挿話 ヴェレナ・フリサスフィス素行調査報告書ほか
6/30更新分で2話連続投稿しておりますので、前話の『4-9』から先にご覧ください。
そして今回の話は挿話ということで、閑話と同じく本文事項よりも短めになっております。
6月28日付
【機密指定】ヴェレナ・フリサスフィス素行調査報告書――第1期
魔法教育統括部 総務部
魔法省整備局 保安調査部 宛
ご依頼頂きました表記の件、下記の通りご報告致します。
記
本件被調査人、ヴェレナ・フリサスフィス氏(以下、フリサスフィス氏と称す)の素行について、聞き込み・郵便物検閲・行動追跡その他これに類する方法で調査を行った結果を報告する。
1.過去調査
・同学院学生、オーディリア・クレメンティーとは、アプランツァイト学園初等科で交友が存在した。
→アプランツァイト学園での調査により判明。
→かつて同学園においては同じ派閥に所属しておりフリサスフィス氏はその派閥の指導者であった。
→当時の派閥関係者との交友は現在も続いていると考えられる(3.郵便物検閲も参照のこと)。
2.寄宿舎私室捜査
・【重要】学院に未申請の四六式特殊通信装置を発見。
→魔法省経理局監査課に問い合わせたところ、フリサスフィス氏の父であるアデルバート・フリサスフィスの名で合法的に購入されていることが判明。
→ただし弊校に対して、貴重品申請・資産保護申請の届け出はなされていない。だが、学則上これらの申請義務はないのでフリサスフィス氏が規則を破ってはいない。
→四六式特殊通信装置は盗聴防止の魔法が標準搭載されているので、本件に対しては静観。
3.郵便物検閲
・主な郵便物は、アプランツァイト学園の派閥関係者と両親。基本的にはどちらも近況報告などの一般的な手紙の体裁を取っている。
・ただし、フリサスフィス氏のアプランツァイト学園時代の友人であるルシア・ラグニフラス氏から貴族に関する基礎的な事項を送られた手紙が存在。詳細は【別途資料】にて添付。
4.行動調査
・我が国のエルフワイン・アマルリック王子に入学式で接触を行っていることは多くの生徒に目撃されている。
→このとき、オーディリア・クレメンティーが同伴。
・学院生活上、不審な行動は取っていない。勉学・特別教育ともに大きな問題もなく習得している。
結果、依頼主の懸念であった『学閥に対して何らかの悪感情』を有しているかについては、その可能性は現段階では確認できなかった。引き続き素行について調査は行うものの、発覚の危険性を考慮すると今までよりも調査は中止、あるいは慎重を期すべきものと考えられる。
ガルフィンガング魔法青少年学院学院長 ベルトラム・バーチャード 印
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【機密指定】[別途資料] ルシア・ラグニフラスからヴェレナ・フリサスフィス宛ての書簡概要
本資料はフリサスフィス氏がアプランツァイト学園初等科時代の同級生から受け取った貴族に関する資料の概要である。
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①我が国の貴族構成に関する事項
最上位に王家が存在し、その下に1名の大公、10名の公爵、20名の侯爵、約200名程度の伯爵、300名程度の子爵、500名程度の男爵と続く旨。
そして王家以外は当主のみしか貴族位を保有しておらず、法学上では貴族当主以外は平民として扱われる旨が記載。
②貴族の特権的地位保障に関する事項
刑罰に対する免責措置・政治参加権(政治参加の義務と重複)・軍事指揮権の3特権について記載。
③貴族院の議員資格に関する事項
貴族院に登院資格を有する議員の条件について記載。詳細は以下の通り(原文抜粋)。
・公爵、侯爵、伯爵の世襲爵位を有する者(終身・義務)
・王家ならびに内閣から選任された子爵、男爵の世襲爵位を有する者(任期7年更新・任意)
・行政爵位(註釈1)の行政伯爵位を有する有識者、知識人(任命制終身・任意)
・女神教教会の管区大司教(註釈2)(任命制終身・任意)
・魔法大公、錬金大公(註釈3)(終身・任意)
※註釈1:行政爵位は議会の運営上必要だと思われる人材に対して一代限りの爵位を叙爵することにより貴族院への登院資格である『伯爵』位以上を便宜的に与える制度を指す。
註釈2:管区大司教の貴族院登院資格は、法的には行政伯爵位の付与によって行われる。
註釈3:魔法大公、錬金大公、その他の如何なる貴族爵位を有する者も、現役の魔法使い、錬金術師である場合は慣例的に登院しない決まりとなっている。
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フリサスフィス氏が貴族に関する情報を欲した詳細な経緯は不明だが、弊校ではクラスメイトにエルフワイン・アマルリック王子が存在することが彼女の貴族への興味関心を引き上げたものと推測している。実際に彼女の以前の母校たるアプランツァイト学園では貴族は通っていない。
また本書簡の内容の多くは公的刊行物の抄録で構成されており、不足はあるものの記載事項については事実に即している。
以上
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7月4日
【機密指定】 ヴェレナ・フリサスフィスへの素行調査に関する通達
ガルフィンガング魔法青少年学院学院長 ベルトラム・バーチャード殿
ヴェレナ・フリサスフィス(以下、フリサスフィス氏と称す)への素行調査について以下の通りに続行することを通達する。
[変更]
・私室捜査等の私事権侵害に抵触する恐れのある調査は直ちに中止すること。
・郵便物検閲についても一般学生と同じく、爆破物・危険物調査に留めること。
[新規通達]
・エルフワイン・アマルリック王子に対してフリサスフィス氏がどのような行動を取っているか重点的に調査を行うこと。
・魔法通信装置について関与しないこと。ただし盗難や破壊等の恐れがある場合、未然防止のために第三者に対して実力行使に出て構わない。また該当の事件が発生した場合については速やかに犯人捕縛に尽力すること。
・フリサスフィス氏を含む女子寄宿舎の生徒が提出した申請書は学院内で許可を出して構わないが、学院内や魔法教育統括部内で完結せずに必ず魔法省総務局文書課まで送ること。
本件は彼女を危険分子として捉えて調査しているのではなく、あくまでも保護対象として行っているため、相手を刺激するような手法は絶対に避けること。その点を誤認しないように。
以上
魔法省次官 フロドプルト・クロドルフ
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7月4日
【部外秘】 リベオール総合商会動向調査依頼
魔法省整備局 保安調査部 宛
リベオール総合商会の資金・人員・情報の動きについて以下の事項への調査を依頼する。
・リベオール総合商会と現宰相ウェンデリン・コンラッド氏との関係性の有無、もし関係している場合は商会側の実務者
・リベオール総合商会における新規事業、特に製紙事業について
・リベオール総合商会内部での決定事項と経済産業連盟での同意事項の差異について
・リベオール総合商会に出入りする郵便配達員の頻度と時間、また同商会魔力通信装置の通信量の時系列推移(但し、通信内容について傍受する必要は無い)
以上
魔法省次官 フロドプルト・クロドルフ




