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「それで、奥方様。検査費用のお支払いについて民間保険を利用とのことですが、『保険利用支払猶予制度』のご使用はどうなされますか」


「いえ、必要ないわ。診断書と領収書さえいただければ大丈夫よ」


「分かりました。それでは受付の方で診断書もお渡しするのでそちらでお支払いをお願いいたします」


 『民間保険』は、全額医療費を負担して後から保険金分を保険会社から返還してもらう先払い制度らしい。ただ先払いなので全額支払えないって人のために保険金部分のみを国が一時的に負担して保険会社から国へお金を補填する、というのがお医者さんが言っていた制度のようだ。

 壁の張り紙に書いてあった。


 ということはだ、保険金無適用の医療費を全額一括で支払えるだけのお金をお母さんは持ってきているということだ。やっぱりお金持ちなんだねこの家庭。



 診察室の扉を案内の人が開けてくれる。別に受付までそんなに距離はないのだから案内されなくても行けると思うが、魔法使い家族にはそういう待遇なのだろう。良く分からないね。


「それでは、本日の診察料と診断書費用を含めまして、7740ゼニーとなります」


 受付の人がそう言うと、お母さんが財布からお金を取り出す。通貨単位がゼニーって響きが可愛いな。

 お母さんの手元を覗くと、紫色っぽい紙幣の知らないおじさんの肖像画とともにその価値が印字されていた。ふむ、これが1000ゼニー札、になるか、……やっぱ名前可愛い。

 紙の質は見た感じあまり良さそうには見えないが偶然使い込まれた紙幣だった可能性もあるためなんとも言えない。よく見たら小さな文字で『本券引換に金・銀1000ゼニー相当と交換可能』と書いてある。お金と言うより引換券みたいだこれ。


 お母さんがその1000ゼニー札を8枚出したら、お釣りとして260ゼニーかえってきました、まあそうだよね。


 その260ゼニーを見たら緑色の同種の紙幣が3枚と、赤っぽい紙幣が1枚見えた。

 あれ? 計算合わなくない?


 ああ、赤っぽいのが200ゼニーで、緑のやつが20ゼニー紙幣か!

 ごめんなさい計算する前に印字されている数字見ちゃいました、紙幣としての使いやすさ考慮しなければ答え無数にあるしね。


 ただ、このゼニーとかいう通貨がどれほどの価値があるのか、いまいち分からない。うーん困ったな。


 そうだ。


「お母さん、……おなか空いた」


「そうねえ、丁度お昼どきですし、何か食べてから帰りましょうか」


 よし、お母さんが食いついた、やったね。そしたら魔法病院内にレストランが併設されている、と受付の人が教えてくれた。やったご飯だご飯だ。



 これはあくまで貨幣価値調査の一環なのであって、決して本当にお腹が空いていたというわけではないのだ、断じて。





 受付のすぐ近くにあった階段から2階へと上がり、病棟とは逆方向に曲がった突き当りにそのレストランはあった。


 院内の壁や廊下は白色を基調とした清潔感のある雰囲気であったが、レストランの入り口を開けると、そこは木目調のどこかログハウスのような印象を醸し出す開けた空間が広がっていた。

 ログハウスなんて行ったことないけど。


 太陽の光を最大限に取り入れるために細い木枠でいくつかに仕切られた窓は外の景観を遮らないように、ところどころ淡いオレンジや黄色のような色のついたガラスを使っていて見る人を楽しませる工夫がなされている。

 窓から外を見ると、病院の中庭が見渡せるようになっており眼下に広がる青々とした芝生とまぶしいくらいの太陽の陽ざしが、時間を忘れさせるかのように緩やかな時間を演出している。


 そして店内の灯りも暖かな暖炉の火を思い浮かべるような淡くそっと添えるようなどこか包み込むようなイメージを魅せている。



 これは、思った以上にちゃんとしたレストランじゃないか、と内心ビビりながら席に案内される。辺りをふと見渡してみるとランチタイムではあるが、そこまで多くの人で賑わっているわけではない。見たところ白衣の人もちらほらいるからほとんど病院関係者だろう。


 ランチメニューなどは特になく、テーブルに備え付けられたメニューを開いてみる。

 ふむ、思ったより種類があるね。鶏料理、牛・豚料理、魚料理……うん、ジャンル分けは分かりやすくていい。ただね、肝心のメニューが分からないのだ。

 『牛サイコロ肉とロニョンのパイ』とか『パンフィッシュのムニエル』、『勇者の国風の農夫のスープ』、『コイのフライ剣士の国仕立て』……味付けが分からないんだよね、どれも。


 うーん、困ったなこれは。

 こういうときは必殺メニューの一番上を頼む戦法を使うしかないか。お肉ガッツリ食べてみたいから、牛・豚のとこの一番上の……『狩人の仔牛コートレット』、よし、これにしよう。


 お母さんも決まったようなので、ウエイターさんが来る。読心術か何かか? 反応速度ヤバいな。って私がキョロキョロし出したから察しただけかこれ。


「では、『牛サイコロ肉とロニョンのパイ』と『狩人の仔牛コートレット』をお願い」


「かしこまりました。『コートレット』の方は、付け合わせに『白パン』・『一等ライ麦パン』・『エン麦のポリッジ』・『ベイクトビーンズ』、そして『ライス』の内からひとつお選び頂けますがどれになさいますか」


 ウエイターさんの思わぬ発言にテンパる私、なんだこの付け合せの種類は。知らないものがいっぱい出てきたぞ。見かねたウエイターは私とお母さんの前に置かれたメニューをめくり、付け合わせの写真が載っている欄を見せる。


 写真があるなら、メインメニューの写真も載せておいて欲しかったな。


「あら? 『ライス』ははじめて見るわね。これはどういうものなのかしら?」


「はい、こちらは魔法省の農場で現在試験的につくられている新たな穀物になります。もっとも我が国の南の方では古くから野菜として食べられていた地域もあったようですが。まだ、市場にはそこまで出回っておりませんので、あまり見かける機会はないかと思います。

 当レストランではその『ライス』にタマネギとガーリックを入れて炒めて乾燥させたパセリを添えたものをお出ししております」


 何気にお母さんが結構重要そうな情報を聞いている。

 ガーリックライスだねこれ、おいしそう。


「『ライス』でお願いします」


 まあ即答するよね、そんな説明されたら。まだそんなに普及していないってことはご飯食べられる機会は限られているというわけだ。食べられるうちに食べておこうという意識が働いてしまう。


「ああ、そうだわ。『コートレット』の方はこの子が食べるから、量を減らしていただけるかしら」


「はい、かしこまりました。では『牛サイコロ肉とロニョンのパイ』と、『狩人の仔牛コートレット』と付け合わせに『ライス』ですね、こちらは少な目とのことでよろしいでしょうか」


「ええ、お願い」



 ……自分の身体のサイズを忘れて、大人1人前分に何も違和感を抱いていなかった。お母さんが指摘しなければ食べきれない量がくるところだった、あぶねえ。



「それと、ドリンクはいかがなさいますか」


「私は『ジャスミンティー』をいただきましょうか」


 えっ、飲み物なにそれ聞いてない、うわあなんだなんだどうすればいいんだ。明らかに狼狽えている私にお母さんが苦笑して、飲み物のページを開いて見せる。

 うわあ、ハーブティーやらフレーバーティーやらの種類めっちゃ多いし、紅茶もコーヒーも分かんねえ。まさか女子力低いツケがここでくるとは。


「お、お母さんと、同じもので……」


 そう言った私に罪はないだろう、もう許して。


「当レストランのジャスミンティーは白茶・青茶・緑茶の3種類からお選びいただけますが、いかがなさいますか?」


 もうウエイター分かってやってるだろそれ。私はもう答えないからな。


「えぇ、それでは白茶をお願い。この子の分もね」


 ……母は強し、とはこのことか。




 あっ、すっかり忘れていたが本来の目的は価格調査だった。

 うん、いつの間にか知らない食べ物ばっかり注文していたから、もう分かんないけどとりあえず見ておこう。


 私の注文した『狩人の仔牛コートレット』は付け合わせ込みで400ゼニーだった。お母さんの頼んだ『牛サイコロ肉とロニョンのパイ』は410ゼニー、あんまり変わらないね。

 『ジャスミンティー』の『白茶』は195ゼニーでした。ちなみに『青茶』だと190ゼニーで『緑茶』だと120ゼニーらしい。うん、分からん! けど期せずしてこのお店で最高品質のものを頼んでしまったようだね。お母さんの金銭感覚が心配だ。



 ただ、他のメニューを見てみると、『純コーヒー』ってところに書いてあるのが結構お高い。多くは300ゼニーとか書いてある。その一方で、『チコリーコーヒー』と書かれているのは120ゼニーだ。この差はなんだろう。

 というか、コーヒーだけで食事食べられそうなくらい高いな。


 他に着目するところは水にもいろいろ種類があってこれも有料だ。まあこれは海外でもあるらしいし、日本でも水有料のお店はあったりするしね。


 完全に見落としていたが、『若鶏の唐揚げ』なんてのもあった。

 うわめっちゃ馴染みあるやつあったじゃん、ちくしょう。あれでも、これ500ゼニーもする……。鶏の唐揚げが牛肉料理よりも高いってそんなことある?


 コーヒーとか鶏唐揚げの異常な高さを見ると、どうもゼニーが日本円でいくらか、という単純な換算はできないように思える。

 とはいえ、たったひとつのレストランで判断するのは少々心もとない。だが、おそらくこの世界は日本と物価が全然違うのはほぼ間違いないだろう。


 ということはこの世界に馴染むにはこうした物価も抑えなければいけないのか。やることが増えた、つらい。





 注文して5分程度経っただろうか、まずは『ジャスミンティー』がテーブルに運ばれてきた。うわ、ガラスのティーセットだ。

 二対のティーセットがテーブルの上に置かれ、ウエイターさんが手慣れた感じで透明なティーポットからカップにお茶を注ぐ。すると春の訪れのような独特の芳香があたり一面へ広がる。

 ジャスミンティーとか、元の世界じゃペットボトルのやつしか飲んだことないや。ここまで強い香りを感じたのははじめてかもしれない。


 そしてジャスミンの花とかは入ってないんだねこれ、ここまで香りが強いからてっきりそのまま入ってると勘違いしちゃった。お茶ってすごい。

 ただ結構独特な香りでもある。

 まあ、それは現代でも一緒か。飲める人と飲めない人の差はそれなりに激しいだろう。


 さあ、どっからどう手を付けようか、と考えたときお母さんが飲み出したのでそれを凝視する。

 ああ、蒸らしたりはしなくて大丈夫なのね、作法が分からん。


 うん、まあ普通に飲めば良さそうだ。あーでも入れたてだから熱いかもしれないな、気を付けて飲まなきゃ。そうして私は右手でガラスのティーカップを持ち上げて口へと運ぶ。


 飲む前から香りは広がっていたが、口に含んだ瞬間その香りが身体を巡るように一気に通り抜けた。爽やかな優しい口当たりの中に、お茶本来の甘みとほんの少しの苦みを感じる。両者が複雑に絡み合い、でも見事に調和することで絶妙な味わいを醸し出す。


 ……おいしいね、これ。


 後味はそれほど引かずに、すっきりとでも飲み終わってもまるで香りがそこに残っているかのような、癖が無くそれでいて心安らかに眠るような安心感を感じ、心地よさをふと思わずにはいられない、そんな味である。


 明らかに元の世界に居た時よりも、良いものを飲んでるなこれ。勿論、探せばあったんだろうけどそれを怠って勿体ないことをしてしまったかもなあ、と郷愁の念に包まれる。


 ただ、ひとつだけ。右手に持ったガラスのティーカップは怖い! そりゃあ普通のカップも落とせば割れるけどさ。やっぱ透明だと儚さが目立つというか、こんな子供に持たせていいカップじゃないよ本当。こういうもの、しかもお店のものを何食わぬ顔で子供に持たせられるところからもお金持ちの風格を感じるぞ、お母さんよ。


 ふと、お母さんの姿を目に入れると、何かものすごい嬉しそうな顔をしていた。なんでだろ?

 あっ、そうかジャスミンティーを私が気に入ったのが丸わかりだもんね、さっきの反応。

 人によって好き嫌いの分かれるジャスミンティーを自分の子供が飲んで喜んでいるとなれば、嬉しいものなんだろうね。マイノリティが家族や友達とかに受け入れられたとなれば嬉しくなっちゃうのは分かるぞ、うんうん。





「お待たせいたしました。『狩人の仔牛コートレット』と『牛サイコロ肉とロニョンのパイ』でございます」


 お茶と戯れていたらいつの間にかメインもきた。意識すると一気に空腹を感じる。それにしても同時に持ってくるとはポイント高いね。


 私達の目の前に皿が並べられると熱さが伝わってくるように湯気を感じる。私の前には大皿とそれより一回り小さな皿のふたつが並んでいる。

 まずはメインの大皿に目を通してみると、目を引くのはきのこの入った白いソースのかけられた見るからにカラッと揚がっている揚げ物。

 そういえば料理名に仔牛と入っていたから、牛カツみたいなものなのだろうか。

 そしてその周りには彩るようにニンジンのグラッセに、ふかしたポテトが小さく三日月状に切られている。その横には小さなレモンのような果実が添えられていた。


 ライスの方も円筒状に綺麗に盛りつけられ、上からは乾燥パセリの粉末が色を与えている。こちらは説明された通りだね。

 しかし、ニンニクの焦がした強烈な食欲を誘う香りが私の呼吸を満たす。なるほどね、これは異世界の認識を改める必要がありそうだ。


 カツ、のようなものにナイフを通すと小気味よい音を立てながら、大きく力を入れたわけでもないのに切り分けることができる。肉が柔らかい証拠である。

 それに白いきのこのソースを絡めて口に運ぶ。


 なるほど、これは見立て通り牛カツに近い。でも揚げているはずなのに油がくどくなくカツそのものはあっさりと淡泊な味わいだ。しかし衣に閉じ込められた肉の旨味が口に入ると爆発したように主張をする。

 そして次に感じるのはこの白いソースだ。非常に濃厚なクリームソースでこれがまた淡泊な肉の味と合うのだ。もちろんクリームソース自体は食べたことはある。

 だが、これはまた別格だ。きのこに合うのはある種当然であろう、だがこの、牛肉に合わせるために意図的に濃厚かつ深みを増したソースは全てが計算されたかのように両者を引き立てるのだ。


 そしてスプーンに持ち替え、ガーリックライスも口に運ぶ。

 なるほど、これはタイ米に近い感じで粘り気が少なくあっさりとしている。正直ご飯だけで出されては少し物足りなさを感じるかもしれないほどにシンプルな味わいのお米なのだろう。

 だが、そこに暴力的なまでに冒涜的なニンニクが合わせられることで、まるで異なった趣を見せる。さらに追撃するかのようにタマネギの甘味も重なり、異国情緒漂うハーモニーを奏でるのだ。

 ガーリックライスにするのであれば粘り気の弱いこのお米がむしろ大きな強みとして真価を発揮するのだ。


 そして何ともずるいことだが、このガーリックの風味がお肉とまた合うのだ。そしてクリームソースの濃厚な味わいにも負けず、それでいてそこではむしろあっさりと感じるような、そうした側面も覗かせる。


「随分と美味しそうに食べるわねえ」


 お母さんに言われてはじめて自分を取り戻す。

 ……急に恥ずかしくなってきた。美味しいもの食べたらテンション上がってしまうのはしょうがないでしょ。



 ふと、お母さんの方の料理も目に入る。『牛サイコロ肉とロニョンのパイ』だったか。

 名前の通りにパイ生地に包まれている。というか外から見たらパイ生地と飾り付けの葉物野菜の姿しか見えない。中にお肉と『ロニョン』とやらが入っているのか。


 そしてお母さんがナイフでパイを切り開いた断面をひょこんと覗く。……なるほど確かにそこには一口大に切られた牛肉と同じ程のサイズに整えられた野菜が、よく煮込まれたビーフシチューのように煮込まれている。また、サイコロ状の牛肉とはまた異なった種類のお肉? も入っている、あれが『ロニョン』かな。


「食べてみたい?」


 全てを見透かしているかのようなタイミングでお母さんが声をかけてくる。

 まあ、あれだけまじまじと見ていればバレるか。気恥ずかしさはあるものの、ここは大人しく無言で頷く。


 中身がソース状なので右手に持ったスプーンに乗せてもらい、そのまま口に運ぶ。あっ、これデミグラスソースだ。ソースと牛肉との相性は抜群だ、おいしい。そして単品ではやや濃すぎるといった具材の味付けを、包んでいるパイ生地と一緒に食べることによってまた異なった趣を魅せる。

 軽快な音と食感とともに、ほのかに甘さを感じるシンプルなパイにソースが染み込んでいる様を楽しむことができるのだ。


 さて、『ロニョン』にも手を出してみる。これもデミグラスソースがかかっており期待できそうだ。一口食べてみると、独特の風味が口の中に広がる。なんだろうこれ、似ているものを挙げるとすれば、レバーかな。でも食感が違うような……。それよりもしっかり弾力があるおかげで、レバーで物によっては感じるもさっとした感じは無い。内臓系のお肉ではあるだろうが部位までは分からない。


「お母さん、この『ロニョン』って何?」


「『ロニョン』はホルモンの一種よ。最新の流行りで、これからもっといろんな場所で見かけるようになると思うわ」


 分からなかったので聞いたみたが、お母さんも『ロニョン』がどこの部位なのかは知らないようだ。というか、この世界ではホルモンが流行っているのか。まあ確かに健康には良さそうだけど、臓物ブームとは、なんかファンタジー世界ぶち壊しのような……。


「ホルモンは健康に良いから、新しく発売された化粧品にも入っているらしいわよ」



 えっ。

 あんまり化粧品の中身の原材料まで意識したことなかったなあ、聞いてしまうと若干抵抗感生まれるじゃないか。






 帰りは路面列車とバスを乗り継いでお家に帰りました。路面列車は速度もそんなに出ないので車よりも全然揺れずに快適でした。

 バスはうん、やっぱり揺れすごい。


 路面列車の車体は色で塗られており、その色で料金が変わるようで、私達が乗った『青色』の列車は100ゼニーだった。ちなみに100ゼニー紙幣は淡い黄色、地味に種類多いな紙幣。


 路面列車後ろの車両が貨物列車になっており、停留場で荷物の積み下ろしも行っていた。不思議な感覚だ。

 またバスターミナルのある駅は路面列車に乗る簡易的な停留場ではなく、駅舎のある鉄道駅だったのだけれども、そこには貨物列車の停車場もありその周囲は市場になっていた。トラックが走ってないから鉄道と路面列車の貨物が物流の中心となっているようである。駅の名前は『ヘルバウィリダー駅』。多分、私たちの住む街の名前が『ヘルバウィリダー』だ。

 ただ、市場の方は危ないから近づかないように、とお母さんから言われた。色々気にはなるが、人ごみで迷子になるから危ないのか、はたまた治安的に危ないのか分からなかったので自重しよう。


 面白いのは貨物列車はコンテナ輸送で、私が偶然見たときの貨物には魔石がぎっちりと詰まっていた。

 コンテナに隙間なく詰めていくから魔石は立方体カットなのね、納得。


 そして、空荷で帰るわけではなく、使用済みの魔石を回収して載せていた。

 どうやら魔石は再利用ができるようで国が回収を積極的に行っているようだ。使い終わった魔石を鉄道駅まで持って来れば、新品の魔石は値引いて貰えるみたいだね。


 バスもまた魔石動力だった。バス網はかなり発達しているようでかなり自宅から近いところにバス停があった。乗ったときは席にも座れて混雑していなかったが、まあ真昼間だしねえ、通勤・通学ラッシュに巻き込まれないとそんなものかもしれない。



 結局路面列車とバスとで所要時間は2時間と少し。車よりも多少時間はかかったが、乗用車を路上でほぼ見かけない以上こちらの方がより一般的な移動手段なのだろう。ただ、バスと路面列車では遠くには行けないみたいなので、そういった場合は駅舎のある鉄道駅まで行き、そちらで乗り換えることで森の民の勢力圏全体にいけるみたい。鉄道はそのまま現代の電車に近いものと捉えても良さそう。乗ってみないと分からないけどね。

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[気になる点] >>よく見たら小さな文字で『本券引換に金・銀1000ゼニー相当と交換可能』と書いてある。 金銀複本位制を採っているのか。 またえらく不安定な通貨制度を採用している件。 さっさと金本…
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