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21-3ヤガミ

「メディカ…あの一瞬で国を包囲するほどの結界を張れたのかい?」

「えぇ。」

「バリアが張られてるという事は神獣契約は済ませたのか?」

「いいえ。自力でやりました。大丈夫だとは思うけど外の様子を見てきていいですか?」

「あぁ、わかった。」


王城の前まで来ると王女様が王様と話しているのが見えた。王女様の名前はメディカというらしい。結界は神獣契約せずに一人で作ったのか?…だめだ…それじゃ絶対長く持たない…早く連れ出してハンサムと共に逃げないと…


「戦わなければバリアを外すと国民に伝えてください。」


え…なんで?


「お母さんの死体はね、体の裏は傷だらけなのに表にはほとんど傷がなかったの。それはつまり暗殺に気づいて私を抱えて逃げた訳なんだけど逃げるだけで反撃しなかったから死んじゃったんじゃないかな。」


女王は暗殺に気付いてた?俺や母さんと同じ反撃しなかったから死んだ?


「もし私が来なくて、皆戦ったら勝っていたかもしれないのにただ必要ないと言って戦わず、ヤトかお父さんを逃がすためにエルフが全滅したら、ヤトはお母さんの意志だからと言える?」


やめてくれ…


「お母さんが私を庇ってくれたとも言えるけどね、理想のために戦わなかったから私とヒエン達は森の中で孤児になったとも言えるんだよ?」


俺達はただ女王の言葉を信じていただけなんだ…


「終わった後に母さんのせいにする気?でも、終わった後にはヤトももう死んでるかもよ?」


確かに俺達は女王の言葉を信じていた、死んだら女王のせいにするなんて考えてない…ただ、ただ信じてた、そうであってほしかった。争う必要なんてないと信じてた、でも…違うのか?


「誰かの影に隠れて逃げた後にその人のせいにするよりはよっぽどいいわ。周りを見て見なさいよ。」


戦うエルフ達と手を合わせて誰かに祈るエルフの姿があった、失った事がないとどんな状況にいても信じてしまうのだろうか?ただでさえ俺は今も戦っていいのか悩んでいる。両親を失っていなかったら…迷わず祈ってたのかもしれない。


「今バリアが破壊されたら、そのエルフ達は誰のせいにするんだろうね。」


王子は戦いに行った…俺は戦うにしても王女を守りながら戦いたい。さて…どう話しかけるか…少し様子を伺ってみよう。


「そうだわ、後で謝礼代わりに王宮からなにか掻っ攫えないかしら?」

「おい、次期女王が何て事言ってんだ。」


しまった、話しかけてしまった。


「次期女王になる気ないわよ、国民1号。」


そして国民1号にされた。


「俺の名前は国民1号じゃねぇ…それより次期女王になる気ないって神獣契約済ませて来たんじゃないのか?」


防壁はまだ割られてないみたいだし一応確認してみる。


「貴方の事は既に鑑定してあるのよ、ヤガミ君もとい国民1号。最初から聞いてたでしょ?神獣契約なんてしてないわ、先代に恩義があったから助けに来たけどこれじゃ釣り合わないから今から釣り合う分を王宮から掻っ攫…受け取りに行くの。」


盗みに行った後もうこの国から離れるのかもしれない。楽器を渡すのは最初で最後のチャンスかもしれない。


「名前知ってんのかよ…全然釣り合わないがこれ、俺が子供の頃先代の為に作った楽器だ。次期女王にならなくても受け取ってくれ。」


少し戸惑った後両手で楽器を受け取ってくれた、さっきの飄々とした態度とは一転して戸惑いを隠すように腕を体の前に交差し目を逸らした。


「…これで王宮から何かを盗むのはやめて欲しいと?」

「関係ない。ただ渡したかっただけだ。」

「ばかね…無料より高いものはないっていうのよ…いいの?私に渡しちゃって。」

「今を逃したらもう渡せないかもしれないんだ。受け取ってくれ。」

「わかったわ…見返りはあまり期待しないでね?」

「ありがとう…」


目に見えてむっとした後精霊達を置いて王城へ向かって走った。早い、護衛したかったけどもう見えなくなってしまった。精霊達も驚いた後追いかけて行った。


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