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新聞記事から見た現在情勢

現時点の主人公が直接的に関与できないような情勢周りのお話です。

閑話は少し短めになっております。


   ◇


【 エルフワイン王太子さま、6歳に 】


 我が国の王家、アマルリック家の長男でかつ王太子であらせられるエルフワインさまは、王都・ガルフィンガングにあるミークアーバン大聖堂にて執り行われた『青苧あおその儀』に参加なされた。


 わずか6歳にして既に王家の貫録を兼ね備えているエルフワインさま。青苧の儀の前には、参加者に声をかけ激励を行い緊張を解すといった和やかな一面も。しかし儀式においては一転、同年代の参加者を率いるリーダーシップに溢れたお姿も見せ礼拝に来ていた参列者を魅了するように堂々たる口上で祈りの言葉を唱えるなど、これからの王太子としての成長を期待できるような素晴らしい振る舞いをなされていたという。


 来年からは、小学校へと通うこととなるエルフワインさま。王族関係者は記者の質問に対して、「(王太子が)どこの小学校に通うかは未だ決定していないが、本人やご一家の意向に沿って決めている」とのこと。


 これまでに王族の方々が通われた小学校は、王立のガルフィンガング中央小学校が最多となるが、エルフワインさまについてはどうなされるかは未定。ただし、その一方でご自身が将来的に魔法使い職に就きたいと度々発言されていることから、小学校卒業後は国立魔法青少年学院に進学するのでは、とみられている。


( ガルフィンガング新報 6月13日 )



   ◇


【[社説] 聖女教と女性運動:何故聖女教は女性の社会進出を推し進めるのか? 】


 聖歌隊のアーティスト事業や、女性司教登用など古くから女性の社会進出を支えてきた聖女教。歴代の教皇を見てみても、女性教皇が即位した例は数多い。

 しかしそうした教会での女性登用率は高いものの、実社会と結びついているとは言い難い。


 森の民社会調査機構は、約1000社の様々な企業・団体に所属する女性の意識調査を行い4436件の回答を得た。勤続年数10年以上の女性正社員への「自身が入社したときと比較して、新入社員の女性の割合は増えたか」という質問に対しては、70%以上が「はい」と答え、以前と比較すると女性登用の敷居は低くなっている傾向がみられる。


 一方で問題となっているのは女性の役職登用だ。回答者のおよそ半数は中堅社員であったが、役職のない一般社員が68%を占め、主任・係長クラスの管理職に相当する女性の割合はわずか8%程度であった。これは男性主体の働き方が一般に浸透しているためであろう。


 このように男性本位の現状がある背景には、かつてアマルリック家を王家として我が国が統一される以前は氏族や部族によってばらばらに支配され部族同士の抗争が絶えなかったことが経緯がある。

 そうした抗争社会においては腕っぷし(・・・・)の強い男性が指導者としてイニシアチブを取るのが、一部の例外を除くと一般的であった。我が国はその後緩やかに統一したため、漠然とそうした部族社会時代の男性主体意識が残っている地域も存在する。


 また、それ以外の要因として福祉制度の充実がかえって女性の職場での在り方に悪影響を与えている可能性も示唆される。時短勤務や休暇の所得、あるいは産休や育休など充実した制度がある反面、本人がやる気があっても子育て中には会社がその女性社員に配慮することで多くの仕事を与えてられていなかったりするケースもある。

 先の意識調査でも「与えられる仕事が少なすぎる」「こちら側から仕事を求めても育児中であることを理由に会社が時短勤務を強制する」などといった意見もあった。


 こうした女性の声に対して、聖女教はどのように動いているか。聖女教は確かに女性活動の最前線に立ち、男性本位の労働環境については痛烈に批判している。特に、魔法使いや錬金術師の爵位職には制度上男性しか就業できない点について枢密院で議題に挙げられていたのは記憶に新しい。


 しかし女性の社会進出を推進する一方で、「多く子供を産む健康的な女性」を美徳とする女性観も聖女教の中には存在し、「結婚して子供を産むのは当たり前」という社会風土を形成しているのもまた聖女教なのである。そのため、子育てしたいのに働けない女性の声には敏感だが、結婚も出産もせずに働く女性の在り方に対しての肯定的な主張を筆者は見かけたことがない。

 これは聖女教の根本たる『豊穣』教義と密接に結びついているため、彼らの主張は容易に翻すことが出来ないのも理解できるが、それでも少々ちぐはぐという印象を拭えない。


 聖女教の推し進めてきた女性の働きやすい職場づくり、あるいは女性でも気軽に働ける制度面の充実、これらは一定の成功を収めており参考にする面も多々あるが、今後より女性の多種多様な働き方が重要になっていく中で、聖女教そのものに対して求められている役割は今までとは異なっていくことも考えねばならない。


( 大衆日報新聞 5月29日 社説 )



   ◇


【 新魔力通信技術で森の民・聖女の国間が15時間弱に 賢者の国研究チーム 】


 賢者の国に存在する先進魔法技術研究センターは新たな国際間魔力通信技術を開発した。新技術は発信・受信にかかる時間を大幅短縮する。この技術を利用すれば森の民王都・ガルフィンガングと聖女の国首都・ディオキドゥー間の通信速度が最短15時間未満まで短縮される。


 これにより魔力通信は飛行機を用いた国際郵便エア・メールに更なる差を付け、長距離情報通信業界でのシェアを更に伸ばす見込みだ。


 同センターの開発担当者は「国際情報化社会の到来と言われている昨今において、魔力通信の発展は情報のやり取りをより円滑にするとともにあらゆる技術・産業の更なる国際化に寄与することになるだろう」と話している。


( 国民経済新聞 7月2日 )



   ◇


【 また? 相次ぐテロ――リベオール商会長、暗殺される 】


 10日午後6時ごろ、リベオール総合商会のオスマール・フォーク商会長が退勤のために同商会館より出てきたところを黒コートの男に発砲され死亡した。


 男は犯行後リベオール総合商会の私兵によって捕縛され暴行を受けた後に王都警務庁に引き渡された。

 犯行に用いられたのは旧式の魔石銃で、過激派組織の『ガルフィンガング解放戦線』より融通を受けたとのこと。『ガルフィンガング解放戦線』は今年2月のリベレヒト魔石経済大臣の暗殺にも関与したテロ集団であり『革新断行』・『絶対王政』・『奸臣誅殺』をスローガンに、かつての部族的地方集権政治や現在の議会主導政治を否定し、王家を絶対的な国家の守護者としてあらゆる派閥や階級・身分に左右されない超然的な国家体制の樹立を主張している。


 こうした『ガルフィンガング解放戦線』の活動は、都市部貧困層や農村出身者を中心に新たな時代の萌芽を予感させる革新的な存在であると認知されているケースもあり、そうした一部の民意の後押しに乗る形でテロ行為を行っている。


 今回のリベオール商会長暗殺、並びに半年前のリベレヒト魔石経済大臣暗殺の共通点として、かつて錬金術師の間で制式採用されていた魔石銃が使用されていることが挙げられ、今回のテロも前回同様、若手錬金術師の関与が疑われる。


 また狙われたリベオール商会は我が国の商業界における重鎮であり、殺されたオスマール・フォーク商会長は労働組合法に反対したこと、並びに『商会談合』と悪名高い大商会を中心とした企業連合である『経済産業連盟』の創設者であることが、テロ攻撃に遭遇した直接的な犯行理由だと考えられている。


( 大衆日報新聞 8月11日 )



   ◇


【 勇者の国で巻き起こるサッカー旋風! 勇者の剣を打ち砕くチームはいずこ……? 】


 7月5日より勇者の国で開催されている『第5回国際運動競技大会』。本日7月23日はサッカー競技の決勝トーナメント、準々決勝4試合が行われる。


 サッカー競技などの団体競技は基本的に、各国に存在するクラブチームのうち、国内でのリーグ戦やカップ戦などの戦績を加味した上位チームのみが国際運動競技大会への参加資格を得る。


 今回異例だったのは開催国である勇者の国のクラブチームが準々決勝に残った8チームの内4チームを占めるという異常事態だ。また惜しくも準々決勝に届かず敗れたチームの中には決勝トーナメント1回戦で同じ勇者の国のクラブチーム同士のドリームマッチも行われており、今年は勇者の国一強体制といってもおかしくない。

 また、今日行われる第四試合でも勇者の国クラブ同士の対戦カードが存在する。


 対戦表は下記の通り。


 ▽ 第5回国際運動競技大会 サッカー競技 決勝トーナメント 準々決勝


第一試合 ケルクフリントFC(勇者の国) 対 FCヴァッフェナーズ(賢者の国)

第二試合 ウルディン・エレア(重戦士の国) 対 テクノパルセン(勇者の国)

第三試合 ミューロード・ジェリス(英雄の国) 対 SCアエタース(修道者の国)

第四試合 フランシュダオンFC(勇者の国) 対 オング・ヴェルク(勇者の国)


( 世界運動旬報 7月23日 )



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