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もう一つのプロローグ
地球共和国と月連邦との間で始まった戦争――と言うよりは、ベン・ドム・ディズムとダン・ディーム・ゲスとの間で始まったと言った方が正しいかも知れない――は、一つの局面を迎えようとしていた。
「私はカシェリーナ・ダムンと言います。ガイア大学法学部の四年生です。私はある事情から、共和国政府、いえ、ディズム総帥が進行している恐るべき計画を知りました。それが昨日テレビ、ラジオ、インターネットを通じて報道され、新聞の号外に載っていた、核融合砲計画です」
戦争終結後は地球と月を救った聖女と讃えられ、大学卒業後は一体とんな道に進むのかと言われているカシェリーナ・ダムンが、あらゆるメディアを通じてディズムとゲスの非を訴えていた時に話は遡る。
カシェリーナ達はこの放送後、軍の追手から逃れるため、一時身を隠していたので知らないのであるが、実は戦争終結に大きく関わった四人の若者がいたのだ。
これからお話するのは、遊ぶ金欲しさに危ない話に乗って一儲けしようと考えた二人の少年と、その二人の身を案じてそばにいた二人の少女の物語である。