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Peace



私は小さい頃からファンタジーの世界が好きで、色々なアニメを観る中で魔法少女のアニメを観た時に衝撃を受けた。これこそファンタジーの極み、私も魔法少女になる!そう誓いながら真理と魔法少女の話をしながら洗脳していき真理も魔法少女が好きになった頃合いを見付けては部屋でアニメを2人で観る休日を送っていた。



「ねぇ、結奈は魔法少女になる時何をお願いするの?」


「私は..世界を平和にして幸せに暮らす事かな。」


「何それ偽善的、本気で考えてんの?」


「これは本当。世界が平和になったら結局何でも解決すると思うの。そうなれば結局自分も幸せに生きて行ける..そう思ってる。」


「私なら世界征服とかそういうの願うけど。そっちの方が良いじゃん、好き放題出来そうで。」


「それだと何か飽きる気がするんだよね、自分が神だ、みたいなのって刺激無いっていうか。」


「いや、世界平和の方がよっぽど刺激無いぞ?」



そんな会話をしながら1日が過ぎる、そんな休日、それが当たり前だったかつての記憶。今でも魔法少女の面影を追い駆けながら日々を暮らす中で1人になった時ふと思う事、


「この歳で魔法少女を追い駆けるって、変かな。」


そんな言葉が頭をよぎる時はすぐに打ち消し、やはり自分は魔法少女が好きなのだと自分に言い聞かせ高校生活を送っていた。かつてこの惑星を救ったと言われる魔法少女、そんな夢物語でもそれ以上に自分が魅力を感じるものは日々の自分の生活には無い、それは確かな事実だった。

どうして周りの子達はあまり関心を持たないのだろう、やはりどこか子供染みているから?そんな事を1人で考えているといつも寂しくなりその空虚な穴のようなものを共に共有出来る真理と過ごす事で埋められるような感覚と、依存するような形で真理に甘えている自覚はそれなりに持っているつもりだった。一緒にいるとまるで私達が魔法少女でいられるような感覚..私にしか分からない至福の時間、私達だけの時間が動き出す感覚..。



ーー



魔法少女の血を受け継ぐ者、という話を聞いた事がある。私が幼い頃、祖母に聞かされた話。昔は魔法少女が沢山存在していて、この惑星が護られていたという話。


「私は魔法少女の血を少しだけ持っているのよ。」


と優しい口調で、冗談のようなその話を聞いていた影響なのか、私はいつしか魔法少女の事ばかり考えるようになっていった。本当に存在していたのかいないのか、その幻想に近い淡い存在に惹きつけられて行く私の心。魔法少女なんて古くさい、そんな昔話興味が無い、私の周りの子達は皆口を揃えてそういう事を言っている。確かにそうだと私も思うし、否定出来るものでもない。


「私はね、魔法少女の血を少しだけ持っている。魔力は何も無いけどね。」


のあの言葉、亡くなった祖母が残した記憶に残るあの言葉。私はその冗談に聞こえるような台詞をふと思い出しては、頭に入らない授業を無視しながら教室の窓から見える澄んだ空気と青空を眺めながら彼女達の事をぼんやり考えていた。


ーー


「ねぇ真理!」


「何よ。」


「あのTwitter!フォローされたんだよ!」


「へぇ、何て人?」


「Diaだって!何も呟いていない人だけど。」


「良かったな、モノ好きが存在してて。」


「もしかしたら友達になれるかも。」


「いや、だからそういうんだから変なの寄って来るんだって。それに知り合う目的でやってる訳じゃ..」


「..分かってるよ。でも私はこの人を大切にしたい、そう思う。男か女か分からなくても私をフォローしてくれたんだもん、それだけで嬉しいよ。」


「..分かったよ、別にあんたの勝手だし。私がとやかく言う事でもない。」


「だから、ね!真理も..」


「私はやらない、絶対やらない。」


「頑固者。」


「何とでも言うが良い。」



いつもの道を2人で帰る。帰る途中で咲いている花、名前何だっけ?さぁ知らない、もっと勉強しろよ、うるさい、繰り返す私達の日常、くだらなくて暖かい、魔法少女が護ったとされるこの世界、出来るのならこのまま2人だけの時間を、真理との時間を..不思議とそんな事を考えた瞬間結奈は花の名前をぼんやりと思い出していた。


ふと木の柵に取り付けられていた小さいミラーに写り込んだ自分が気になり覗き込み小さく呟いた。


「あれ?私って、こんなに瞳の色薄かったっけ?」



ーーー



「私はね、魔法少女の生き残りなんだよ。あの時に死に損ねた魔法少女さ。あの時に死んでいたら、あんたは生まれてなかったんだねぇ。大切な命さ。」



私の母が私が幼い頃に良く言っていた言葉。幼いなりに母がマトモな人ではないのだと私は母を受け付けない人間になって行った。魔法少女、という言葉を聞くだけで私の心の中は嫌悪感で満ちて暗い影を落として行く。

母が魔法少女がこの星を護ったと幼い私に繰り返し喋るのが嫌になり中学生ぐらいになると次第に母と口を利かない自分になって行った。そんな母ももうこの世にはいない。生まれた娘、結奈を母には見せたくなかったが、母は生まれた結奈を抱き締めるとボロボロと涙を流して喜んだ。結奈も母に良く懐き結奈が喜ぶのなら、そう思い良く母に結奈を逢わせては遊ばせていた。



「いいかい結奈。私は昔魔法少女として生きてこの惑星を護る存在だったんだよ。今じゃ老いぼれの先行き短い命だが、私の代わりにこの惑星を護った魔法少女達がいた事だけは知っておいて欲しいんだ。彼女達の事を覚えているのは、臆病者で生き延びてしまった私のような人達しかいないのだけどねぇ。」



母が結奈にそういう話をしている時は母を強く叱った。



「止めて下さい、私の娘に変な事吹き込まないで!」



そう叱ると母はとても哀しそうな表情をするのだが、私は魔法少女の話を聞くだけで胸がムカムカし非常に腹が立った。そんな母の影響を受け結奈は魔法少女の事を楽しそうに語り、私は複雑な思いを抱いたのだが、娘が好きなものを否定したりはしない、子供を育てると決めた時に決めた事。私が嫌いなだけでその思いを娘に押し付けるような事はしない、娘を育てる時にそれは決めた事だった。だから友達と楽しそうに魔法少女の話をしているのが聞こえて来る時は複雑な思いはありながらもその部分に関してはスルーをして話を聞き流していた。



「お母さんただいま!」


「結奈お帰り。真理ちゃんは?」


「あいつ今日勉強するんだって。今更勉強したって遅いっつーの。」


「あんたも少し見習いなさいよ、最近成績悪いって..」


「あ、待って、WhiteRing光ってる、友達から電話。screenにしないと。」


「ちょ、結奈!」


「ごめんお母さん、もしもし由美ー?」



結奈の将来は心配だが、自分の好きな道を歩んで欲しい、魔法少女が好きでもなんでも、私はあの子が自分さえ見失わなければ、自分らしい生き方さえ出来ていればそれで良い、そう思いながらあの子を見つめて毎日を生きている、そんな日常に安堵しながらただ日々を生きている時間を大切に思う、そうずっとただ思って今を生きていた。




ーーー




昔、この国で大災害が起きたという。死傷者約二万人。そういえば、昔は「東京」なんて場所もあってそこが首都、 と呼ばれる場所だったと授業で習った気がする。そこでも首都直下型と言われる災害のような事が起きて以来この国の中心となる場所は変わったらしいけれど、その当時の空気と今私達が生きている空気が違い過ぎて想像する事しか出来ないが、短い歴史の中で様々な事が変わったんだなぁと歴史を勉強すると不思議な思いを抱く瞬間がある。そういう事を真理に話しても興味無さそうな表情しかしないのだけど。



「歴史なんてすぐに変わるじゃん。いちいち昔の事に思いを馳せてどうすんの?」


「昔の事だから面白いんじゃん。その当時を想像し思いを馳せる、私はそういう事がロマンがあって良いと思うの。」


「ロマン..Twitterもその(たぐい)でやったんだもんな。」


「そう、私の時代では使われなくなったものを使ってみる。そうしてその当時の繋がりのようなものを感じてみる。その頃の人達は何を考えていたんだろう、何を想っていたんだろう..私はそういう中で今とは違う空気を生きてみたい、いつだってそう思うのよ。」


「今とは違う空気、ねぇ..私は今生きる事に必死だからそんな余裕無いわ。」


「何?平和ボケしてるとか言いたいの?」


「あんたはいつもボケーっとしてるよ、どうせ授業の時も空ばっかり眺めてんだろ?」


「何で分かるの?」


「ほらな。」



こんな調子で日々が過ぎて行く。別に悪くはない。あの頃はきっともっと大変な時代だったに違いない、勝手にそんな事を思いながら私はこうして生きている。

災害が繰り返され、戦争が起き、隕石が堕ちて来る、今安定している日々の暮らしに身を任せる、それの何が悪いのだろう、今が平和ならそれで良いじゃないか、真理と話しながら私はそんな事を考えていた。













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