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墓に着いたら驚くべき事実に気付いた。母さんが地縛霊らしき物になってた。サリエルの目の副作用としてどうやら私は死人の魂を見えるだけではなく会話できるらしい…それにしても心の声まで聞こえるとは驚いた。ヒエン達が来る前に軽く会話でもしてみよう。
「母さん?」
「メディカ?メディカなの?」
エルフの国の景色に目が行ってて私に気付かなかった母さんが飛びあがった。
「メディカ!ごめんね危険な場所に一人にさせちゃって!もう平気だからね!お母さんがいるから!」
地縛霊にいきなり抱かれてひたすら頬ずりされる。実の母さんじゃなかったら軽くホラーだな…いや、実の母さんでもホラーか。
「いや母さん死んでるからね?」
「え?やだ!忘れてた、どうしよう。ヤトもお父さんも国民も心配なのに…あれ?メディカの精霊達は?」
「後で来るよ。それよりも皆大丈夫だから家族や国民の墓参りを充分聞いたと思ったらちゃんと成仏してね?」
「…頑張る。」
何とも心配になりそうな返事が帰って来た。
「メディカ!もう来てたのか!」
「メディカの精霊は4体共無事だったのね…よかった。ところで一緒に来たあの男の子は彼氏?エルフは美形が多いからいいよねー。7歳でメディカが彼氏作るのは驚きだけど。」
幽霊を殴る手段ってないかな。
「メディカ、どうしたの?不機嫌そうに見えるけど、お母さんの前では笑ってようか?そっちの方がお母さんもきっと喜ぶよ。」
「そうそう、彼氏の前ではもっと笑顔で女らしさを見せないと。」
また怒りで国ごと焼き払いそうだ。今すぐ転移石で帰りたい。何故墓参りなどしようとしたんだろう。
「メディカはもう墓参り終わったの?」
「まぁね。」
「じゃあ後は俺達で手を合わせておくよ。」
「声を出した方が本人に伝わると思うよ?」
「メディカは声に出して言ったの?」
「?まぁ…」
「そっか、道理で先に来た訳だ。」
母さん以外の皆が納得するように頷いて自己解決していた。おい、お前らの中で私は一体なんなんだ。
「メディカはツンデレだけどいい子です。」
手を合わせて早速とんでもない事を本人の前で言いやがったこいつ。母さん滅茶苦茶爆笑してるよ。私の肩を叩いて「自業自得だからね。」とか言ってるけど既に怒りの頂点に達している私は近くの黒雲に向かってサマエルの怒りの定点爆撃を行った。自分のステータスを確認するとちゃんと倒せたらしい。次から何かあったら腹いせに近くのモンスターを片っ端から定点爆撃しよう。
「メディカ、お願いがあるんだけどその楽器をここで一曲奏でてくれるかな?メディカのお母さんにも聞かせてあげたいんだ。」
…それくらいなら手伝ってやるよ。全然別れる気のない母さんにショパンの別れの曲でも奏でてやる。おや?楽器がいいのか私のスキルのお陰か結構いい感じの音だな。
「っていうかこの楽器はオカリナだという事を知らないの?」
「……え?いや、楽器を作りたいと父さんにねだっただけで作った楽器の種類は知らないんだ。」
「いい加減ね。それくらい聞いておきなさいよ…ん?」
気が付いたらヒエン達と母さんが寝ていた。ヒエン達はともかく母さんは寝ちゃ駄目だろおい!一応前世では音楽もそれなりに上手かったんだぞ私!すぐ飽きたからあまりやらなかったけど賞だって取ったんだぞ!寝るとは失礼な。
「聞いてて気持ちよかったんでしょう。お母さんもきっと喜んでますよ。」
喜んで寝てますね、はい。どうやったら幽霊を蹴り飛ばせるんだろう?
「ヒエン達も手を合わせた?そろそろ行くよ!」
「うーん…ってちょっと待って!まだ手を合わせてない!」
「早めに済ませてね。」
主にこいつが起きてニタニタしだす前に。あれ?もう起きそう?…くっ!遅かったか。
「わかったよ!えーっとえーっとメディカを生んでくれてありがとう!」
「俺達を守ってくれてありがとな!」
「愛してくれてありがとう!」
「色々とありがと。メディカの事は俺達がちゃんと守るから安心してくれ。」
うーん…ヒエン…後半のそれはちょっと聞いてて恥ずかしいぞ。できれば私がいないところで言ってくれ。母さんがこっち向いてニヤニヤしてんじゃん。まったく…
「はぁ…終わったらもう行くよ。ヤガミ!転移石の原理と使い方を教えてあげるからおいで。」
「はい。」
教え終わった後そのまま全員で家まで帰った。学校の休み届書かないとな…




