54-6司
「闇ちゃん!肩叩いて!」
「はい。」
「闇ちゃん!お腹すいた!」
「何か作ってきます。リクエストはありますか?」
「シチュー!」
「わかりました。」
「ねぇ…スクナビコナ…」
「何?」
「闇の精霊って皆あんなに優しい子だったりするの?」
「いや、皆自分の闇の力に当てられて心が黒く淀んでいくのが大半だよ?」
「じゃああれは何?」
「闇ちゃん。」
「いや…そうじゃなくて…闇ちゃん光の鎖に心まで浸食されちゃったとか?」
「ありえるかも。闇ちゃん見た目がちょっとドジっ子だし。」
「優秀だけどなんか見た目がドジっ子だよね。」
「二人共さっきから酷くないですか?」
「あ、シチューだ!」
「はい。冷めない内に食べてくださいね。水は要りますか?」
「牛乳がいい!」
「わかりました。」
「やっぱり闇ちゃんはドジっ子だなー、こういう場合は俺にも聞くんだよ?」
「司、シチューと牛乳いりますか?」
「カフェオレだけで。」
「…わかりました。」
「闇ちゃーん!」
「なんですか?」
「営業スマイルして!」
「何ですかそれ?」
「笑ってって事!サービス精神は大事なんだよ?」
「…こうですか?」
「表情全然変わってないね。」
「すみません…」
「じゃあ今度は怒ってよ!」
「何故ですか?」
「怒った闇ちゃんを見てみたくなったんだ。」
「…こうですか?」
「やっぱり全然変わってない。闇ちゃん固まった顔と呆れ顔はあんなに分かり易いのに…」
「さっきからバカにしてませんか?」
「そうだよ?」
「…」
「あ、そこは怒るんじゃなくて呆れるんだね。」
「もういいです…それよりも、僕は外のベランダで星を眺めています。」
「偶には朝ベランダに出たら?ずっと室内にいると闇ちゃんの翼にキノコが生えちゃうかもしれないし。」
「生えません。それに偽物の太陽でも、僕には強すぎるので…」
「…偽物?」
「…何でもないです。闇属性だからというのもありますが、僕は日の光が苦手なだけなので。」
「そうだったの?」
「光属性が嫌いという訳ではないのですが…太陽や日の光は好きになれないんです。きっと日の光の下では僕という存在は受け入れてもらえないと思うから。」
「…俺は闇ちゃんの事が大好きだよ。」
「え?」
「スクナビコナだって闇ちゃんの事が大好きだろ?」
「うん!闇ちゃん優しくて大好き!」
「それに受け入れてくれるとか、受け入れてくれないとかそんなの大事じゃないよ!闇ちゃんが自分をどう思ってるかが一番大事なんじゃないか?」
「え…」
「そして例え闇ちゃんが自分を受け入れられないとしても、俺達が闇ちゃんの事が大好きだから、闇ちゃんが誰にも受け入れて貰えないなんて絶対にないよ。」
「……ありがとう。」
「今日はもう寝たら?布団の用意はしてあげるからさ、何もする事がない時こそ早寝早起きを心掛けないと。」
「でも…」
「いいから、寝て寝て。」
「わかりました…ありがとうございます。」
無理矢理闇ちゃんを寝かせてスクナビコナと二人になった。
「もう闇ちゃんを攫って四年になるんだよな…」
「無理に闇ちゃんをずっと隠れ家に閉じ込めなくてもいいんじゃないの?ずっと部屋の中に閉じ込めるのは可哀想だよ。」
「確かに闇ちゃんも段々外に受け入れて貰えないかもしれないと思い込んで怖がっている所はあるよね。でも、闇属性の概念の隠蔽はまだ続けないと駄目なんだ。」
「なんで?このままじゃ色んな神族が怒っちゃうよ。特にまだ封印されているけどアマテラスとか常に世界の監視を続けているイヅノメとか。」
「ふーん…もう少し詳しく教えてくれないかな?」
「闇属性の本質は負の感情や思い出の力を駆使して発動する魔法だから。闇属性の者は耐性がないと感情がどんどん悪い方向に引きずられていくんだ。それに身体から出て来る闇の性質は周りの心にも作用するから、周りにいるだけで感情が暗くなっていく。それで闇属性を嫌う子も増えてきて、聖剣だとか闇から身を守るアイテムとか出てきて…段々皆闇属性を嫌うようになったんだ…」
「アマテラスが特に闇属性を嫌っているのは?」
「アマテラス自身が光属性だという事もあるけど…アマテラスは正義の象徴みたいな子だから、自分と違うというだけで嫌っちゃう面もあるんだ…中でもモンドとスサノヲは付き合いが長いから特別なんだと思う。」
「イヅノメって誰?」
「とても怖い神族だよ。一部の神族しか知らない事だけどね…この世界は光属性と闇属性の力のバランスが取れていないと歪みが生じるんだって。その歪みを修復するには大量の魂が必要で…それを世界からその必要な分の魂を刈り取るのがイヅノメの役割なの。」
「世界の歪みを放置するとどうなるの?」
「やばい奴が出て来るって聞いたけど…詳しくはよくわからない。」
「やばい奴…か。」
「その闇属性の存在を皆が忘れるって結構というかかなり大事で…ちょっとスクナビコナも後が怖いんだよね…」
「ごめんね?もう少しだけ待っててくれるかな?」
「…うん。」




