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第09話 冒険者ギルドとお約束

「しかし、本当に井戸から汲んだ水でポーションが作れるんだなあ……」


家に帰った僕は早速ポーションの作成を試してみる。


目論見通り、錬金術屋さんで見た流れでポーションを作る事が出来た時に出た感想が冒頭の言葉だ。


採取してきた薬草だけで約6Lのポーションを作る事が出来た。

流石にコレを売ったら、錬金術屋さんの商売を邪魔する事になるだろうし……

教えてもらった恩を仇で返す事になってしまうよね。

自分で使用する分だけ作る事にしよう。


「これだけあれば、しばらくは持つかな?」


出来上がったポーションは以前、雑貨屋さんで買ってきた大きな透明な瓶にひとまず入れておく。

明日、小さな瓶を買ってきて小分けしよう。


一通り、作業が終わり一息ついたらお腹がぐぅ~~っと音を鳴らす。


「そういえば、ご飯まだだったね」


自分で食べる分として残してあったオーク肉を鉄板で焼き、野菜屋さんで買ってきたノブチュの葉を刻んだサラダを添える。


料理スキルのおかげで簡単な料理ではあったが、とても美味しく作る事が出来た。

尤もいつも食べていた兎肉より、格段に上等なオーク肉を食べているのだからスキルのおかげばかりでは無いだろうけど。


結構多めに作ったつもりだったが、ペロリと全て食べ終わり、漸く寛ぐ事が出来たようだ。

自然に体から余分な力が抜けて、ダラっと床に寝転がる。


「今日も無事、生き残る事が出来た……ホント急に忙しくなっちゃったなあ。まあ、その分稼ぎも凄い事になってるけど……」


金貨5枚と銀貨を83枚。そして銅貨が6枚が今日の収入だ。

お金もそうだけど、更に収納袋(特大)も手に入った。


全て、授かったスキルのおかげだ、神様には感謝をどれだけしてもしたり無いだろう。


収入の事、スキルの事を考えれば、やはり冒険者になるのが正解なのかもしれないな。

明日、冒険者ギルドに一度顔を出してみよう。


それで真剣に考えてみよう。


よし!今日は頑張った!お休みなさい!



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



『冒険者ギルド』


それはマインが居を構えているルーカスの町が所属するオーガスタ王国だけでは無く、他国も含めて殆ど全ての町に存在する営利団体の事を指す言葉である。


今から数百年前に現れた英雄が、効率よく魔物を討伐するために戦闘向けのスキルを授かった者を中心に声を掛け、集合した団体が起源とされている。


その組織は時代の変遷を経て、その形態は徐々に洗練された物へと変化していく事になる。


モンスター達と戦い、傷つき倒れていく戦士や冒険者と呼ばれる者達の生存率を高める為の情報やネットワークを構築し、またそれを営利目的とする事で

彼らの生活を支援していく組織へと現在はその姿を変えている。


各大陸、国、そして町などにその支部が設置され、日々登録されている冒険者達を支援している。


冒険者ギルドは基本的に年中無休で朝昼晩、そして深夜と常に営業をしている。

不測の事態が起こった際にすぐ対応出来る様にしているためだ。


営利組織であり、独立した経営基盤を持つ団体だが、基本的に設置された町の防衛も担っている。


対外的には国王、領主、などその設置された場所の長からの町防衛という依頼を受けている形だ。

当然、依頼というからには報酬も出る。


尤もまとまった報酬が出るのは数年に何度か起こるモンスターの大侵攻≪氾濫≫等の壊滅的被害が発生しそうなケースに限るのだが。


そういった特別な事態が無い時は毎月一定の金額が国や町等から支払われており、冒険者達が依頼を達成した際の報酬の一部へと還元されている。


そんな冒険者ギルドに一人の少年、いや成人したので青年か、が訪れてきた。

そう、マインであった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「ここがギルドかあ、入るのは初めてだなあ……」


つい、キョロキョロと周りをみてしまう。


すると、先日王都からの帰りの馬車の中で一緒だったC級冒険者のキースさんを発見した。

他にもあの時みかけた冒険者さん達の姿も目に入る。


キースさん達は掲示板みたいな大きな板の前に腕を組んで立っており、真剣な表情でその板に貼り付けられている紙を見ているようだった。


『すごい真剣な表情だ、何みてるんだろ……』


何を見ているのかとても気にはなったけど、まずは受付で色々質問をしよう。

冒険者になるにしても、情報はやっぱり必要だしね。




いくつかある受付カウンターの中で一番並んでいる人が少ないカウンターに並び、順番が来るのを待つ。

そして、僕の番が回ってきたので受付の綺麗なお姉さんに挨拶をする。


「おはようございます!」


僕の挨拶に驚いたのか、お姉さんは呆気に取られた表情を一瞬見せるが、すぐに笑顔を浮かべ「おはようございます」と返してくれた。


「えっと、マインって言います。実は一昨日成人を迎えまして……冒険者に興味があるのですがよく分からない部分もありますので教えて貰えたらと思い今日は来ました」


その言葉を聞いて、またお姉さんは驚いた表情を見せる。

あれ?質問にきたらダメだったのかな?


「……すみません、ご迷惑でしたでしょうか」


しょんぼりしながら、そう尋ねるとお姉さんは慌てて首を振り「ううん、そんな事ないわよ」と答えてくれた。


「……本当ですか?気を遣ってませんか?」


僕に気を遣ってるのかもしれないと思い、再びしょんぼりしながら問いかける。


「本当にそんな事ないわ、ごめんなさいね。ほら、冒険者の人達って荒くれ者が多いでしょ。なのにマイン君はすごく丁寧だからびっくりしちゃったの」


多いでしょと言われてもそう言う事も含めて分からないから来てるんだけどな……と心の中で思いながらも安心する。


「良かった、安心しました」


「で、何が聞きたかったのかな?」


僕は予め、何が聞きたいのかをまとめておいたので、それを一つ一つ聞いていく。


それで分かった事は


・ギルドに登録するとギルドカードが発行され、公の身分証明書として使う事が出来る。

・ギルドは原則として登録している冒険者に対し、依頼と言う形で仕事を斡旋する場所である。

・冒険者にはランクが存在し、依頼をこなしていくと徐々にそのランクが上がっていき、より報酬が良い依頼を受ける事が出来るようになる。

・依頼は「討伐」「採取」「護衛」「特殊」といった物が存在する。ランクを上げるには満遍なく依頼を受ける必要がある。

・ランクが一定以上の冒険者には「緊急依頼」と呼ばれる町の存亡に関わる依頼を強制的に受ける義務が発生する。

・依頼で得た、または依頼外で得た素材の買い取りを行ってくれる。

・ギルド員は税金を直接払う必要が無い。依頼報酬の一部が税金として事前に差し引かれているからだ。

・依頼を長期に渡り、受けないでいるとギルドを除名になり、ギルド員だった際の未払いの税金を国から請求される。



大雑把にこんな感じだ。


受ける依頼によっては、想像通り遠くの町やダンジョンなどにいく必要があるとの事だ。


うん、僕にとってのメリットは多そうではある。

ただ、スキルの事を隠したいので、パーティを組んで依頼を受ける事は難しいかもしれないな。


「忙しいのに色々教えてくれてありがとうございます。話を聞き、冒険者になる決心がつきました」


僕がお礼と共にそう言うとお姉さんは笑顔で「参考になったのなら嬉しいわ」と答えてくれた。

美人さんの笑顔は元気になるなぁと僕もつい笑顔になってしまう。


「じゃあ、冒険者になると言う事で良かったかな?」


お姉さんの問いかけに「はい!」と答えると、背後から野太い声が聞こえた。


「けっ、餓鬼が冒険者になるだと?なめてんじゃねーぞ」


うん、何かめんどくさい事が起きそうだ。

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