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放課後学校が終わって校舎の屋上で夕日を見ながらオカリナを吹いてたらいつの間にか帝国軍の服を着た少年が隣に座って演奏を聞いていた。たぶんこいつが例の神族だろう。つまんなそうな表情でこっちを見ていた。
「何?」
「辛気臭い曲だな。」
「夕日に合わせただけだからね。」
「楽しくなる曲がいい。」
「性に合わない。」
「いいじゃん一曲くらい。」
「…..はぁ、わかったよ。」
一曲演奏してみたけどほんとに夕日に合わないな…何てことしてくれるんだ少年。性別はたぶんないけど。
「で、何しに来たの?」
「仕事の合間に王国の景色を見に来た。」
「ここじゃなくてもよくない?」
「曲が気になったから来た。」
「ふーん…」
「で、どう?王国の景色は。」
「皆笑ってるな。楽しそうだ。」
「…そうね。これじゃ最初に演奏した曲もあまり合わなかったかもね。」
「戦争にいまいち楽しさやロマンが感じないんだ…どうすればいい?」
「別の事を探せば?」
「例えば?」
「自分で探せば?」
「王国の人達の真似して買い物したり手をつないでみたが全然楽しくない。」
「研究とかは?」
「何の?」
「音楽、料理、戦術、薬剤、機械、気候、歴史とかの研究。探せば知らない事なんて山ほどある。」
「何か教えてくれよ。」
「うーん…それしか服がないの?」
「あぁ。」
「服でも作ってみる?」
「いいのか!?」
「ここで教えてあげる。」
アイテムボックスから毛糸を出した。
「…..それどこから出したんだ?」
「アイテムボックス。」
「時間あったらそっちも教えて。」
「帝国の人間に言わないなら教えてあげる。服はまだ早いからまずはマフラーからだ。編み方にも色々あるからとりあえず道具があまりいらない指編みから試してみようか。」
「わかった!」
ふむ…こいつ意外と外見より雑だな。あ、また間違えて混乱している。指に糸を絡ませて混乱してる姿からはとても神様には見えないな。
「今日はここまでだね。また明日放課後においで。」
「まだあまり出来てないぞ?」
「初心者がそんなすぐにできる訳ないじゃん。ゆっくり覚えていきな。人がいる時には絶対来るなよ?」
「なぜ?」
「大騒ぎになるからだ。」
「そういやこの前王国を歩いていたら騒ぎになったな。王国の王子にやめてくれと言われたばかりだった。」
「じゃあやめろ。」
「俺を止めるのは王国でも帝国でも無理だ。」
「将軍なんでしょ?帝国に忠実じゃないの?」
「失った記憶が気になるから表向き手伝ってるだけだ。帝国と王国を両方相手にしても負ける気がしない。」
念の為鑑定とサリエルの目を使っておこうかな…あ、無理だった。
「させないからな。」
「心読まれるのは初めてだよ。」
「帝国が近いうちに王国を攻めようとしている。そのまま勝つのはつまらないから俺自身は王国と戦わない。お前と殺し合いはなしの決闘を申し込む。」
「死なない程度ね…勝ったり負けたりしたら何かあるの?」
「プライドが減る。」
「はぁ…それくらいならいいよ。いい勝負になるように手は抜いてくれるの?」
「お前は手を抜かなくても充分戦えるだろう。」
「7歳児に無茶言うな。」
「無茶じゃない頑張れ。今日からお前は親友兼ライバルだ。」
「幼児虐待で訴えるぞ。」
「帝国にそんな甘い法律はない。それに見た目だけなら俺だって子供だろ?」
見た目だけね…
「わかったよ。なるべく頑張る。」
「あぁ。また明日な。」




