りんごの国とアオムシ
初めまして、香月 風香 と申します。
初投稿となります。
よろしくお願いします。
ここは、みずみずしく甘酸っぱい果汁の滴り落ちる「りんごの国」。
夜は無く、空も無い。しかし、いつもあたたかい日の光が優しく降りそそぐ暖かな国でした。
見渡す限り、白や、蜂蜜色でできたこの国では、争いはめったに起きません。
のどが乾けば、蜂蜜色の壁から、止めどなくあふれでてくる甘い果汁で、のどを潤しました。
優しい家族、隣人、友人に囲まれ、困っているヒトがいたならば進んで手を差しのべる。これが、「りんごの国」での当たり前の暮らしです。
「りんごの国」では誰もが優しくで、誰もが純粋で、誰もが幸せなのでした。
そんな平和な日々のある日のことです。「りんごの国」に異変が起きました。
突然、真っ白な「りんごの国の空」から、しゃくり、しゃくりと大きな音がしたかと思うとポッカリと丸い穴が空きました。
そして、そこからニュウッと緑色の頭が覗いたのです。
その緑のニュウッとした生き物は、アオムシと名乗りました。
人々は「空」に穴が空いたことに驚き、はじめてみる白や黄色(蜂蜜色)意外の色に驚き、そのニュウッと長いその姿に驚きました。
ですが、争いの無い国で、心優しく育ったこの国の人々は、その生き物に驚きこそしましたが、怖いとは誰も思いませんでした。
そして、「りんごの国」の人々はその不思議な生き物アオムシに質問をしました。
「なぜりんごの国の空に穴を掘っていたんだい?」
すると、アオムシは
「ぼくはりんごを食べていただけたよ」
と答えました。
「りんごの国を食べたのかい? 果汁を飲むのではなく?」
人々は「果汁」ではなく、「りんご」を食べたというアオムシに驚きました。この国の人々はあふれでてくる果汁は飲みますがりんごの実の部分はたべません。
驚いた「りんごの国」の人々を見て、アオムシは困った様子です。
「もしかして、食べてはいけなかったのかな?もしそうなら、お詫びにここよりももっと、甘く、美味しそうなりんごを探してこようか?」
と言い出しました。
なんと、「りんごの国」はここの他にも沢山あると、アオムシはいうのですから。
そして、ここよりも「甘いりんごの国」というはとても魅力的でした。
こんなにも、素敵なことを教えてくれたアオムシは、なんて、優しい生き物なのでしょう。人々は、さっそくアオムシに、「甘いりんごの国の場所」を、教えて欲しいと言いました。するとアオムシは
「ここからは少し遠くにあるんだ。だから道を案内しようと思うんだけど、一度にたくさんの者を案内するのは、迷子になるヒトが出そうで心配だな」
と言いました。
すると、「りんごの国」の人々は、確かに迷子がでては大変だ、と代表の者、五名が、一緒に行く事になりました。
ですが、いざ行こうとすると、「りんごの国」の外は暗くなりつつあったのです。
そうです、アオムシが空に穴を開けた事で昼と夜ができたのです。
穴が開く前は1日中、日の光が降り注いでいたのに、穴があいてからは暗くなり、静かな光も降り注ぐようになったのです。
この静かな光のことをアオムシは、
「月の光だよ。夜は月の光が、昼の間は日の光がぼくらを照らしてくれるんだ!」
と教えてくれました。
次の日の朝、アオムシと代表の者5名は「りんごの国」の人々に笑顔で見送られながら「甘いりんごの国」を探しに出かけました。
夜が来て朝が来て、夜が来て朝が来てと繰り返したある日、ようやく「甘いりんごの国」からアオムシが帰って来ました。
「アオムシさんおかえりなさい! 「甘いりんごの国」はどうでしたか? 代表の者五名はどうしましたか?」
と「りんごの国」の人々が聞くと、アオムシは
「あの五人は、「甘いりんごの国」を大変気に入ったため一足はやく住み始めたよ。やっぱり、「甘いりんごの国」は少し遠くにあるので、一度に全員移動するのは大変だから、今回のように少しずつ移動した方がいいね。」
といい、また、
「みんなもきっと気に入るよ!」
と笑顔を見せました。
「りんごの国」の人々はアオムシの言葉に納得し、「甘いりんごの国」に思いをはせました。
ですが、「りんごの国」の人々は、アオムシに、遠くにあるという「甘いりんごの国」と「りんごの国」を何度も往復させるのは悪いと思いました。
どうしようかと悩んでいるとアオムシが
「ぼくは、たくさん食べてたくさん運動するのが大好きだから平気だよ! だから僕に任せてくれないかい?」
と言いました。
なので、「りんごの国」の人々は、とても優しい、アオムシの言葉に甘える事にしました。
「りんごの国」の人々は深く頭を下げて言いました。
「それでは、よろしく頼みます。」
その言葉にアオムシは、大変喜びました。あまりに喜ぶので「りんごの国」の人々も嬉しくなりました。
この話し合いの後、アオムシはすぐにまた「りんごの国」の人々、五名を連れて、「甘いりんごの国」を目指しました。
そして、夜と朝を三回から五回繰り返すとアオムシは一人で「りんごの国」に帰って来ます。
「りんごの国」に残った人々は、アオムシが「りんごの国」に帰ってくるのを、とても楽しみにしていました。
「甘いりんごの国」に行ける五名に選ばれるととても喜び、まだ見ぬ「甘いりんごの国」への思いを馳せました。
「りんごの国」の人々は少しずつ少なくなって行きました。
そして、とうとう、「りんごの国」にいるのは最後の五人となりました。
五人は自分達が最後になった事を、どころか誇らしく思い、最後まで案内をしてくれたアオムシをとても尊敬し、褒め称えました。
すると、アオムシはとても悲しそうな顔をしました。ですが、「りんごの国」の五人はそれに気がつきません。
なぜなら、「りんごの国」の人々は悲しい思いをした事がないので、悲しいという感情を知らなかったのです。
そして、アオムシはいいました。
「君たちは優しいね。優しくて、純粋で、美しく、美味しい。」
突然の褒め言葉に「りんごの国」の五人は照れました。そして、「そんな事はない、アオムシさんのほうが優しい」と口々にいいましたが、アオムシは聞こえていないかのようにつづけます。
「きっと、この不思議なりんごに守られて、何も不自由無く過ごして来たんだろうね。醜くて、弱くて、生まれたときから一人ぼっちで、大きな鳥達に狙われてる僕とは大違いだ。」
一見すると、皮肉に受け取れるアオムシの言葉ですが、優しい「りんごの国」の五人はアオムシは落ち込んでいるのだと思い、「アオムシさんはとても美しい!」「一人なんかじゃない!僕たちがいるじゃないか!」「鳥から僕たちが守るよ!」と次々に励ましの言葉をかけました。
すると、急に落ち込んでいたアオムシの言葉が、明るくなりました。
「だけど、僕は全然、羨ましくないよ!
確かに、僕の生活は君たちよりも危険な事も多いよ。でも、その代わりに、君たちよりもたくさんの事を知ってるからね!」
「君たちと出会って、僕の知ってる事は綺麗な事ばかりではないけれど、それも大切なことだとわかったから」
「鳥達が、僕を食べようとしている事を知っているからこそ、僕の体が、緑の葉と同じだと知っているからこそ、葉に紛れて身を守る事ができるようにね」
「そして、君たちも、もしも疑うことを知っていたならば、きっと僕にみんな食べられてしまう、なんて事にはならなかったかもしれないね」
そう言うとアオムシは、にっこりと微笑みました。
おわり
よんで頂き、ありがとうございました。
別視点も用意していますので、もしよろしければ、読んでいただけると嬉しいです。




