さるぽっこ
赤ちゃんを身近で見て最初の感想だった。
娘の顔を見た時の、私の最初の感想はめちゃくちゃひどかったと思う。
きっと、身近で小さな赤ちゃんを見る機会なんて無かったから、幻想的なモノが強かったんだろうと今なら思えるんだけれど。
「泣いてるとサルみたいで可愛くない(涙)」
同じ霊長類ですから、仕方ないよね。
「ガリガリで、アバラ浮いてて怖い」
ぷくぷくだと、産道通れないから。
ついでに言うなら、プクプク赤ちゃんだったらきっと私は死んでたんじゃないだろうか……。
妊娠性の高血圧症で入院してた位なので、大分ヤバかったらしい。
生きてて良かった、よーかったー。
「背中に毛が……! 毛が……!?」
頭よりも、背中に沢山毛が生えてて衝撃的だった。
段々と減っていって、ほっとしたなぁ……。
夫には大ウケだった。
っと、話しが逸れた。
なにはともあれ、ビックリするほど、寝てる夫にそっくりで大笑いはしてたけど、自分の子供の見た目が気に食わなかった私。
ひどい母親だなーと思いながら、でもそれは口に出して言ってはいなかった。
プックリしてきたら、きっと変わるかなと思っていたのもあるし、人としてその発言はどうよって気持ちもあったんだよね。
でもね、夫の意見はちがかったのです。
「この、額にしわがギュ―って寄るの、俺好きなんだよね。」
「え? そうなん?? さるみたいじゃん。」
「この、サルみたいになるのが良いんだよ。こう……。満足しきった時とかにするよね、この表情。」
「例えば??」
「おっぱいたくさん飲んだ後とか、おむつ変えた後とか。」
「……。」
言われて、よくよく見て見ると確かにそうかも?
そう言う風に考えながら見てると、なんだかとっても可愛く見えるようになってくる。
可愛く感じてきた表情に名前を付けて見ると、今までよりもなんだか愛着が湧いてきた。
サルっぽく満足そうな顔をしてる時は、「さるぽっこ」。
ぐっすり眠って、石のように動かない時は「じぞう」。
でもね、見た目は可愛くないなーと思ってたけど、自分の子供はやっぱり可愛い。
見た目がどうとか、そういうんじゃないんだよね。
ともかく、そこで息をしてるの自体が素晴らしい。
今、ポンポコリーナは4歳……後ひと月足らずで5歳になる。
それでも、横で寝てるのを見てるだけでによによしてしまう。
随分とでっかくなってしまったんだけれども。
ちなみに私の内面的にも、ポンポコリーナがやって来てから変化が起きた。
こういうとなんだけど、子供を産む前は、どっちかというと子供は好きじゃなかったんじゃないかと思うんだよね。
それなのに、今では街中ですれ違う赤ちゃんや子供を目で追っちゃうのです。
『ああ。うちのポンポコリーナさんもあんな時があったなぁ……。』
……って。
そうしてひっそり思うのだ。
『ウチの子の方が可愛かったな』
……と。
見た目可愛くないと言ってたのはどこのどいつだ……?




