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第93話 模擬戦(1)

お義兄さんが指導する第一・第二騎士団の合同訓練は無事終了した。


僕は先ず、お義兄さんが言う”技術の無さ”よりも先に自分の”体力の無さ”に打ちのめされた。

今まで如何にスキル頼りの戦闘をしていたか、凄く実感できました。


「……うぅ、体中が痛いよ……」


立ち上がろうとするも、足がぷるぷると震えて上手く立ち上がる事が出来ない。


「わふっ!」


ん?わっふる?迎えに来てくれたのかな?

鳴き声がした方向を見てみると、アイシャに抱っこされて尻尾を振っているわっふるがいた。


「……旦那様、随分とお疲れのようだな」


アイシャの隣からシルフィが声をかけてくる。


「……みんな、来てくれたんだ」


「大丈夫?相当辛そうだけど……」


アイシャが心配そうに僕を見ている。


やっぱり、他の人が見ても相当弱ってるように見えるんだね……。

実際、足がぷるぷる震えていてちゃんと立つ事が出来ない訳だし……。


「どうやら、立てないみたいだな……。旦那様、ほら捕まって」


シルフィの差し出す手を取り、何とか立ち上がる。

だけど、足がもつれてしまい……。




「だ、だ、旦那さま……」


思わず、シルフィを押し倒すような格好で倒れ込んでしまった。


「ご、ごめん!」


アイシャに後ろから引っ張り上げてもらい、何とか立ち上がるが突然のアクシデントで顔が真っ赤になる。

同じようにシルフィの顔も真っ赤である。


その様子を離れた場所から見ていたお義兄さんや騎士団長がにやにやとこちらを見ていたが、取りあえず無視しておく。


『まいん、どうしたー?かおがあかいぞー』


わっふるはきっと本当に分かってない。

だけど、このタイミングでそれを聞かれるのは中々恥ずかしい。


「な、何でもないよ!わっふるっ!!」


わっふるを上手くごまかしつつ、アイシャの肩を借りていそいそとその場を逃げだした。



義弟(マイン)よ、明日もちゃんと来るんだぞ!」


後ろからお義兄さんの声が聞こえてくるが、一瞬後ろ向いて会釈をした後、再び部屋へと逃げる。


いくら婚約者とは言え、いくら不可抗力とは言え、公衆の面前で押し倒してしまったのだ。

恥ずかしいなんてもんじゃない。


……明日、騎士団の皆さんと顔をあわすの嫌だよね……。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「……ああ、恥ずかしかった」


部屋に辿り着いた僕はそのままヨロヨロとベッドに倒れ込んだ。


「……確か、回復魔法は使っちゃダメでしたよね?」


アイシャが僕の様子を見ながら、やっぱりまだ顔が赤いシルフィに訪ねた。


「……あ、ああ……。

 回復魔法で疲労を治してしまってはダメだ。

 あくまでも自然治癒、自分の力だけで治してこそ力になる」


シルフィも申し訳なさそうに僕を見て、はっきりと言い切る。


「……ありがと、二人とも。

 お義兄さんからも回復魔法は使わないように言われているからこのまま頑張るよ。

 今日は大人しくお風呂に入ってすぐ寝る事にするよ」


そう言いながら、お風呂に入る準備をする為に、言う事を聞かない体を無理矢理動かして立ち上がる。


『おふろー、おふろー、おれもはいるぞー』


ああ、そう言えば前回お風呂に入ったとき、わっふるがお風呂妙に気に入ってたなあ……。

犬かきしながら、スイスイとお風呂を喜んで泳いでいたっけ……。


『うん、それじゃあ、わっふるも入ろうか』


僕がそう言うと、わっふるが尻尾を大きく振りながら突進してくる。


あ、ダメ!今日はダメ、タックルだーめーなんだってばーーーー!


一人で立つのも苦労していた僕が、わっふる渾身の喜びタックルを受け止める事が出来る訳もなく……。

再び、よろめきながらベッドに倒れ込んでしまう。


すると、アイシャとシルフィが僕の腕を左右から抱え込み、立たせた。


「「私達も一緒に入りますね♪」」



……うん、こうなると思ってたよ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



翌日以降の訓練も(僕にとっては)熾烈を極めたが、同時に確かな手応えも感じる事が出来た。

昨日より今日、今日より明日と間違いなく体が動くようになったのだ。


まあ、それでもまだまだお義兄さんや騎士団長達に比べれば、遊びのような物だろうけどね。


成果が出てくれば気持ちも高揚し、やる気も湧いてくる。

僕はとにかく、言われた通りに毎日体を動かし、短剣を振るい続けた。


そして、とうとう結婚式の前日を迎えた。

ちなみに結婚式の前日、つまり今日まででこの訓練は一端終了と言う訳だ。


「さて、義弟(マイン)、取りあえずは今日で一端一区切りだ。

 そこで、今日までの成果を見る為に、模擬戦をしてもらおうと思う」


お義兄さんが僕にそう告げる。


「お義兄さんとまた戦うのですか?」


「いや、スキル無しで戦って貰うからな、私が相手ではまだ厳しいだろう?」


うん、確かにその通りだ。

訓練中に何度もお義兄さんが騎士団員の人達に稽古を付けているのを見たけど勝てる気が全くしなかったよ。


スキル有りなら、ともかく無しでお義兄さんと戦うのは出来れば遠慮したい。


「……えーっと、では相手は誰でしょう??」


僕がそう尋ねると騎士団長が一人の団員を連れてきた。


「彼はね、騎士団の若手の中で一番の有望株なんですよ。実力は私が保証しますよ」


なるほど、若手騎士さんが相手ならば、今の僕で丁度良い感じって事かな?

胸を借りるつもりで頑張ろう!


「分かりました!頑張ります!」


僕がそう答えを返すと、若手騎士さんがスッと前に出て、胸に手を当てて僕に一礼をする。


「はじめましてマイン殿、第二騎士団所属、カールと申します。

 微力ながら、全力でお相手を努めさせて頂きます。

 どうぞ、宜しくお願いします」


うん、すごく丁寧な人だね!

騎士の中の騎士って感じだ!騎士団長さんが推すのも無理がないね。


忙しい中、僕の為に時間を割いてくれたんだ。

感謝!だね。


「忙しい中、僕の相手をして頂きありがとうございます!」


僕がそう言ってお礼を述べると、騎士団長さんが苦笑を浮かべてこう言った。


「いや、マイン殿の相手をどうしてもと彼からの強い希望もあってね。

 だから、そこまで畏まらなくてもいいんですよ」


え?僕と戦いたかったって事なのかな?

……初めて会う人なんだけど、僕なんかしたのかなあ。


きっと、不安そうな顔をしていたのだろう。

慌ててカールさんは両手を振り「別に何かあったわけではないですよ!」と説明してくる。


「……ああ、良かった」


僕が安堵したからだろう、カールさんも胸に手を置いてほっとしている。


うん、本当にいい人みたいだ。


よし、せっかく相手をしてくれると言うんだ。

短い間ではあったけど、今日までの成果を試してみよう!



何時もお読み頂きありがとうございました。

今後とも宜しくお願いします。


【改稿】


2016/12/21

・全般の誤字を修正。

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