表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖少女カシェリーナ  作者: 神村 律子
聖女カシェリーナ サードモンスタープラン
44/77

プロローグ 新任講師

 時の流れるのは早い。地球と月を震撼させたあのベン・ドム・ディズムの悪夢から、五年の歳月が流れていた。

 ここニューペキンも戦後の復興がすっかり終わり、その一部を構成している大学群も、完全にもとの状態に戻りつつあった。五年の間に生まれた子供達に、何年か前に戦争があって、たくさんの人が死んだのだと話しても、信じてもらえないほどに……。


 ニューペキンの最高学府の一つ、ガイア大学は創立五十周年を迎える名門である。先の戦争ではほとんど被害はなかったが、軍が接収して少しの間使用していたので、学生の成績や大学の様々な情報を納めたホストコンピュータのデータが消失し、バックアップデータも紛失してしまい、一年ほどのブランクができてしまった。そのせいで、損をした学生と得をした学生がいたらしい。


 そのガイア大学の法学部棟の小ホールは、立ち見が出るほどの賑わいになっていた。勉強熱心な学生が多いわけではない。いつの時代も大学生とは暢気な生き物なのだ。ではどうして立ち見が出るほど賑わっているのか?

 理由は単純にして明瞭である。新しい年度を迎えた法学部に、新しい講師が着任したためだ。その講師の名は、カシェリーナ・ダムン。地球と月を救った聖女とまで呼ばれた、ガイア大学の卒業生である。

「凄いわね……。何、こんなに……」

 カシェリーナは、五年前に比べると落ち着いた雰囲気になっていたが、相変わらず胸元の大きく開いた白のブラウスに、膝上二十センチメートルはあろうかという、タイトな黒のミニスカート姿が似合っていた。髪はストレートをやめて少しウェープをかけていたが、自慢の黒髪は脱色やカラーリングはされておらず、つやつやしていた。

 彼女は意を決してホールに足を踏み入れた。その存在に気づいた男子学生達の間から、

「おおっ!」

 歓声が上がり、女子学生からは強烈な嫉妬の視線が浴びせられた。カシェリーナはそんな学生の反応にニッコリ微笑んで応じながら、教壇に立った。

「初めまして。今年度から、法学部法律学科の憲法の講師を勤めることになりました、カシェリーナ・ダムンです。よろしくお願いします」

 カシェリーナがそう言い終わると、ホール内にまるで嵐のような拍手がわき起こった。カシェリーナはギョッとして一歩退いたが、すぐに気を取り直し、拍手が鳴り止み始めたのを見計らってから、

「とにかく、私の初めての講義にこれだけの人が出席してくれたのは、大変光栄です。ありがとう」

 学生達を見渡した。中には手を振っている男子学生もいる。カシェリーナは笑顔でもう一度学生を見渡して、

「それでは、早速講義を始めます」

と話し出した。


 それと同じ頃、ニューペキンから離れたある場所で、ある男が真っ暗闇の中、ニヤリとした。

「まだ終わってはいない」

 男はそう呟き、もう一度ニヤリとした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ