民衆党・衆議院議員)


 外務大臣を新任とした意図としては、公使不審死事件以後、宰相自身の派閥に所属する外務政務次官を利用して外務省とやり取りを行っていたため外務大臣が孤立していたからだと推察される。内務省参与官に新たに着任したパート氏もまたコンラッド宰相の数少ない党内での後援者であり、彼を議会との折衷職である参与官に付けたことは内務省の動向を宰相が把握するためと考えられる。

 また、そのほかの省庁の大臣格の変更は以下の通り。


 ・財務大臣 ウェンデリン・コンラッド(宰相兼任)

 ・魔法大臣 フロドプルト・クロドルフ(魔法省次官)


 前財務大臣が複数の路面列車運営会社との収賄事件に関与していた疑いから解任され、宰相が新たに財務大臣を兼任することとなった。『経済産業連盟』出身の宰相の立場を踏まえれば、財務大臣という自分の得意手とする地盤を手に入れたことは権力基盤の強化に繋がっていると示唆される。


 そして新たに魔法大臣に着任したクロドルフ氏は、魔王侵攻後の魔法使いの軍縮に尽力した『学閥』の主要人物。かつての軍縮の立役者を入閣させるということは、魔法使い・錬金術師といった出費の大きい公的機関に、支出削減の一手を打ちたい宰相の立場が見えてくる。


 全体として今回の再組閣では公使不審死事件の余波で与党・多元民衆党の古参議員らの影響力は後退し、宰相の権限が強化される結果になった。景気も健全化されつつある昨今、コンラッド宰相の手腕に注目が集まる。


( 国民経済新聞 10月3日 )



   ◇


【 聖女の国 アルバーニレーム県知事選にて異彩を見せる候補者 】


 聖女の国のアルバーニレーム県をご存知だろうか。郊外には風光明媚な景色がある一方で中央は国内最大規模の大都市圏、更にはその人口を背景とした多種多様な産業が興る、聖女の国建国時から存在するあらゆる『最先端』を発信する地域である。

 8月末より同地域の県知事選が行われており、投票期日は18日と1週間程余裕があるが、興味深い候補者が存在した。

 その者の名は、エミディオ・ロベルト。彼の選挙公約は『錬金術的操作を行う大工場群の誘致』。それによる景気浮揚効果と失業者対策を狙っている。

 ロベルト氏は自身の政策を「恋歌帖れんかちょうの月詠みの歌で場の札を出し直すように、数字(恋歌帖の月番号と、雇用枠・年収などの経済的指標を比喩)を刷新する」と例えている。


 県知事選への出馬は初であるが、前職は錬金省の次官職に就いており錬金術師の表も裏も知る人物だけに公約の実現期待度も高く、ロベルト氏が優勢と評されている。


 彼の意気込みはその演説からも窺い知ることができる。「特観席だけではなく立見席の方も見えております」――演説場に特観席など存在しない。この言葉の真意は上流階級の者だけの政治にはせず、あらゆる身分の方に届くようにする、そのような意義が込められた一言なのである。


( ガルフィンガング新報 10月11日 )



   ◇


【 リッシュベーク総合不動産威嚇事件 】


 リッシュベーク金融の不動産部門であるリッシュベーク総合不動産にて17日より発生した労働争議は、雇用主側が徹底抗戦を決断したことで既に20名近い解雇者を出しているが収束の見込みがない。そのため労働者側はティートマール・ベルンハルトという在野の吟遊詩人に仲介を依頼する。

 28日、ベルンハルトの部下を名乗る人物が単身武器を持たずにリッシュベーク総合不動産の本社内に押し入って座り込みを行い、警察隊によって拘束されるまでの2時間もの間、リッシュベーク側とのにらみ合いを続けた。

 男は、過激派組織・ガルフィンガング解放戦線による7年前のリベレヒト魔石経済大臣暗殺事件当時に故・リベレヒト氏が身に着けていた血染めの外套を身に纏い、ベルンハルトの部下であること、そしてガルフィンガング解放戦線の名を出してテロ攻撃を示唆する発言を行っていたとみられている。


 ティートマール・ベルンハルトは、ガルフィンガング解放戦線の構成員ではないものの、同組織は彼の思想的影響を受けているとされる。著書である『森の民国家維新論』の中では、王権の世俗化、貴族制並びに貴族院の廃止、大手商会の解体、私有財産制の制限などが述べられ、その手段として「国王によって直接指導された市民による軍事蜂起」を行い憲法を停止することが記載されている(同書は内務省によって発禁処分)。


( 東雲毎日民報 8月30日 )



   ◇


【 財団法人王都住宅営団アパートの住宅抽選のお知らせ 】


 財団法人王都住宅営団(王都住宅)がガルフィンガング特例州のオーティローンに新たに建築した郊外型の集合住宅が先月31日に落成した。

 王都住宅は王都の人口増加に対応するために、魔王侵攻の義捐金を基に設立された半官半民の組織である。現在は、防災に問題のある地域や老朽化した建物などを改修して災害に強い街づくりに貢献している。

 また、ダストシュートの設置や住民の魔石装置の自由契約等、近代的な設備が整えられた都市中間層から上流層まで憧れる居住施設として羨望されている。


 そのため周辺地域の賃貸相場と比較しても相応に高額であり、真に住宅に貧窮している社会的弱者の助けになっていないという批判も。

 そうした中オーティローンの新たなアパートでは、入居者の公募が行われる。まず着工時に立ち退きに同意した者らのうち家賃の支払能力を有すると判断された世帯に優先的に割り当てられる。そして残りの部屋の入居者を募り、その中から世帯収入、家柄、近親者の政治活動などの情報から入居適格者を策定することとなっている。


 これまで王都住宅アパートの住宅抽選では、200世帯の定員に対して4000以上の応募があったプレヴォベルクの王都住宅アパートの例があり、空き部屋の争奪戦は激化する見込みだ。

 応募期限は10月末で、厳正なる審査の下入居者は来年2月に決定する見込みと、王都住宅の担当者は語った。


( 新報アルカエスト 9月2日 )

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ