石のおうち、葉っぱのおうち
二歳ごろのお話です
子供って、何故か石や葉っぱが大好き。
お外に出ると、茶色いのも緑のも、白いのも黒いのも関係なしに沢山の石ころや葉っぱが彼らを誘惑する。
と言うのは、ポンポコリーナが歩き出す前に仕入れた、他のママさんに教わった話のような気がする。
ソレを聞いた時、私は『なんて嫌な習性なんだ!』と思った。
だって、石ころも葉っぱも、私にとってはゴミだから。
心が狭いのだろうなとは思うのだけど、ごみを家に持ち帰りたくなかったのだ。
んでもって、だ。
今、そう思い返す私の目の前に、お持ち帰りされてきた石ころが入った足ケリ車(正式名称は知らない)がある。
何回か、コレを捨てていいかと交渉してみたものの、交渉は大絶賛決裂中。
外出中にこっそりと捨てる方が面倒がないかなーと思い、それを実行することに決めた。
問題は、この次に持って帰らせない方法だ。
ただ『ママが嫌だから』なんて理由じゃ、ポンポコリーナが泣くだけで良い事なんて一つもない挙句、結局家に持ち帰らせる羽目になる可能性が高すぎる。
道端で泣かせて、付近のじーさんばーさんにジロジロ見られるのは嫌すぎだ。
そうなると、なんとかポンポコリーナも納得してくれる理由がほしい。
尚且つ、ちょっと夢のある(?)感じの理由ならもっと良いだろう。
私は、ポンポコリーナが次に石拾いをする前にその理由をでっちあげる事にした。
散歩の途中で小石を拾う。
ポンポコリーナのお仕事だ。
ままっしゅのお仕事は、コレを持ち帰らせない事。
ポンポコリーナの脇に砂利道が現れたところで、私は彼女と目を合わせて考えてきたお話をするタイミングは今だ。
「ポンポコリーナさん?」
きょとんと見つめ返してくるポンポコリーナの頭を撫で、言葉を続ける。
「ポンポコリーナさんは今からお家に帰るでしょう? 石さんも、『ポンポコリーナと遊んでくれてありがとう』って言って、お家に返してあげよっか。」
嫌だと返される言葉にめげてはいけない。
「ポンポコリーナさんも、お家にはパパやママが居るよね? 石さんも、パパやママのところに返してあげよう。」
根気強く説得を続けると、最終的にその言葉に納得がいったらしくポンポコリーナは砂利の上に握っていた石を置いて私の方に振り向く。
「ポンポコリーナさん、えらい?」
「ポンポコリーナさんは、優しいいい子だね~!」
頭をわしゃわしゃと撫でまわし、ギュッと抱きしめると、ポンポコリーナは満面に笑みを浮かべる。
素直なその反応が可愛くて仕方なくって、ほっぺにチュウ。
おでこにもチュウ。
ついでにほっぺを一齧り(甘噛み)。
可愛い生き物って、なんでか口に入れたくなるのだ。
ポンポコリーナも例外ではない。
植込みの側で、拾った葉っぱも同じように『葉っぱのお家』に返してあげようと提案すると、今度はあっさりとその通りにしてくれた。
それから三年経った今でも、ポンポコリーナは『石のお家』と『葉っぱのお家』に石と葉っぱを帰してあげる。