ままっしゅは痛恨の一撃をくらった
最近、ちょっぴり気になる事があった。
ポンポコリーナが、やたらと私や夫の脂の詰まった腹を優しく撫でるのだ。
夫も私も力士体型。
立派なメタボだ。
――まさかなぁ……。
と思いつつ、娘に恐る恐る訊ねてみる。
「ポンポコリーナさん、ママやパパのお腹に赤ちゃんは詰まってないよ……?」
娘はその言葉にしょんぼりと肩を落とす。
ままっしゅは痛恨の一撃をくらった。
どうやら、パパックかママッシュのどちらか片方は駄目でも、どちらかに入っていないかなーと思っていたらしい。
――すまん。
ポンポコリーナさん。
ママッシュは更年期入ってきてるし、もう一人子供を産める自信はありません。
そもそも、学費を捻出するのが厳し過ぎる。
遅すぎたのだ。
特に結婚する時期とか?
しょんぼりとしながら、「妹が欲しかった」と呟いて涙を零す娘に事情を説明する。
こう言う時に、ヘンにぼかすと逆に追及された時にボロが出るから正直に、その代わり分かり易いように説明すると言うのが私のやり方だ。
私が結婚したのは36の時……37になる年だった筈だから、その時点で高齢出産ってやつが確定している。
結婚相談所で出会った夫とは、最初から『子供は一人』と言う事で同意し合ってた。
男が40を超えると自閉症の子が、女が40を超えるとボーダー障害の子が生まれやすいんだって。
障害の内容は反対だったかもしれないけど、まぁ、血筋的には障害児が産まれる確率が低い男女の間にも何らかの障害のある子供が生まれやすくなる年齢ってヤツだと言う事だ。
37になる私が、結婚してすぐに子供を作ったとしても二人目の子供は年齢的に厳しい。
特に、一人目の子供が健常者だったのなら尚更の事、二人目は望まない事にしようと言うのが私達夫婦の判断だった。
二人目に障害のある子供が産まれてしまったら、上の子を構ってやれなくなる可能性が高い。
――私は、八年同居して親友だと思っていた女性に「霧ちゃんは弟が障害児じゃないから、私が何をしても良いんだ。」と言った言葉を忘れていない。
だから、自分の子供が万が一にもそんなセリフを吐くかもしれない、なんていう状況に持ち込む気にはなれなかった。
勿論、障害者が身内に居る人間全員がそんな発言をする訳じゃないだろうけど。
とはいえ、一人目に障害があったのなら逆に二人目に踏み切ったかもしれない。
だけど、幸いな事にポンポコリーナさんは喘息持ちではあったモノの、それ以外はビックリするほど健康で、「もしかしたら障害あるかもしれない」なんていう、産む前の不安をすっぱりさっぱり吹き飛ばしてくれた。
親馬鹿だとは思うけど、そこそこ賢い様な気もする。
うん。
分かってる。
どこの親も最初の子供に同じ事を思うんだろうなって事は。
もと同居人の事は省いたものの、大体そのまんま『妹』が産まれる事はない理由を話すと、ポンポコリーナはまた一粒涙をこぼす。
「いもうと、ほしかったぁ……」
「ごめんねぇ。」
ちなみに、結婚がもっと早ければなんて言っても無駄だ。
大体が35の時にほんの半年だけ行った婚活で、結婚する事になるなんてあの時の私は思ってもいなかったんだから。
60を超えた頃、結婚できなかったのを親に責任転嫁しない為にと半年だけと期限を決めて行った婚活。
まさかソレのお陰で、結婚して。
挙句の果てに、今は子供が一人いる。
人生って不思議だなぁと、妹が欲しかったと肩を震わせるその子供を抱きしめながら思うのだ。
――ママッシュは、ポンポコリーナさんだけでも十分だよ。
……って。




