54-3モンド
過去編
目障りだったから王室の第二王子を殺してしまった…バレるとめんどくさいんだよな…まぁいいや、スクナビコナに隠蔽でもしてもらおう。
「スクナビコナ、適当に隠蔽してよ。」
「え…で、でも…」
「嫌なの?」
「ま…待って!わかったよ!隠蔽するから!でも…代役とかどうするの?第二王子の仕事を他の王子ができるとは思えないけど…」
「…そういやそうだったね。」
「そ!そうだ!第二王子よりもずる賢い…頭いい人が知り合いにいたんだ!年齢も一緒だし、連れて来るよ!」
「…スクナビコナは神族以外に知り合いなんていたの?」
「いや…下町でよく一緒に遊んでくれるんだ…孤児だけど…私の相手になってくれる人間は二十年ぶりだから…嬉しくて…」
「ふーん…じゃあ代役はその子でいいよ。」
「え?いいの?」
「王子なんて誰がやっても同じだろうしね。」
「ありがとう!じゃあ早速連れて来るよ!」
「…」
スクナビコナが走って行った。ありがとうって…自分の事でも無いのに何でこんなに嬉しそうなんだろう。
「お!君が帝国の神様って奴?ただの少年兵に見えるけど…その目、相当殺してきてるね。」
「司、司!本当に偉い人だから!そういう態度じゃ殺されちゃうよ!」
「でもスクナビコナと同じ種族なんでしょ?じゃあ怖くない。」
「同じ種族でも天と地程違うから!」
「あはは!大丈夫だよ。スクナビコナの友達なら少しだけ目をつむってあげるから。」
「モンドー!」
「でも君も前世で相当やらかしている転生者だよね?」
「バレた?凄いね、確かにスクナビコナと一緒にしちゃ駄目みたいだ。」
「スクナビコナの事をバカにしているのはどうでもいいけど、神族を騙したり出し抜く事が出来るという考え自体が気に食わないな…でも、そんな君に丁度いい計画が進められているんだ。その計画の被験者になればひょっとしたら眷属だという縛りから解放されるかもしれないし、君が王子になるのも認めてあげる。どう?参加してみる?」
「うーん…断っても殺されないとは限らないし…受けるよ。人体実験でしょ?」
「そうだよ。じゃあこっちにおいで。」
「死ぬか生きるかわからないなんてワクワクするよね!」
「あれ…待って!モンド!司に何やらせる気なんだ!」
「大丈夫だよ。友達なんていくらでも捕まえて来てあげるから。」
この司って子…ほぼ確実に痛みで心が折れる実験なのに数日間自分のペースを崩さないとは、前世ではどういう奴だったのか…スクナビコナに殆ど隠蔽されていてわかんないな…
「実験、成功しちゃったみたいだね。」
「はい、百体の実験体の内、五体が生存、その内二体が意識を取り戻せない状態です。」
「もっとも成功したのがこの司って子?頑張ったんだろうけど、こんなステータスじゃまともな神族にはやっぱり攻撃は通じないでしょ。まぁいいや、王子くらいにはならせてやろう。」
「司ー!無事か?無事なのか?」
「ん?なんだ、スクナビコナか…まったく酷い目に会ったよ…」
「私が連れて来たばっかりに…」
「何泣いてんの?噓に決まってんじゃん。」
「え?」
「ばっかだなー、俺の身体に怪我なんてないだろ?身体検査と注射だけだよ。」
「でも何でこんなに人がいるの?」
「順番が回って来てないだけだよ。」
「え…じゃあ時間がかかったのって…」
「王子になる奴の適正検査なんて長いもんだよ?色々聞かれたし、身体検査も面倒だったし。」
「あれ全部第二王子候補なのか?」
「そうだよ。いくらモンドでも流石に見知らぬ孤児をそのまま王子にはできないでしょ。計画に参加っていうのはそういう事。」
「そ…そうか…大変なのだな…でも、やっぱり王子になったらあまり遊んでくれなくなるのか?」
「そんな事ないよ、むしろ逆。ちゃんと沢山遊ぶ時間ができるよ。」
「本当か?」
「当たり前じゃん。」
「王子にはなれそうなのか?」
「聞いた限りはいけそうだね。スクナビコナも口添えよろしく。」
「役に立つかわからんが…頑張ってみる!」
…平気そうにしているけど全身の感覚を取り戻すには後一週間必要だ。息をするのも苦痛だろうに、こんな状態で平気に振舞える時点で前世では平凡には程遠い人生を歩いて来たんだろうと予想がつく。
「ねぇ。」
「何?」
「やり過ぎたらどうなるか、覚悟しておいてね。」
「大丈夫、覚悟はいつでもできているよ。」
「司?」
「何でもない、行こうか。」
「うん…」




