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目を開けたら綺麗な青空が見えた。空にドラゴンが小さいもじゃもじゃを食ったと思ったら後ろから黒い雨雲の様なもやもやがドラゴンを捕食した。もやもやの食べ滓とドラゴンの血しぶきが私の体に降り注いで肌に暖かい感触を残す。
「あ。」
どうやら夢ではないらしいと思いながら立ち上がってみたら死体に抱かれていたのに気付いた、耳がやけに長い女性だ。周りの状況からこの人は私を何かからかばって死んだんだと思う。背中傷だらけだもん。
「たぶん私の第二の人生で合ってるよね?」
前の人生で最後に誰かをかばって死んだのを覚えている。そうしてみると目の前の光景は結構感慨深いな。いいスタートとはいまいち思えんが何はともあれ新たな人生の幕上げだ。気張っていこう。
「まずここは安全かな?」
死体が食われてないという事は安全なのかもしれない…か?
「たぶん安全だよ。」
声の方向に向かって見ると四匹の小人がいた
「はじめまして!エルフさん!アクアだよ。」
「ヒエンだ。」
「シナモンです。」
「そしてリーダーのシデンだ!」
「シデン…お仕置きがいるみたいね。」
「アクアもお仕置き手伝うー!」
「えっまて…今のなし!じょうだ…ぎゃー!」
唐突に出てきて唐突に喧嘩しだした小人達を眺めてたらどこか冷めた表情をした黒いロングヘアーの小人がやって来た。
「俺たちはお前の精霊だ。」
「あ、男だったの?」
「そこから突っ込むか…精霊に性別はない。エルフと共に生まれてお互い支えあう存在だから子供を必要としないんだ。」
「お前の精霊という事はお前たちは私と共に生まれてきたのか?」
「そうだ。俺達はお前より二時間ほど早く目が覚めてな、自己紹介と鑑定を先に済ませておいたぞ。」
「鑑定?」
「今から教える。まず自分の体を細かく調べてみろ。」
「あぁ。」
名称:メディカ
種族:エルフ
年齢:4日
状態異常:なし
HP:150/150
MP:20000/20000
攻撃力:10
魔力:5000
防御力:5
素早さ:100
魔法:全属性習得済み
スキル:色操作、音操作、鑑定、精霊共鳴、精霊使役
称号:孤児
「強いのか弱いのかわからんな。」
「俺にも試してみろ。」
名称:ヒエン
種族:精霊
年齢:4日
状態異常:なし
HP:5000/5000
MP:999/999
攻撃力:700
魔力:1000
防御力:500
素早さ:200
魔法:火属性
スキル:エルフとの共鳴、鑑定
称号:火の精霊
「他の三人のステータスも俺と似たり寄ったりだったな。」
「何かずるくない?」
「何いってんだよ、お前にはスキルと使える魔法の種類があるだろ?」
「まぁ…そうだね。」
「物や草木も鑑定できるぞ。ほら、例えばこの薬草。」
名称:ヤクイ草
詳細:よく回復薬を作る時に使われる草、火で焼くと奇声をあげて周りの魔物を追い払う事ができるが聞きすぎると発狂する。ヤクイ草で出来た回復薬を飲んだ者は1%の確率でヤクイ草の呪いに当たりヤクイ病を起こす。
回復薬の作り方:粉になるまで練ってから水を入れる。
「ヤクイね本当に。」
「ヤクイ病が何なのか知らんが俺らで少し摘んでおいたぞ。」
「ありがと、早速近くの水場を探して回復薬を作ってみるよ。」
「水はアクアが出せるだろうから水場を探す必要はない。それより回復薬を作り終わった後どうする?」
「食料と住処の確保。終わったら夜一緒に今後について語り合おう。」
「それなら今からシデンやシナモンと一緒に食える物を取ってくるよ、ここに残って回復薬を作っておけ、何かあったらアクアがいるから大丈夫だろう。」
「あぁ、任せた。」
「水が欲しいんだよね?アクアに任せて!」
そう言ってアクアは素手で地面にクレーターを作った後、クレーターの中に水を一杯になるまで注いだ。
「げ…私赤ん坊じゃん…」
「え?今更?」
出来たばかりの湖から血だらけの裸の赤ん坊に見下ろされて気付いた。そういや鑑定でも年齢:4日って書いてあったよな…何で普通に喋れて歩けるんだろう。まぁいいや、得したという事で。
「まず入れ物を作らないと…」
近くに転がっているドラゴンの牙の欠片で木を削ってコップを作ろうとしたら…
「そんな事しなくてもメディカには魔法があるでしょ?」
魔法で物が作れるのか?まぁ物は試しだ。ガラス瓶は確か二酸化ケイ素(SiO2)だったな…空気は周りから取り入れるとしてケイ素は地面かな?ってここ地球じゃないよな?異世界だよな?元素あるのか?仕方ないもう深く考えずにイメージで行こう。
「できた!」
「本当!?出鱈目で言っただけなのにできちゃうんだ!」
「おい。」
「家とかも作れる?」
「わからない...って待って!誰か来た!」
周りの音を森のさざめきだけにして周りの景色ごと森の一部になじませる。自分とアクアの声や姿も周りに馴染ませる。
「何で隠れるの?」
「なんか女として裸を見られたくないじゃん。」
「それだけ?」
「それだけじゃないけどね…」
勿論それだけじゃない。それだけだったら服着てるように見せて出てくればいい。問題は話が通じる相手かも関わっていい相手かも戦って勝てる相手かもわからないのに準備も情報もなしで関わりたくない。
「ここら辺血生臭くないか?」
「そうだな…さっき黒雲がドラゴンを食い殺したからな、近くに血や食い滓でも落ちてんじゃねーの?」
「黒雲!?ドラゴンでも平気で食い殺すとか本物しかありえねーじゃん!どうすんだよ!近くの住民が赤雨で死滅するぞ!」
「なんだはじめて黒雲にあったのか?黒雲が見つかったら基本的に近くの住民は全員赤雨が降る前に住処を捨てて逃げるんだ。だから被害はそんなにひどくないぞ?」
「そうなのか?よくわからないけど大丈夫ならいいや。」
黒雲は多分最初に見たあれだろう、赤雨?なんだそれ?まぁいい、とりあえず鑑定だけでもしておこう。
名称:ハンサム
種族:人間
年齢:17歳
状態異常:ヤクイ
HP:50/600
MP:137/150
攻撃力:8(160)
魔力:9(20)
防御力:1(250)
素早さ:95
魔法:なし
スキル:なし
称号:ドワーフの弟子
詳細:状態異常ヤクイの効果で攻撃力8、魔力9、防御力1の状態にされている。
ヤクイヤクイ…もう一人は…
名称:ダンゾー
種族:ドワーフ
年齢:25歳
状態異常:なし
HP:300/350
MP:137/150
攻撃力:120
魔力:10
防御力:110
素早さ:70
魔法:火属性
スキル:装備作り
称号:伝説の名匠
へぇ…伝説の名匠ねぇ…その割には着ている装備が安っぽいな。
「お前は何の為にここに来たのかわかっているのか?その黒雲の食い滓を探しに来たんだぞ!」
「ドラゴンの死体ですか?確かに危険を冒しても手に入れる価値はありますね。」
「あぁ!見つけたらとんでもない装備を作るんだ!」
「まぁ俺達は着ないんだけどね…」
「当たり前だ!剥ぎ取られるわ!」
なるほど…装備が安っぽい理由とこいつらがここに来た理由がわかった。ドラゴンの死体は貴重らしいな、後で魔法で何とかしてみよう。
「帰ったみたいだね。」
「うん、そろそろ回復薬作るか。」
丸太の上にヤクイ草を置いて磨り潰した後水入りのガラス瓶に入れ木の枝でかき混ぜる。
「とりあえず今一口飲んでみるよ。」
そう言って自分の肌を少し火の魔法で火傷させた後作ったばかりの回復薬を飲んだ。
「治った!」
「念の為に鑑定してみるね?」
名称:メディカ
種族:エルフ
年齢:4日
状態異常:ヤクイ
HP:150/150
MP:20000/20000
攻撃力:8
魔力:9
防御力:1
素早さ:100
魔法:全属性習得済み
スキル:色操作、音操作、鑑定、精霊共鳴、精霊使役
称号:孤児
「「…」」
一発でですか…