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32-3キラー

伝言も一切なしでメディカが学校を休んだ。アルトと共にゼラと理事長から話を聴くとどうやらメディカは自分の家族に会ったらしい。母さんの墓参りに行くそうだ。


「そのヤトって奴がメディカの兄さんなのか?」

「そうみたいだね。」

「メディカのお母さんは生まれたばかりのメディカを庇って死んだそうなんだ。で、メディカの家にエルフの血が置いてあったよね?あれ…メディカのお母さんだったらしいんだ。」

「「…」」


メディカは赤ん坊の頃から自分の母の死体を見て、ガラス瓶に入れて薬や実験の材料に使ったのか…吐き気がする…初めてメディカに会った時に飲まされた薬の中にメディカの母さんの死体が入っていたかもしれないと思うと吐きそうになる。


「今はそこで俯いている場合じゃないぞ?後30分でエルフの国に帝国軍とオークが攻めて来る。万が一の事があったらお前らがメディカを助けに行け。」

「「え?」」

「要するにメディカが大変そうだったら理事長が言うからそれまで心の準備をしておこうという事。」

「エルフの国に戦争が起きるのか?」

「みたいだね。」

「メディカは知ってるのか?」

「たぶん。」

「じゃあメディカは何で行ったんだ?まさか国を守るためじゃ…」

「ひょっとしたらね。」

「なんで黙って行かせたんだよ!」

「あの時は僕達も大丈夫だと思ったから。」

「あの時は?」

「ただ二つの軍隊が敵に回ったところでメディカに傷一つ付かないよ。」

「「えぇ…」」

「ただ奴が動いた場合は別だ。メディカが生きて帰って来れる確率は三割って所だな。」

「いや、奴って誰なんだ?」

「帝国軍の切り札…確か名前はモンド君だったね。一度会った事あるけど印象深い人だったよ。そんなに強そうには見えなかったけど、理事長が断言するなら相当強いんだろうね。」

「モンドは昔私よりも強かった、今は力の使い方を少し忘れているみたいだがどちらにしろ今のメディカには勝ち目がないだろう。」

「え…理事長より強いんですか…?」

「あぁ、私と同じ種族で私より年上だ。」

「…」


ゼラの顔が真っ蒼になって固まった。


「アルトにも分かり易く言うと竜人達の長カンナカムイと同じ種族だ。」

「カンナカムイ?誰だそれ?」

「そういえばカンナは竜人が10歳にならないと会わせてくれなかってな…」

「はぁ…」


かなりやばい奴なのか?今の所ビビっているのはゼラだけだけど…


「作戦はあるのか?」

「メディカの付近に転移した後ゼラは天の加護で守りアルトが竜の鱗で弱った攻撃を弾く。その間にキラーが三人纏めて瞬間移動で戻る。いいか?絶対に戦おうとするなよ?」

「わかった。」

「なぁ…もう30分経ったよな?エルフの国は今戦争中なのか?」

「あぁ。メディカが作った結界が見える。奴が来なければ大丈夫だろう。」

「はぁ!?おい!手伝わなくていいのか!」

「まぁ落ち着いてキラー君、理事長が大丈夫だといってるんだから平気なんじゃないかな。」

「でも…!….」


エルフの国の方向に一瞬赤い雷が走った。


「キラー…見えたのか?」

「…はい。」


聞かれたのは多分あの赤い雷だろう…なんとなく見えてしまったけどあれはメディカが俺に使おうとしていたスキルだ。


「…大丈夫そうだな。奴は今回動いていない。生徒達にはある程度情報を公開しておく。緊張させて済まなかったな。もう帰っていいぞ。」

「一つ聞いていいですか?」

「なんだ?」

「俺達が行って危険になるかもしれないなら何故理事長が行かないんですか?」

「帝国には私が生きていると気付かれたくないんだ。」

「え?どういう事?」

「そういう事。」


何故かゼラが代わりに答えた。しかも全然納得できない答えで。


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