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「さっき突然防壁の周りに赤いオーラが出てきてな、敵を切り刻んだ後飲み込んだんだ。王女様が何かしたんじゃないか?」
結界の外には血が一滴も残っていない。破壊の痕跡はあるが死体、服、武器などが一切転がってなかった。
「王女様は俺と王城で避難してたんだ。そんな訳がない。」
「私がやったので間違いないよ。」
「メディカが?消えた人達は?」
「一人残らず殺したわ。」
ヤガミは少し驚いた顔をした後、また優しく撫でてきた。王女だと思ってるならもっと敬え。
「ありがと、メディカ。そしてごめんね、心配かけて。」
「は?」
「皆を守ってくれてありがとう。」
何を勘違いしてるんだこいつ。
「あんたにムカついたから憂さ晴らしに消し去っただけよ?」
「それでも守ってくれた事には変わりないじゃないか。」
「…」
こいつにどうしたら言葉で勝てるんだろう…こんなに悔しいのはキラに斬られた時以来だ。
「王女様はこれからどうするんですか?」
「学校に戻る。」
「勉強してたんですか?偉いですね。」
落ち着け…実力でこいつを黙らせたら言葉で勝てないと言っているようなものだ。
「あんたは?」
「俺ですか?お供させて貰いたいけど120歳じゃもう行けないかな。頑張って鍛えて王女様がいつでも戻って来られるように国を守っていきたいです。」
「生憎もう国に戻る気はないんだけど。」
「え?でももうメディカちゃんの部屋もあるんだよ?」
アラシが会話に参加してきた。
「女王になるつもりは無いのになんで?」
「女王にならなくてもメディカちゃんは家族の一員なんだから部屋くらいあって当然だもの。」
「でももう帰る気ないよ?墓参りしたら出てくもの。」
「そんな薄情な事言わないで偶には帰って来なさいよ!」
「ことわ…」
その時目覚めた神獣から用事があるとテレパシーを送られた。
「ごめん、話は後で聞く、急用ができたわ。」
言い終わった次の瞬間神獣の前に強制転移された。
「なに?」
「女王にはならないんだな?」
「そうよ。」
「では何しに来たんだ?」
「墓参り。」
「その他には何もないんだな?」
「なんでそんな事を聞くんですか?」
「お前からはスサノオとアマテラスの匂いがするからだ。」
「へ?」
アマテラスは分かるがスサノオ?誰だそれ?
「そのスサノオとアマテラスがどうしたんですか?」
「なに…500年前スサノオに殺されかけただけだ。」
「へ、へぇ…」
「アマテラスはスサノオの旧友でな、スサノオの代わりに私にどう謝ればいいのか分からず少し前に下界して地下に引きこもったんだ。」
え?…話と違うぞ?確か人間に封印されたとか言ってなかったっけ?
「アマテラスが下界したせいで神界は真っ暗になった。神々は仕方なくアマテラスと共に下界して来た訳だ。ところが今度はアマテラスが人間を嫌い、人類を消そうとしたところで止めに入ったスサノオに封印されてしまう。」
「はぁ。」
「お陰で下界まで真っ暗になってしまってな。仕方ないからとスサノオは封印を弱めた後に漏れ出したアマテラスの力を今の太陽のエネルギーにしている訳だ。」
「疑似太陽の下にある祭壇はエネルギーを転移させる装置みたいなものだったとか?」
「そうだ。よく気付いたな。」
「つまり疑似太陽が本物の太陽で真上にある太陽は偽物という訳?」
「そうなるな。」
皮肉な話だな…
「何故スサノオはアマテラスの封印を解かなかったんですか?」
「その場で封印を解いたら人類は結局滅びていただろう。それにスサノオはアマテラスの怒りを恐れてたみたいだしな。」
「で、スサノオは友人を封印したまま放置したの?」
「いや、人類を滅ぼさないように説得して、アマテラスの怒りが収まるのを待ってから封印を解こうとしていたんだ。」
でもその封印解いちゃったんだけど…あれ?待てよ?アマテラスと理事長は最初から知り合いだったな…アマテラスに人類を滅ぼさないようにお願いした時の反応も微妙に引っかかるし…理事長ってまさか…
「スサノオは別の名前を持ってたりしますか?」
「確か人間の社会ではイリナという名で通っていたな。」
アマテラスの怒りが怖くて封印解除の役目押し付けやがったのか師匠。
「どうかしたのか?」
「いいえ…こっちの話です。」
「それとは別に女王がいないのは困る。私の眷属が守れない。」
「眷属?」
「神々にはそれぞれの眷属がいる。眷属は神を崇め、神は眷属を守るのが役目だ。」
「私はあなたの眷属なの?」
「元はな。お前からは何故かアマテラスの力を感じる。神の力を持つ者は眷属として扱えない。よって、協力を願いたい。」
「協力?」
「お前には女王にならずとも国を守ってほしい。私からは神々から身を守る方法を幾つか伝授する。」
「答える前に幾つか聞かせて。なぜ直接自分で眷属を守りに行かないんですか?」
「スサノオから受けたダメージがまだ残っているからな、また戦いに来られては困るから隠れて回復を待っているんだ。」
「隠れている間神獣契約はいつもどうやっているんですか?」
「今回の様に私の前まで連れてきて行う。」
「私が張った結界と神獣契約で出来た結界はどっちの方が硬いんですか?」
「お前が作った物の方が硬い。だが、どちらにしろ神の力を使われたらそう長く持たないだろう。」
「神の力?神が襲って来る事もあるんですか?」
「あぁ、神々が下界してから眷属の奪い合いは時々起きる、その場合神自らが相手しないと勝てないだろう。お前も神族の力を持ってるからな、うまくいったらお前でも勝てるかもしれない。」
「最後に3大モンスターの残りの二体について教えてくれる?」
「あれはあの二人に聞いた方がいいだろう。質問が終わったならそろそろ返事が欲しいんだが。」
「…わかった、協力するよ。」
「感謝する。後こっちはただのお願いだが、偶には戻って来てくれ、あまり眷属が悲しむ姿は見たくない。」
「え?…わ、わかった、考えておく。」




