お月さま 2
4歳になった秋だったか春だったか。
やっぱり習い事が終わった後に外食して帰宅する途中の事だ。
まだ完全には日が落ち切っていない商店街のアーチを抜けると、空には大きなお月さま。
私は乱視がひどいので、どうもちょっぴり掛けているお月さまもまん丸に見えるから、まん丸お月さまでは無かったのかもしれないけれど、殆ど満月と言っても良い月がビルの隙間を見え隠れ。
ぼんやりとソレを見上げていた私は、ふと、ポンポコリーナが走っては歩き、走っては歩きと言う妙な動きに首を傾げる。
――ポンポコリーナはなにやってんだ??
彼女は私が見ている間もその動きを繰り返す。
ポンポコリーナの視線は上。
私もそちらを見上げると、丁度お月さまが顔を出しポンポコリーナが走り出す。
「ああ……。」
「どしたの? ままっしゅ??」
「さっきからポンポコリーナが妙な動きしてるなーと思ってたんだけどさ……。」
「ああ。さっきから走ったり歩いたり繰り返してるね。」
「ポンポコリーナさん?」
夫への返事の代わりに本人に声を掛けると、ポンポコリーナはなんだろうと不思議そうに私を見上げてくる。
私はこの、ポンポコリーナが自分の事を見上げてくる時の表情が大好きだ。
めっちゃ可愛い。
思わず口元を緩ませながら、問いを続ける。
「お月さまと追いかけっこしてるの?」
「ばれちゃったー!」
――内緒のつもりだったんかい。
あれだけ挙動不審なら気がつくだろうと苦笑すると、夫が感心したように呟いた。
「よくわかったね~。」
「前は、『お月さまとお散歩』だったのにねぇ……。」
その時からたったの半年だか一年程度しか経ってないと思うのに、同じものを見て違う事を想像するなんてすごいなとそう思う。
次は、お月さまをモチーフに一体何をするのかと、ソレがちょっと楽しみだ。