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「私はね、親に暴力を振るわれていたの。幼かった私に火が付いたままの煙草を身体に何回も押し付けて来るのよ?痛い、熱い、止めてお父さん、そう何回も叫んでもお父さんは止めないの。泣き叫ぶと血が出るまでぶたれるし、水の溜まった浴槽に顔を突っ込まれて溺れそうになった事もある。お母さんはそんなお父さんが怖いからただ見てるだけ。助けてくれようとしないの。私の願いはお父さんとお母さんが早く死んでくれる事。私を死なそうとしたあの2人の事は私が死んでも許さない。私の願いはそんな事。」



「私のお父さんとお母さんはとても仲が悪くて毎日喧嘩していた。お母さんが発狂してお皿を割るなんて日常茶飯事、お父さんはいつも帰りが遅くてお母さんはいつもピリピリしてた。私が学校に行けなくなって部屋に籠っているとお母さんは『さっさと学校行きなさい!』って叫びながら何回もドアを蹴るのよ?怖くて怖くて私は鍵を掛けて暗い部屋の中で毛布にくるまっていつも泣いていたの。早く消えて欲しい、お母さんなんて嫌い、怖い、怖い、こんな世界早く無くなってくれれば良いのに。」



「私のお父さんは昼間からお酒ばかり飲んでいて『さっさと煙草買って来い!』って怒鳴るの。『私買えないよ?』なんて言うと『そんなものもマトモに買えねぇのか!』って灰皿を投げて来るの。だからしょうがなく私は毎日お父さんの煙草を買って来て私の1日が始まっていた。私の知らない女の人が家にいる時は家の中に入れないから1日外で過ごす事が多かった。あんな奴死ねば良い、私には最初から私の居場所なんて無いの。誰も助けてなんてくれないの。」



「あんたは可愛いねぇ、あんたは私の言う事だけ聞いていれば良いのよ、あなたは私のものなんだから、いつもお母さんにそんな事を言われていた。人前では笑顔でいなさい、可愛い服を着て女の子らしくいるの。それが出来ないと『さっきのあの顔何なのよ!笑顔でいなさいって言ったでしょ!もっと女の子らしく振舞うの!可憐で華やかな女の子を演じるのよ!何で出来ないの?私の事嫌い?あぁそうなんだ、じゃああんたは今日から私の娘じゃないわよ、私に恥かかせるなら出て行きなさいよ!』、私はお母さんに捨てられた、捨てられるのが怖くて違う誰かを演じてた、私はお母さんが嫌い、あんな奴私の人生には必要無い。」



「あんな奴死ねば良い。」


「私はお父さん、お母さんが嫌い。」


「私を助けてくれる人は誰もいなかった。私を見てくれる人は誰もいなかった。」


「私に居場所なんて最初から無い。あなたには分かる?最初から居場所があるようなあなたに。」


「早く終わらないか私は祈った。この世界そのものに私は祈った。私の居場所の無いこんな世界など私には必要無い。この世界が終わる事だけをずっと祈り続けた。」




「...ねぇ、どうして私はこの世界を守らなくてはならないの?」


「何で世界が終わる事を祈ったのに、この世界を守らなくてはならないの?」


「辛いよ、苦しいよ、何の為に私は産まれて来たの?何の為に私は存在しているの?」


「ねぇ、教えてよ。」


「あなたに聞いてるの。」


「あなたしか叶えられる子はいないの。」


「あなたが叶えるのよ、私の祈りを。」


「あなたがやるの。最後まで。」


「そう私は。」


「あなたと同じ、魔法少女。」



ーーー



「結奈はさ、何で魔法少女になりたいの?」


「え、だって綺麗で可憐で、美しさそのものだから、私は憧れるんだよ。」


「まぁ、分からなくはないけど、私はお医者さんとか保育士さんの方が格好良いと思うけどなぁ。」


「何で?」


「だってそもそも魔法少女なんて存在しないじゃん。まだ小さい頃はそれなりに盛り上がれたけどさ。あんたは本当に未だに変わらずだからね。魔法少女なんてなれるものじゃないし、現実的じゃないと私は思うけど。」


「現実的とか、そういう事じゃないの。私は彼女達が本当に存在していたとしたら、伝えたい事がある。」



「どういう事?」


「あなた達のお陰で私はこんな生活を送る事が出来ている。真理や他の友達、家族と普通の暮らしを送る事が出来ている。それはとっても素晴らしい事だって直接伝えたいの。この惑星を守ったとされる存在、そんな素晴らしい存在が本当にいたのだとしたら..そう考えるだけで私は憧れてしまう。それには私が魔法少女になって、そうなった時にしか伝える事は出来ないと思ってる。だから、私は彼女達の存在を信じたいの。私だけでも、ずっと信じていたい。」


「..あんたらしいなぁ、高校生になってもあんたはそう言ってそうで私は怖いよ。」


「そう?」


「そうだよ。」


「真理は、魔法少女の事どう思ってる?」


「私は..存在しないものをどうも別に思わないよ。」


「嘘だぁ、あんただってたまに魔法少女のイラスト未だに描いたりしてんじゃん。」


「あれは..何となく、いたとしたらこんな感じかなぁって思って描いただけだよ。」


「好きだから、描いたんでしょ?」


「...私はあんたと違って空想に夢は見ない。でも..この惑星を守り抜いたって話は、嫌いじゃない。」


「ほら。」


「好きってより..存在しても良いのかな、とは思う。そういう信じられないようなものがこの世界にあっても良いんじゃないか...ぐらいには思うよ。」


「いたら、何て伝えたい?」


「...いないよ。」


「良いから。」


「いたら...この惑星を守ってくれた事、本当にあなた達が守ってくれたのだとしたら、ありがとう、って伝えるよ。」


「でしょ?やっぱそうだよ。じゃあさ、もし真理が魔法少女になったらどうする?」


「なったら...あんたを魔法少女にさせる。」


「はは、あんたが考えそうな事だわ。」


「そしたら、今度は私達がこの世界を守るんだ、とか言いそうだな。怖いな。」


「もしさ、1つだけ願い事が叶えられるとしたら何をお願いすると思う?」


「私は...って何で私ばっか答えてんだよ!あんたの聞かせなよ!」


「えー、私は内緒だよ、言う訳ないじゃん。」


「は?ズルいよ、どうせ世界を平和にして平和に暮らす事だろ?」


「それは、違うかな。」


「あっそう。」


「ヒントはねぇ、私の大切な人が、幸せな人生を歩む事が出来ますように、だよ。」


「何だよそれ、上手くはぐらかしやがって。」


「真理は...」


「私は、本当に内緒、誰にも言わないよ。」


「ふふ。」

















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