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046 追跡開始

 ゲネードを発って二日後。昼を回った時間帯にカインたちはペリッドの街へ到着した。


 祭りの一団は既に街を離れており、ペリッドには落ち着いた静けさが漂っていた。


 だが、ゆっくりとしている暇はない。カインたちは直ぐに情報の収集に向かう。


 カインの予想では、誘拐犯たちはこの街に到着し、幻光巡りの一団が発った翌日辺りに街を離れると思われた。

 故に、今現在、ペリットには誘拐犯たちがユミナと共に潜伏している可能性も有り得る。


 情報収集には目立たぬよう、最小限の人数を当てる。

 マリアン、ヴィレイナ、アーマード、ミーアの四人は、待機しカインとルクス、ジェドとファライヤの二人一組になり、状況を探った。


 冒険者ギルドや、この街の情報屋から話を聞いて回ったところ、不審な行動をしている人物についての情報は得られなかった。

 だが、街の門兵に確認したところ、入街の履歴がなく、出街の履歴のみが残っているものが既に三つあった。

 一つはトーレス伯爵の屋敷があるモクトストラタへ向かう商人一行。もう一つがペルタルゴへ向かうこれも商人一行である。もう一つが祭り一団の後を追う様に次の街へと向かった集団があるとのことだ。


「街に潜伏していないとなると三択だな」


 ルクスが無精髭をなでながら、険しい表情で言った。


「そうだな。だが、やはり祭りの後は、動きが鈍いな。日が昇り切るまでに街を出たものが三件しかないのはありがたい」


「どれだと思う?」


「順当に考えれば、トーレス伯爵の屋敷があるモクストラタだろうな。だが、俺はペルタルゴへ向かう一団だと睨んでいる」


「……奴隷商か」


「そうだ。ペルタルゴは奴隷商で有名な街だ。俺が貴族だったら、攫った者をそのまま屋敷で軟禁するのではなく、一度奴隷に落としてから買う」


「確かに。その方が後々バレたとしても言い訳も立つだろうしな。自分はただ、奴隷商から買っただけだってな。決まりじゃねえか? すぐに出るか?」


「いや、ペルタルゴまで三日は掛かる。街を出るのは、この街に相手が潜伏していないことを確認できてからだ。それと、可能性はペルタルゴが一番高いが念の為、全部追う」


 カインがそう告げると、ルクスはニヤリと口元を歪め頷く。


「デバイスレインの魔術士は、『伝意』を使えるのか?」


「いや、覚えていないと言ってたな。ルクスは持っているか?」


「一応残っているが、あと三つだけだ。この街の魔術士を当たってみよう」


「頼んだぞ」


 ルクスは片手を上げて、返事をすると足早に去っていった。そして、ルクスと別れたカインは一度集合場所まで戻ることにした。



 ペリッドの街にある冒険者ギルドでパーティー用の個室を貸し切り、休息を交えて待っていると、全員が揃ったのは夕方過ぎになった。


「あら? もう戻ってたのね」


 ファライヤがジェドと連れ立って個室へと入ってくると言った。


「どうだった?」


「この街に潜伏している可能性は低いわね。怪しい連中の目撃証言もないわ」


「そうか」


 そう言ってカインとファライヤはお互いの情報を交換し合う。その情報を照らし合わせ、ファライヤが口を開いた。


「ペルタルゴに向かった連中が一番可能性として高いわね」


「やはりお前もそう思うか」


「ええ。相手が賢かった場合はそうでしょうね。けれど、相手の持つ情報次第では、こちらの予測の裏をかいてくる恐れもあるわ」


「俺たちの戦力を把握はしてないだろう。ましてや、犯人に仕立て上げた俺が追ってくるとは考えないと思うが?」


「普通はそうでしょうね。けれど、あの聖騎士が言っていた通り、今回の誘拐に『バン・ドルイド』が関わっているとなると、もしかしたらがあるわ」


「俺は噂程度しか知らないが、何か知っているのか?」


 カインが尋ねると、ファライヤは顎先に手を当ててなにやら考えを巡らせる。


「何名か見知った連中が居るわね」


「そう言えば、お前はそっち側だったな」


「その言い方には少し語弊があるわ。彼らは進んで罪を犯すけれど、私は正当防衛を行っているだけだもの」


「クルーゼの指を楽しそうに折っておいて、どの口でそんなことを言う」


「仕方ないじゃない。ああいう男の悲鳴を聞くのって爽快じゃないかしら?」


 悪びれた様子もなく肩を竦めてみせるファライヤをみて、カインは呆れ顔を返した。だが、いつもの調子でくだらない話に長々と付き合うわけにもいかない。

 カインは直ぐに切り替える。


「で? 確かに有名な連中だが、奴等には何かあるのか?」


「組織が大き過ぎるというのもあるけれど、あいつらの実行部隊は、全員が冒険者のランクでいうAクラス以上に相当するわ。索敵や探知などの能力に長けた者も多い」


「こちらの情報が筒抜けという可能性もあるわけか」


「あるわ。けれど、個人的な考えを述べさせて貰うと、そこまでのことは出来ていないと思うわ。もし、あるとするならば、追手が迫ることを考慮して、罠を仕掛けるぐらいのことはしてくるでしょうけどね。判断はカインに任せるけれど、あいつらをあまり侮らない方が良いわよ」


 そう言われ、カインは腕を組んで黙考した。


 ファライヤの言うことが確かなら、追手が迫っていることを相手は既に知っている可能性もある。

 そうなると、今少し猶予があると思っていたのだが、中々に切迫した状況に思えてくる。


 そして、考えを巡らせてカインは決断した。


「日が暮れる前に出発する。夜間の移動は厳しいが、ペリッドからペルタルゴまでは平坦な道のりが長く続く。相手に夜通し移動されると最悪追いつかない可能性があるからな」


 カインは、ファライヤとミーアに向かって視線を飛ばす。


「ペルタルゴへ向かうのは、俺とファライヤとミーアだ。相手の戦力が不明だが、なんとかするしかないな。情けない話だが、ファライヤ。当てにさせて貰うぞ」


「まあ、任せておきなさい」


 ファライヤは、ニマニマと笑みを浮かべながら自信ありげに頷いた。

 敵として出会った時は最悪の相手ではあったが、味方となっている内は本当に頼もしい女である。


「ジェド。幻光巡りの次の街、ウルスナスへ向かった連中を追ってくれ」


 ジェドが無言で頷く。


「ルクス。お前は、モクトストラタへ向かった連中を追え。二人とも、そっちが当たりだった場合はこの『伝意』の魔術が込められた魔晶石を使え。悪いが、ルクスの持っていた三つしか準備できなかった。『伝意』は一度しか使えないから気を付けろ。使用するのは当たりだった場合だけで良い。それと、無茶はするなよ」


「へっ。言われなくてもわかってるぜ」


「それと、全員に探知の術式が編まれたミサンガを渡しておく。こっちの『探知』の魔晶石を使って互いの場所をある程度把握できるだろう」


「ねぇ。わたしは?」


 カインがミサンガについて説明をしていると、マリアンが口を開いた。

 三方に別れて追跡することとなったが、何故かその面子に含まれて居ない者も居た。

 その中の一人であるマリアンは、なにやら不満そうな顔を向けていた。


「お前には、やってもらいたいことがある」


 カインがそう言うと、マリアンはそう言われるとは予想していなかったのか、驚いたような表情をみせたあと、何故だか期待に胸を膨らませてキラキラした瞳になっている。


 普段なら、溜め息の一つも吐きたくなるところだが、今回はそうは思わない。

 何故なら、マリアンには普段以上にはちゃめちゃな事をやってのけて貰いたいからであった。


「マリアン。この街に残って、エラー教を掌握しろ。今回は何も自制しなくていい。好きにやって良いから奴らを動かせ。出来るか?」


「えー。良いけど。急にどうしたの? いつもなら、余計なことはするな!  目立つな! って怒るのに」


「俺はユミナを助けると約束した。その為に、出来る事を出し惜しみするつもりはない」


「えー。カインまで自重しなくなっちゃったら、誰がみんなの舵取りするの? それはそれで困ると思うけど」


「安心しろ。俺はちゃんと冷静だ。エラー教を動かさなくちゃならない訳がある」


 なんだろうとマリアンは首を傾げた。


「昨日も言ったが、トーレス伯爵を潰す。お前にはそれを任せたい。トーレス伯爵は、それなりの私財を投じて私兵の強化を図っている。奴を放っておけば、今、ユミナを取り戻したとしても、後々報復に出るだろうからな。だから、それを根本的に封じる為に、エラー教の圧力が必要なんだ」


 ふんふんと頷くマリアン。そして、カインは言葉を続ける。


「エラー教とそれに連なる貴族を動かして、トーレス伯爵を取り押さえろ。証拠は俺たちが、持って帰る。出来るか、マリアン」


「良いわ。任せて! でも、本当に自重しないからね。後で怒らないでよ」


「ちゃんと出来たら褒めてやる」


「お洋服も買って!」


「エラー教の経費で好きに買え!」


「えー。カインに買って貰いたいんですけど! ちょっと美少女心がわかってないんじゃない?」


「あー面倒臭い。機会があったら買ってやるから、本気でやれよ」


「あいさー!」


 元気よく返事をするマリアンから視線を移し、今度はヴィレイナへと視線をむける。


「ヴィレイナ。お前もここに残って、マリアンを手助けしてやってくれ」


「私もユミナの助けに向かうことは出来ませんか?」


「戦闘経験のないお前では、ここから先は足手纏いだ。戦いは俺たちに任せて、お前はそれ以外を手助けしてくれれば良い。この街のミリアム教会に顔が効くのはお前だけだ。設備を利用できるように手筈を整えてくれ」


「……はい」


「それと、マリアンが俺の予想を上回って暴走するようなら、軌道修正してやってくれ。アーマードも残して行くがそいつは当てにならん。頼めるか?」


 お前だけが頼りだ。そう言外に言われた気がして、ヴィレイナは頬を赤く染めながら答えた。


「はい!」


「アーマード。聞いての通りお前は二人の護衛だ。何があっても守り通せ」


「任せろ。指一本触れさせん」


「マリアンだけじゃなくて、ちゃんとヴィレイナのことも守るんだぞ」


「カイン。お前は俺のことをなんだと思っている」


 ただの変態で、マリアンの犬。


 そう思ったカインであったが、今アーマードをおちょくるのはやめておいた。

 そして、カインは気を取直して声上げた。


「よしっ! それじゃあ、準備が整い次第始めるぞ!」


 カインの掛け声に、全員が声を張り上げて応えた。

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