1話 全人類の敗北の日
魔王の息子、王子が覚醒します。設定等まだあやふやなので話しが繋がらないかもしれませんが暇潰し程度に読んで頂けたら幸いです
「王子!今日は人間がこの暗き森を捜索するとの情報が街に送った魔族から連絡が入りました。今すぐ別の場所へ引っ越しを!」
森の中で50人程の魔族が王子と呼ばれる魔族の青年に跪いている。見た目は人間と殆ど変わらない彼だが、違うところは右目だけがルビーのような赤色をしている
「デインヒル。もう、逃げるの疲れたよな?みんなはどうだ?」
魔族達は王子の言葉にお互いを見合う
「王子、いや、陛下。人間と戦うと言う事ですか?」
部下の魔族達の先頭で話すこの魔人の女は上位魔族、デインヒル。かつて暴嵐のデインヒルと呼ばれ数千人の命を奪った先魔王の側近である。彼女もまた人間と殆ど変わらない姿をしており、両目が赤い
「今日はオレの20歳の誕生日だ。あと2時間で魔王としての力が覚醒する。逃げるのは今日までだ、これから我々は人間へ宣戦布告する」
今ここにいる魔族はたったの51人。この世界に住む人間は女、子供、年寄りも入れてだが60億人いる。なんて無謀な戦いなんだと誰もが思うだろう。だがここにいる魔族は違った、家族を殺され、親友を殺された彼等は人間に復讐したくてたまらないのだろう
「それでは陛下、1つご提案があります」
「なんだ?言ってみろ」
「陛下がどのような力が覚醒するか分かりませんが、おそらく魔獣を召喚する力は先魔王様と同様に使用できるはず。ここから近くに人間の要塞都市と呼ばれるガルガンチュア王国があります。そこを攻め滅し我々の軍隊を作ってはどうでしょう?」
デインヒルの案に王子は数度頷く
「名案だ、だがオレの力が父のように周りの全てを破壊する力だったとしたら、父と同じ運命を辿るだろうな」
先魔王は世界で最強と言われたが、魔族全体、家族を大切に想う彼はその力を使う事なく勇者達に討たれたのだ。王子はまた自分を護り続けてくれた魔族達を家族と想っている。国を作ればまた父と同じ運命を辿ると不安になるのは当たり前だった
「その時は我々の事など気にせずに力を使ってください」
「それは無理だ」
即答だった
暫しの沈黙が流れる
???
デインヒルが何かの気配に気付き辺りを見回す
「人間に見つかりましたね。まだ陛下は力が覚醒していない。皆の者、必ず陛下をお護りするぞ」
陛下を輪の中心に連れていく
魔族達は皆、フォースを発動し周囲を警戒した
ここにいる魔族全員が先魔王の側近であったり軍の隊長を務めていた者で上位魔族であり、フォースを発動する事が出来る。勇者が相手でない限りは人間が単体で勝てる相手では無い
「やっと見つけたぞー!魔族の王子」
バンブーエールと話していた勇者だった、あれから20年近く経っていると言うのにその姿は若き青年のままと言う事に彼を見た事がある魔族は驚いた
「僕の力には不老と言うモノがあってね、魔族が絶滅するまで戦えるんだ」
「不死の力が無かった事を後悔しろ、我が名はデインヒル!貴様を殺す魔族だ」
デインヒルが仲間に目配せをする
それに気付いた魔族の1人がデインヒルを心配し嫌がる王子をこっそりとその場から連れ出す
「この森はすでに6人の勇者で包囲しているぞー?どこに逃げても時間稼ぎにしかならないぜバーカ」
「時間が大事なんだよバカが」
???
「まぁお前らから先に地獄へ送ってやるよ」
神聖剣を抜き魔族達と構える勇者
「僕の名前は秋葉原暁人、12勇者の1人にして魔斬と言う魔族に対して最強の力を持つ男だ」
デインヒルの後ろから魔族達が一斉に飛び掛かる
「無駄!無駄無駄無駄!」
本人のぎこちない動きとは裏腹に神聖剣は飛び掛かる魔族達の首を体を両断する
「くそ、こんなただの非力な人間、に…」
「デインヒル様、王子を…」
「魔族に再び栄光を」
斬られた魔族は悔しさのあまり涙しながら朽ちていく。ひ弱な人間に物的ダメージも魔法も通らずプライドすらも斬られたのだ
「さぁ、お前だけになったぞデインヒル?だっけか」
残っていた魔族を楽しむように斬りまくった秋葉原暁人はデインヒルに向き直る
「これが勇者の力か…だが私も魔王様に使える側近の1人、最後まで、最後まッッ!」
後ろからデインヒルの体が貫かれ、胸部から剣の切っ先が姿を現した
「何遊んでんだよ〜あきと〜時間かけ過ぎだぞ〜」
「サクラか。折角のメインをスッと取るんじゃねーよ」
デインヒルは不覚を取った。秋葉原暁人に気を取られ後ろから来た勇者に気付かなかった
「っく、ここまで、か。陛下は逃げ延びただろうか…」
「もう死んでるんじゃな〜い?ざんね〜ん」
その場に倒れ込んだデインヒルをサンダルで踏み付けるサクラを見て暁人はため息を吐く
「もう殺してやれ、魔族を殺す事には何も感じないがいたぶるのは趣味じゃないんだよ」
「え〜あんただけ楽しんで私はダメなの〜?」
2人は睨み合い、今度はサクラがため息を吐き分かったとデインヒルを斬ろうとする。デインヒルは目を閉じた。どうか、王子だけは無事でありますようにと願い
〝オレの家族に酷いことをしてくれるな〟
「「っっ!!!」」
2人は突然目の前に現れた青年に驚きデインヒルから離れた
「デインヒル…」
「陛下、覚醒されたのですね」
王子がフォースを発動している姿を見て、涙を溜める
「あぁ、待たせたな。そして、みんなも」
暁人に斬り捨てられた魔族達を見渡し王子もまた涙を溜めた
「我々の事は気にせず、覇界を発動してください」
その言葉に勇者2人は汗を流し、後ずさる
破戒、それは先魔王が使わずに死んでいった最強の力。全魔力を暴走させ周囲の全てを破壊し尽くし破壊したモノの魔力をまた自分に吸収するまさに全てを破する者、覇する者の力
「それがな、オレの力は覇界じゃなかった」
その場にいた3人はそれぞれに驚く
「なんだ〜ビビって損した〜」
「魔王の子でも出来損ないだったか、いくら魔力が膨大でも覚醒してない魔王なんてただ少し強い上位魔族じゃねーか」
2人は神聖剣を握り直すとじわじわと距離を詰める。覚醒が無いとは言え魔王の魔力。気を抜けば逆にやられてしまうから慎重に動きだす
「そうですか。陛下、陛下をここまで護り抜いた事に後悔はありません。先魔王様に仕え、陛下に仕える事が出来て…私は幸せでした」
「は〜いお別れは済んだね〜」
「魔族は今日、滅びる」
間合いに入った勇者2人は剣を振り上げ飛び掛かる
「邪魔だ、視界に入るなハエどもが」
「「ッッッツ!!!」」
王子が手を振りかざすと勇者は羽毛のように吹き飛ばされ木に激突した
「!?陛下?その力は!!?」
「オレの覚醒した力は〝覇戒〟と言う力だ」
デインヒルはそれを聞き、どんな力かは理解出来なかったがこれで陛下は生きる事が出来る。魔族が復興する事が出来ると安心し、命の炎が尽きる
「デインヒルよ、もう一度オレに力を貸してくれないか?お前は頭が良い。だからーー」
王子は倒れているデインヒルの肩に手を置き唱える
「甦れ、デインヒル」
デインヒルの身体が宙に浮き光の粒子となり消えるとその粒子が集まりデインヒルの身体を構築していく
「陛下!これは!?私はどうなったのですか?」
デインヒルは死んだはずの自分がどうして生きているのか理解出来ずに何度も身体を見直す
「オレの覇戒は覇界の上位の力みたいでな、詳しくは後で説明しよう。まずはそこの虫ケラを2匹潰すとするか」
王子とデインヒルはまだ起き上がれないでいる勇者を見下す
「ぼ、僕達を倒しても…」
「他の勇者がい、いるんだから〜」
王子は両腕を広げると高らかに笑う
「ここに来るまでに4人の勇者を同時に屠ったのだが、お前らを抜いてあと勇者は6匹か?」
勇者は倒れたまま王子を見て驚きを隠せないでいた。自分達は油断したからやられる。そうに違いないと信じたかったが、他の勇者が4人も一度にやられたと聞いて人間の負けを確信した
「まぁ…ここは僕等の世界とは違うとこだし、関係ないか…はは」
「これでやっとママとパパに会える…」
どうやら勇者は死んだら元の世界に帰れるらしい
それで勇者はワンダーワールドに召喚されると死をも恐れずに魔族との戦争に参加したのか、そんな思い付きのように我々魔族は滅ぼされたのか、許せん。この勇者の一族も必ず滅ぼしてやる
「首を洗って待っていろ、秋葉原暁人、篠崎サクラ、内藤一、柿谷愛、西村裕也、田中守、他の6人も名前と顔は忘れず覚えておく。この世界の人間を滅ぼしたら必ずお前らの世界へ来て復讐してやる」
王子は必ず勇者の一族も滅ぼしてやると脅すがまだ暫くは先の話しだろう
「刃旋風・ミリオンカッター!!」
甦ったデインヒルの力はかつての力を大きく上回り、勇者の対魔族防御を貫通し勇者の身体を跡形も無く切り刻んだ
「さぁ、いくぞデインヒル。復讐だ」
「はい、陛下!」
2人は森を出て近くの都市へ向かった
人類最高の要塞都市ガルガンチュア王国へ
秋葉原暁人;「っはぁ、はぁ。帰って来たのか」
篠崎サクラ;「パパ!ママ!」
内藤一;「なんだよ、これ」
柿谷愛;「私達が居なくなってから時間が進んでない…」
西村裕也;「ウソで、ウソだろ!」
田中守;「……」
※ここで臨時ニュースです。昨夜、富士山の頂上に突如と現れた城のような建造物から見た事もない生物が現れ、人を襲っているとの情報が入りました。国民の皆様は暫く建物からでず…………