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「おいおい…こんなに軟弱そうな奴を送って来て何になるっていうんだ?死にに来たのか?」
「交換留学生っていうよりも王国からの贈り物だろ?戦争が怖いから生徒を差し出して頭下げてるんだよ。」
うーん…あいつは中々いい素材になりそうだ。あれはいらないな。お、あいつなんて解体しがいがありそうだな。
「メディカさん。俺から離れないでください!親衛隊隊長としてメディカさんの身の安全を死守します!」
「ありがと、でも大丈夫だよ。王国と帝国の交流でお互いの事をもっと知るために来たんだから。」
「でも…やっぱり危険ですよ…。」
「クロノアはメディカがその程度の輩に遅れを取るとはとても思えませんが。」
「交換留学生の演説は私が先に出るよ。」
「不安だったら隣について行きます。心配しなくても俺は実力を隠していないので!」
「大丈夫だよアルト。信用問題もあるし今回は実力を隠さないつもりなんだ。その代わりにもっと帝国思想に合わせた演説をするつもりだから。そっちの方が向こうも親しみやすいでしょう?」
「メディカさん…帝国思想に合わせた演説って…」
「心配しなくても万が一の時に正当防衛するだけで特に変わった事は言わないよ。アルトも心を落ち着かせて自分が望む帝国学校の生活を楽しめばいいよ。」
「やっぱり…不安です。メディカさんに何かあったら…親衛隊隊員に合わせる顔がありません。」
「うーん…じゃあ人化したクロノアと一緒に私の隣に立って守ってくれる?」
「はい!」
帝国の学園には闘技場がありそこで戦ったり演説したりするらしい。闘技場に着く前に三人の生徒が襲い掛かって来た。全員半殺しにした後組み立てて椅子を作り、生きたまま異空間に放り投げる。
「えー…今回初めて王国との間に交換留学というものを始めました。これから暫く皆さんと仲良くする王国生徒の自己紹介が始まります。メディカ、クロノア、アルト、上がってください。」
途端にブーイングや黄色い声や嘲笑が聞こえて来た。無視して三人で闘技場の真ん中まで歩いていき異空間に投げ入れた椅子を取り出して上に踏ん反り。クロノアとアルトが左右対称になるように武器を構えた。辺りが一気に静まり返る。
「私が魔王だ。今日から諸君に恐怖というものを教えてやる。挑戦したい奴はどこからでも掛かって来い。」
数秒後演説を聴いた全員が狂気じみた表情で襲い掛かって来た。アルトは竜化して全員に火を吐きクロノアは確率操作で全員の攻撃が私達に当たらない様に曲げた。よしよし…全員モルモット決定だな。
その日は帝国学校は休みになった。校長、生徒、先生、従業員、奴隷…全員襲い掛かって来たから全員研究室に連れてその日だけモルモットになって貰った。いやー満足満足。あ、もちろんアルトには見せられないから先に帰って貰った。子供に見せるにはちょっと刺激が強すぎるもんね。
「「「「「「「「「「おはようございます!魔王様!」」」」」」」」」」
「おはよう、諸君、清々しい程いい天気だね。」
「魔王様!踏んでください!」
「魔王様!部下にしてください!」
「魔王様!弟子入りさせてください!」
「魔王様!靴舐めていいですか?」
笑顔で一人一人の願いを聞いてあげる。スカートの底を覗こうとする奴は無言で蹴り飛ばす。視線は恐怖というよりも崇拝や嫉妬が多い気がする。まだまだ煽りが足りないのだろうか?クラスに着いたらまずは笑顔だな。優しく笑った後に昨日の事についてもっとしっかり説明しないと皆も私の対応について困ってしまうだろう。
「昨日モルモットにされても懲りない奴はいつでも掛って来い。もっとじっくり可愛がってやる。」
歓声が広がり皆から凄い熱意を感じる。うんうん…活気あるクラスで嬉しいよ。
「魔王様!他のクラスの友達にも伝えていいですか?」
「いいよ。楽しい交流にしよう。」
先生まで目を輝かせている。嬉しいなら早く襲い掛かってくればいいのに。しかしすぐに問題が起きた。二日目に襲い掛かって来た先生を全員半殺しにしたせいで授業にならない。それは無垢な生徒も困る。
「よってルールを設ける。クロノアとアルトに挑戦して傷付ける事が出来た者は私に挑戦していい。逆に二人を傷付ける事が出来なかった場合、一週間挑戦権を剝奪する。挑戦方法は単純。どちらかに挑戦状を出して当日の放課後に闘技場で勝負を挑む。一度に挑戦できる人数は無制限。」
「二人を傷付ける事が出来れば魔王様に挑戦できるんですよね?全員で挑戦して二人を傷付けたら全員魔王様に戦いを挑んでいいんですか?」
「もちろんだ。だが私に負けた場合やはりモルモット行きだがな。」
「メディカさん…全校の生徒と先生に挑まれて無傷はちょっと…」
「心配しなくてもクロノアがいる。大丈夫だよ。」
「はぁ…」
その後私達は帝国学校の伝説になった。




