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「お久しぶりです。マスター。」
「「…」」
現れた女の子は真っ裸だった。ローテを追い出し女の子に服を着せ周りの人の記憶を消した。
「ずっとマスターを待っていた。待って待って待って待って待って待って待って待って待って待って…でもマスターは帰って来なかった。約束守ったのに帰って来なかった。今度はマスターを探した。探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探してマスターの魂を見つけた。呼びかけても返事してくれなかった。色んな方法を試して875162435回試行錯誤を繰り返しついに神獣にマスターの魂を次の転生者にしてくれるという約束を取り次いだ。そして今、ようやくマスターと再会を果たしました。これが嬉しいという感情でしょうか?マスター。」
「うん。それは自分が一番よくわかると思うよ。後、私の事はメディカと呼んでね。」
「?マスターの名前は清水 凛だと認識していますが。」
「転生したんだから名前も変わるよ。今の私の名前はメディカ。あなたにも新しい名前を付けてあげる。クロノアなんてどう?」
「わかりました。これから僕の名前はクロノア。」
「クロノアはこれから私の妹として名乗っていいからね。あと、わからない事があったらなんでも聞いていいから。」
「クロノアはクロナとシロナの記憶があります。シロナの記憶によると僕はメディカの武器になっていたそうです。続いてメディカの武器でいさせてくれますか?」
「いいよ。でもその前に私の知り合いにあなたを紹介したいの。ついて来て!」
私はヤガミ達の所までクロノアを引っ張っていった。
「妹が出来ました!自己紹介して。クロノア。」
「シロナとクロナの融合体クロノアです。よろしくお願いします。」
皆が固まっていた。私も最初は固まっていたし仕方ない。ちなみに今鑑定するとこうなる。
名称:クロノア
種族:人工神族
年齢:2時間
状態異常:なし
HP:500000000000/500000000000
MP:500000000000/500000000000
攻撃力:500000000000/500000000000
魔力:0/0
防御力:500000000000/500000000000
素早さ:500000000000/500000000000
魔法:なし
スキル:自己改造、高速演算、人心掌握、確率操作。
称号:奇跡の存在
「メディカの妹?」
「うん!凄くかわいいでしょ?」
灰色の地面に付きそうな長髪と赤と青のオッドアイ。私よりも少し低い身長。うん!かわいい!
「確かにかわいいけどメディカの方が可愛くない?」
「そんな事ない!私のクロノアは世界一かわいいんだから!」
「はぁ…」
「でも…僕はメディカの方が可愛いと思う。」
「クロノアは謙虚にもなれるんだね!流石我が作品!どこをとっても素晴らしい!」
「メディカ様が親ばかになった…」
「クロノアは普段私の武器になっているから。」
クロノアはブレスレットになって私の右手に巻き付いた。
「いつになく上機嫌だね。メディカ。」
「妹が出来たからね!旅が終わったら早速エルフの国に報告する!」
「メディカは妹が欲しかったの?」
「いや、どちらかと言うとクロノアがこんなに必死になって探してくれたのが嬉しいかな。」
「メディカはクロノアにとってお母さんみたいな存在だったから当たり前です。」
「嬉しい事言ってくれるね。でも今はまだ7歳だからお姉さんでいいよ。」
「はい。」
「クロノアはどれくらい長い間この世界にいたの?」
「3000年。」
「向こうの世界では?」
「50万年程。」
「そう…頑張ったんだね。」
「クロノアはメディカに褒めて貰う為に頑張った。メディカ、次の目標を設定してください。」
「今の所はないかな。強いて言うなら…友達と戦う約束していたから強くなるのが目標かな?」
「強くなるとは具体的にどういう風にですか?」
「戦闘面で強くなりたいの、敵が単体でも複数でも対処できるようにしたいな。」
「了解。身体改造を行いますか?」
「まだそこまでして強さを求めてはいないよ。」
「ではクロノアは何をすればいいんですか?」
「戦闘のサポートでも頼もうかな。あ、でもスキルは使わないで?自分の戦いはなるべくクロノアの力を使いたくないの。クロノアの力が必要になったら言うから。」
「はい。わかりました。」
「アクアとシナモンは旅館に戻ったらクロノアの着る服一緒に考えてくれる?」
「わかった!」
「わかりました。」
「クロノアも自分の意見はちゃんと言うんだよ。」
「はい。メディカ。」
そして私達は旅館に戻ってクロノアの着せ替えに勤しんだ。
「え?クロノアが着る服は長袖長ズボンなの?」
「うん!動きやすく作ってあるし暗器もいっぱい隠せて中々かっこいいでしょ?」
「まぁ…そうだけどこの人選で考えたコーディネートって絶対にスカートやドレスだと思ってたから。」
「クロノアの意見を聞いてみたらメディカに決めて欲しいって言って…まぁ…この結果に。」
「かわいい系も似合うと思うんだけどな…」
「何言ってんの、クロノアはいつだって一番かわいいんだから。」
「はいはい…そうですね。」
「ところで今日は何処に行きたいか決めた?」
「そうそう!山登り!山頂から雪の景色見てみたい!」
「クロノアもそれでいい?」
「はい。」
近くの山を皆で登った。座標を計算すれば一瞬で山頂まで行けるのだが偶には普通に登ってもいいかな。
「この世界でクロノアの知り合いは何人いるの?」
「神獣以外との面識がありません。」
「そう?」
「そして、まだ会っていないけど助手が転生して来たみたいです。」
「あぁ…あいつか。」
「命令してくれればいつでも殺しに行けますが...どうします?」
「殺さないであげて?彼も彼なりの考えがあって私を殺そうとしたんだ。今でも友達だったと思っているよ。」
「あいつは…僕からマスターを奪った…」
「一応言っておくけどあいつに会っても前世に関する記憶は知らせちゃ駄目だし危害も加えないでね?」
「なぜですか?」
「駄目なものは駄目。」
「…」
「クロノア…私のお願いが聞けないの?」
「…」
私を探す間に反抗というものを覚えたのか?それはそれで面白そうだ...
「だめだよメディカ、自分の妹にはもっと優しくしないと。それこそちゃんと理由を言わないとクロノアも何故ダメなのか分からないよ。」
「そうだね。」
クロノアの方に向かってはっきり言う。
「クロノアが私の友達を傷付けたら私が悲しむからだよ。」
「…本当ですか?」
「うん。」
「…わかりました。」
やっと納得してくれたらしい。
「で、なんの話してたの?」
「ヤガミには教えてあげなーい。」
「はぁ…」
山頂まで登ったらカグラとヒトコトちゃんがいた。こちらに気付いたヒトコトちゃんが無表情で手を振って来た。ヒトコトちゃん今日はもう喋ったのか?
「こんにちは。カグラさん、ヒトコトちゃん。」
「あぁ、こんにちは。何しに来たんだ?」
「山登り。二人は?」
「ヒトコトヌシ様はメディカに会いたいと言ってな、探しに来たんだ。」
「そうなんだ?なんか用事あるの?」
そう言うとヒトコトちゃんは首を横に振った。心の声が聞こえればいいんだが…
「じゃあ遊びに来たの?」
今度は首を縦に振った。当たりらしい。
「紹介するね。ヤガミとアカリ、後私の妹のクロノアだよ。」
「初めまして。俺はカグラでこの方はヒトコトヌシ様です…メディカ…お前の言ってる妹って神族なのか?」
「うん。」
「妹分じゃなくて?」
「うん。家族としての妹だよ。」
「…はぁ…」
ヒトコトちゃんはヤガミ達に向けて手を伸ばした。
「あの…これはどういう…」
「ヒトコトちゃんはスキルのせいで殆ど話せないんだ。たぶん握手を求めているんだと思う。」
「はぁ…初めまして。ヒトコトちゃん、ヤガミです。」
「アカリだよ!よろしくね、ヒトコトちゃん!」
「初めまして。メディカの妹のクロノアです。」
ヒトコトちゃんは一人一人握手した後満足そうに頷いた。
「ヒトコトヌシ様はスキルのせいで恐れられたり利用しようとする者がいるので友達ができて嬉しいのだと思います。」
恐れられたり利用しようとする者がいる、か...そりゃそうだ。
「そういえばヒトコトちゃんに渡したい物があるんです。」
「なんだその本は?」
本を受け取ったヒトコトちゃんは不思議そうに本をめくったり、振ったりして、顔面に乗せて眠りかけた所でカグラに起こされた。
「この本の全てのページに私の魔法を込めたテレパシーの魔法陣が描かれています。最初のページを開いて話す対象と言葉を念じてください。」
「こうかな?」
最初のページの魔法陣が消えてカグラがぎょっとした。
「今のは…?」
「会話が出来ないのは極めて不便だと思って作りました。これで本が使い切るまで好きな相手と話せます。」
「ありがとう。」
「うん。使い切ったら本を捨てないでね、もう一度魔力を込めれば何度でも使えるから。」
「凄い…」
「クロノアも覚えておいてね。魔法を使えなくても魔法陣の解読や解除に使えるかもしれないから。」
「はい。メディカ。」
「皆―!ここから見る景色凄くきれいだよー!」
「今行くよ!」
「俺にもこの魔法陣を習得できるか?」
「風魔法だから一応出来るよ。」
「教えてくれるか?」
うーん…いいけどカグラがこんな魔法を覚えたら竜人の国の守りが更に硬くなるんだよなー…べつにいいんだけど面白くない。
「…今面白くないとか考えなかったか?」
「そんな訳ないじゃん!ちゃんと教えてあげるから。」
「ありがとう。」
何時の間にかカグラとヒトコトちゃんの心の声が聞こえるようになった。そして気付いた。最初カグラ、カンナカムイ、ヒトコトちゃんの心の声が聞こえなかったのはどうやらカグラの防壁のせいだったらしい。逆に心の声が聞こえるようになったのはカグラに一定の信頼を得たからである。つまりカグラの心の声がまた聞こえなくなった場合は警戒されている上に防壁を張られているという事か。憶えておこう。
「じゃあね。ヒトコトちゃん、カグラさん。」
「あぁ、じゃあな。」
「またね。メディカ、皆。」
色々あったけどまあまあ楽しい旅だったな。




